第三十四話、やれば一瞬の事だが....
「ようこそ!クスラへ!!歓迎するのだ!!!」
この町の街の領主の娘、リルムが町に入る為の門でそうチカ達へ言った。
「リルム様!?無事ですか!?皆が心配していたのですよ!?」
門番をしていた兵士が声を上げる。
「様だの呼ぶな、リルムは領主にならぬのだ」
リルムはそれに吠える如く、拒絶する。
「しかし、リルム様が領主になっていただけれねば、クスラは安定しませんっ!」
「ならぬと言ったらならぬのだぁ〜!」
「ううっ....」
リルムは兵士に駄々を言って困らせる。
「でも...」
「それぐらいにしたらどうしょうか?やりたくないのならやらなければいいでしょう。」
「マカール様...」
「そうなのだ。軍師が言ってる通りなのだ!」
兵士がリルムを話していると横から、道化師の姿をした男、マーカルなる者が口を挟む。リルムが言うには軍師だそうだ。
「おや?これはこれは、シークラド家の馬車...。どうかなさったのですか?」
マーカルがチカ達が乗っている馬車の家紋を見て、疑問を持つ。
「実は、貸してもらっているのですよ。」
「そうだったのですか。おっと、名乗り遅れました。ワタクシは軍師マカールです。最近は仕事がありませんし、副業に道化をやっていますよ。」
セレシスが説明し、マカールが忘れていたようで、名乗る。
「ではでは、ワタクシは仕事が有りますから失礼致しますよ。」
こっちが名乗る時間を与えず、さっさと去っていった。
「何か、嫌な感じがするわ…」
「そうですか?私はかっこいいと思いますよ道化。」
「見た目じゃないわよ…」
アリアとセレシスが軍師マーカルの印象を言い合う。
「リルムが領主にならなくても、軍師がなってくれるのだ!」
「確かに、マカール様は領主に有力な存在ですし道化として子供達に人気で人望がありますし軍師でありますから、適任だと思いますが....やはり、リルム様が領主になるべきです。」
「っ!もういいのだぁ!」
リルムはマカールを推すが、兵士はそれでもリルムに領主となる事を奨めるがリルムは怒り、振り払う。
「もう行くのだぁ!チカ達よ、コッチなのだ!」
「リルム様っ!」
リルムは兵士を無視し領主の館へ案内する。
「よかと?」
「大丈夫なのだ。軍師が代わりにやるからいいのだ。」
チカがそれでよかったのか聞くとリルムは当然のように答えた。
リルムはクロムに乗りながら道を案内するので馬車でついて行く。
「バリ広か〜っ!」
チカがリルムが案内している町の中を見て言う。
それもそのはず、クスラは畜産と酪農の町と言われてもいるが畜産と酪農のエサである作物や町民の食料を他の町に頼ること無く生産しており、シークラドに流す程だ。
クスラは城壁に囲まれており、その城壁の中は農地や牧場が多くシークラドの二十倍程に大きさを誇る。
食料に困ることは無く、山に囲まれている為、籠城には最適と言えるだろう。
そのための別名、鉄壁の町と言われている。
これは別にリルムの一族の胸はまるで壁のようだと言ってる訳では無い。まあ事実なのだが...
「っ!?何か言われた気がするのだ!」
「気のせいじゃなか?」
「そうなのだ?」
リルムは何かを感じ取ったようで急に辺りをキョロキョロと見回すのだった。
「ついたのだ!」
「館より横の牧場の方が大きかね。」
「横は騎士が乗る竜とクロムの寝床なのだっ!」
シークラドと同等の大きさの領主の館があり、その横に同じ大きさの牧場がある。横の牧場は領主と騎士用のようだ。
「しばらく、バイバイなのだ。」
「ガァ......」
牧場にリルムがクロムに乗った状態で行き、クロムと別れる。クロムは悲しげな声を出す。
「クロムはなんで飛ばんと?」
「.....クロムは...」
「ご、ごめんね。この子はすぐ疑問になった事をすぐ声に出すのよ。気にしなくていいわ」
チカは気になったことを聞こうとすると、リルムは少し沈黙し重い口を動かそうとする。その様子を見て慌ててアリアがチカの口を塞ぎ、謝る。
「いいのだ....。話すのだ....。クロムは.......」
リルムはアリアの言葉を気にせず、チカの疑問に答える。そして暗い表情をして話し出した。
「クロムは...。リルムが幼い頃、魔物に襲われた時に庇ったせいでキズを負い二度と飛べない体になったのだ...。リルムが町の外に出らなければ....クロムがキズを負わずによかったのだ。リルムのせいなのだ。」
リルムはクロムが飛べない事を全て自分のせいだと言い、悪く思っているようだ。
「だから....リルムはこの町を出るのだ。そして万病、怪我に効くとされる伝説の霊薬、エリクサーの材料を手にするために町を出るのだ!」
「なるほど...。だから領地の居続ける事になる、領主になりたくないと...」
リルムの話を聞き、セレシスは領主になりたくない理由を結びつけたようだ。
「あ」
「どうしたと?」
「何でもないわ。」
アリアは何かを気付いたような声を出すが誤魔化す。
そう、アリアはどんな病気や怪我を治せる。いや、生命そのものすら作れるのだ。何故ならば、命を司る神なのだから。
しかしここで口を出してしまえば、エリクサーで治さないといけないほどの怪我を治せるアリアは何者となるのだろうか、しかもここまでリルムが語ったのだ。それを、『え?治せるけど?』っで終わらせるほどメンタルは強くない。そしてアリアは空気を読み、黙ったのだった。
4月1日の分は今まで書いた小説の整理に使う為、1日休ませてもらいます。申し訳ございません。




