ホットコーヒーとアイスコーヒー
「まだ暑さも残ってるって言うのによくホットコーヒーなんて飲めるよな」
ぶっきらぼうに彼が言う。
「いいでしょ、好きなんだから」
私は熱々のコーヒーにミルクと砂糖を入れながら答える。
彼はブラックで飲めるのでミルクも砂糖も要らない。
前に一度ブラックって苦くない?と聞いたときには、これのどこが苦いんだかと言っていた。
喫茶店の空調はいい感じに涼しくこの空間の居心地を良くしている。
私は熱々のコーヒーを冷ましながら少しずつ飲んでいく。
「猫舌なのに熱いのが好きなんて変わってるよな」
彼はそう言うが、本来なら私だって熱いのより冷たい方がいい。
ただ、私がホットコーヒーが好きな理由は熱いのを冷ましながら飲むので彼とゆっくりできる時間が増えるからだ。
彼と一緒に少しでも落ち着いた時間が欲しいと思う私のわがままだ。
少しずつホットコーヒーを飲んでいく私を見る彼の目はいつだって優しかった。
私は彼が好きだ。
本当は苦いのが苦手なのに私の前で格好をつけてブラックを飲んでいる、そんな可愛らしいところも含めて。