第二十二話、旅のごはん。
御者とミアルとチカ達が領主の馬車に乗り畜産と酪農の町、クスラに向かう。
御者は最近メイドになったばかりだと言う、褐色金髪のメイドで無口のドミニクさん。馬車を借りた時に...
「よろしくしますデス。ドミニクデス。」
とたどたどしく言っていたので教育を受けていなかった事が容易に分かる。御者が出来ると言っていたそうなので今回、クスラまで同行するようだ。
「ドミニクさん。クスラまで何処までかかるのかしら?」
チカはミアルをモフモフしており、セレシスはそれをガン見している中、アリアがドミニクさんに聞く。
「...三日デス....カネ?」
「疑問形になってるわよ?」
「ココの地理。詳しくナイ。」
「そうなのね」
「だけどココの道行けば着くと思いますデス。」
「分かったわ」
ドミニクさんはたどたどしくアリアの返事をする。
アリアは必要なことを聞き読書に戻るが、チカはミアルをモフモフするのを止めない。
今、どのようにモフモフしてるかと言うと、ミアルは近寄り小柄なためチカの膝の上に乗せ左手を喉、右手を耳の裏や後頭部を撫で撫でしつつ片側の耳を唇で咥えて甘噛みしつつ撫で撫でする。
「はむはむ、もふもふ」
「可愛い...」
「うぬぁあ〜」
ミアルはぐでーっと脱力しており、無抵抗にチカにモフられている。
「っく!私が法の神でなければ...」
その様子を見たセレシスが誰にも聞こえないような小さな声でボソッと呟くのだった。だがしかし...
「えぇ?何かしら?」
「イエ、ナンデモナイデス。」
アリアの地獄耳がその呟きを聞いて、目が笑ってない微笑みをしながら聞いてきた。何かを悟ったセレシスはカタコトで返すのだった。
「そろそろ野営の準備しますデス。」
「え?まだ早くなか?」
「早いうちに準備して無いとあっという間に暗くなるわよ」
ドミニクさんは馬を止め、馬車を固定し馬を休ませる。休ませたところの近くには木が一本ある。
確かにチカ言うようにまだ夕暮れにもなっていないがアリアの言う通りすぐ暗くなるのでいい場所を探しきれなくなる可能性がある。
休ませたところの近くには木が一本あり、その付近はだいぶ広さがあるので丁度いいだろう。
「ワタシは枝を持って来ますデス」
「では私は焚き火の囲いに使えそうな手ごろな石を拾ってきますね。」
「えっ?」
ドミニクとセレシスが焚き火の準備をしようとすると疑問の声がチカから出る。
「コンロでよかっちゃなかと?」
「魔石は少ないですし、焚き火になんて使ってられませんよ。」
「じゃあ節約の為やけんか。鍋もそれでやるとよね?」
「いえいえ、それだと鍋が煤で汚れてしまいます。料理はコンロでしますよ。」
「なるほど!」
体を温める用と光源の役割が焚き火で、料理はコンロと使い分けるそうだ。
「じゃあ私は食べれる野草を取りに行くわ。」
そう言ってアリアは取りに行ってこようとするが、チカが言う。
「毒草とかと誤って摘んでこんどいてね」
「しないわよっ!私は知識は有るから大丈夫なのよ!」
「...知識は?」
「そうよ!私は料理の才能が無いのよ!あなたと同じで」
「ぬぬぬ...。ぐっ!記憶が蘇っとる。」
アリアとチカとの話でチカの記憶が蘇る。
「ううう......。家庭科室.....爆発......上田君しb.......は!?」
「え!?上田君が?上田君どうなったのよ!!」
「ううう......これ以上思い出せない...。」
そしてアリアはチカに料理の話をすることを完全にやめたのだった。
チカは必要な魔道具を出し、虫除けとランタンをつけておく。
焚き火とコンロの準備が出来き、アリアが帰ってきたのでセレシスが料理をし始める。
「この異世界の定番の旅の料理を作りますね」
と言っていたので気になるので見ておくことにする。ちなみにミアルはチカにモフられた後、馬車に寝かして置いたそうだ。
セレシスはアリアに摘んできてもらった野草を茹で、茹でたお湯を捨てる。
「茹でた後は苦味があるので捨てておきます」
それで、新しく干し肉と干物を入れてもう1度茹で、出汁をしっかりとる。そして塩と胡椒。どこからか買った柑橘系の果物の汁を入れ、香りの野草を刻んで入れ、柑橘系の匂いが香る魚と肉たっぷりのスープが出来た。
「これで完成ですね。」
そしてセレシスが人数分に分ける。そしてチカに言う...
「チカさんパンをお願いします。」
「へぇ?」
セレシスはチカの耳の近くで小さく話す。
「自分の異能の事をお忘れですか?」
「あっ!」
どうやらチカは自分の異能の存在をすっかり忘れていたようだ。
「バックの中で使ってくださいね...」
「分かっっとるけん、大丈夫大丈夫。」
チカはセレシスの言う通り、バックの中で小麦粉等の材料を出し、再現を使いパンを作る。勿論この世界にある黒パン。
だがしかし...
「あ、ほっかほっかになってしまったけん。冷やさないけん」
「ああ、そうなりましたか...焼いたことにしましょうか...」
黒パンを焼き、焦げ目を軽く付ける。
「できましたよー」
「これが定番とね。」
「そうですね。定番に1つですかね。」
「とりあえず食べんと分からんよね」
チカはスープを一口飲む。
「案外さっぱりしててうまかね!!」
「大抵、パンを浸して食べるんですよ。」
「そうなん!」
そんな話をしてる間に馬車からもぞもぞと音がしてくる。
「ぬぇ~っ。ごはん?」
それはエサに呼びこまれた小さなけものだったそうな...
ゆるキャン△....ゆるくてかわいいね!




