表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

Sweet dreams!

あなたは家に帰り、深く深く息を吐き出した。身体中から空気が抜けていくような、大きなため息だ。重い足取りで靴を脱ぎ、通勤用の鞄を置いて、スーツを着たままベッドに倒れこむ。ダイブした枕が呼吸を阻害してきたが、もう動きたくないくらい疲れていた。


あなたは思うーー今日は散々な一日だった、と。


朝から目覚まし時計は壊れ、寝坊をしかけるし、ダッシュで飛び乗った電車は満員で、しかも事故が起きたとかでしばらく止まってしまって結局遅刻だ。この時点であなたは今日はついていないと思っただろう。

やっとたどり着いた仕事場でもトラブルが頻発した。書類のミスから始まり、後輩もテンパってミスを積み重ねたりしただろう。そして最後はあなたが上司から叱られてしまった。あなたのミスではないが、フォローしきれなかったのは悪いと反省するかもしれない。それは自分のミスではないと反発するかもしれない。ただ叱られていい気分はしなかったことだろう。

その後も昼食を買おうとしたら何か困ったことが起きて食べられなかったり、やっと休憩できると思ったところで取引先から電話がかかってきたり、色々と大変で定時に帰れなかったり、帰路で何か大好きな食べ物を買おうと思ってコンビニに立ち寄ったらちょうどそれが売り切れてがっかりしたり。なんなら家のそばでネコを見かけて撫でようとしたら逃げられてしまったかもしれない。


今日のあなたの日常は、そんなちょっとついてないことがまとめてやってきた日だっただろう。


そんな散々な一日を思い返して、あなたは起き上がった。ため息をはき出しながらお湯を沸かす間、シワにならないようにスーツを脱いで部屋着に着替える。あなたはテレビをつけようかどうか迷ったかもしれない。結局すぐにお湯が沸いた。あなたは棚からお気に入りのお茶を取り出し、ポットにふた匙いれ、お湯を注ぎ、砂時計をひっくり返した。


お湯がぱっと鮮やかな青色に染まり、そしてゆっくり色が変わっていくのをあなたは眺めている。


砂がさらさらと落ちていくたびにあなたの心は穏やかになっていくことだろう。何もせず、何も考えず、ただ過ぎていく時間を感じるのはあなたが一番落ち着く時のはずだ。

さあ砂が落ちきった。くるくると花が踊っていたポットは静かになり、淡い黄色に染まっている。あなたはマグカップにお茶を注いだ。優しく広がった香りに、きっと笑顔がこぼれ落ちる。


あなたは少し冷めるのを待ってお茶を飲んだ。


今日は散々な一日だった。

だから、明日は今日よりもっと素晴らしい一日になると、あなたは素直に信じられるだろう。


Sweet dreams!(あなたに素敵な夢が訪れますように!)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ