発表会2
ケンちゃんが弾き終わり
次の子次の子と流れるように発表を終えた。
そして、ある一人の容姿端麗の美少年で好青年が来た。
会場は待ってましたと言わんばかりの雰囲気で彼を見た。
彼はにこっと愛らしく笑って席についた。
トルコ行進曲 ベートーベン
今まで弾いていた子達とは全く違った。
全然。全く。
完璧と言わざる終えないくらいにとても
綺麗で上手だ。思わず聞き惚れてしまいそうになる
発表はすぐ終わり彼は最初来たときと同じ様ににこっと愛らしく笑ってお辞儀し、戻っていった
会場は大盛り上がりで観客者は喜んでいた。
流石優勝候補の子だ。
彼に違いない。
まさしく天才だ。
溢れんばかりの拍手
思わず耳を塞ぎたくなる
でも言いたいことは分かる
アンコールしたかったのだが、それは流石に出来ないなと思い目を閉じてさっき彼が弾いた演奏をリピートした。
今日のコンクールの発表会を終えた皆は
結果発表の看板にゾロゾロトと集まっていた。
ケンちゃんは入っているかなと思ったが、
入ってなかった様だ。母親に抱きついて泣いていた。
その他に気になっていた演奏が上手だった子達が10位以内に入ったかどうかぼーっと見ていると
ザワザワとざわめいた
「坊っちゃん1位おめでとうございます流石で御座いますね」
「そう、ありがと」
目の前には執事と先程大盛況だった演奏を弾いた彼が居たのだ。
彼は素っ気なく、当たり前かつ嬉しそうな顔して看板を見ていた。
自分も看板を見つめてたら、横から視線がして横を見たら彼が自分を見つめていた。
何故見ているのか不思議に思い、コソコソと
聞こえる声がした方に耳を傾けると
まぁ、なあにあの子。
どうして隣に居るの?保護者はどうしたのかしら
図々しいわ。悔しいからってあの子の隣にいるなんて…
あの子を誰だと思ってるのかしらね
天才ピアニストの――――――
コソコソと喋っていたが、看板の結果発表で夢中になっている人達のお陰で聞こえなかった。
とりあえず、まだ見つめてくる視線に少しイラっとした。
何か言えばいいのに。
看板の結果も見たので、戻ろうとすると突然自分を呼び止める声がした。
「…あのっ!」
突然の声にビックリして、
「?……ナニ?」
恐る恐る聞いてみた。先程のコソコソ話もあり
少し怖かったがもしかして自分が居ることによって邪魔だと感じたのか。そう考え思った。
「あの…その、」
もじもじしながら緊張した面で下を向いた
「…ぇ、と………。」
段々声が小さくなったと思ったら、その口から何も発していなくなっていた。
「ごめんなさい」
やはり邪魔だと感じて居たのだな。だから、言いづらそうに下をうつ向いたのだと感じ素直に謝った。
「―え」
謝った瞬間驚かれたけど、
「待っている人いるからごめんなさい僕は帰ります」
「ちがっ…な、んで……謝ったの…?」
一体彼は何を言っているのか
邪魔じゃなかったのか?と首を傾げた。
「アレ…に載ってなかった……?」
指差した方には結果発表の看板があった
1位から10位まで名前が記されていた。
「載ってない。僕はコンクールに出場してないから。」
「…えっ…そうなの?」
目をパチパチさせて驚く彼は少し面白かった
「うん。だから名前載ってないの。そっちは載ってた?」
「うん。1番上の名前それ僕の名前なの」
嬉しそうに微笑む彼
「へぇ…1位、ピアノ上手だったもんね。僕その弾いてた演奏好きなんだ」
「!…うん。ありがとう…うれ、しい
ベートーベンの曲好きなんだね」
「うんとっても好き」
「……あ、」
何か思い出した顔をした。
彼のコロコロ変わる表情に不思議に思った
「…どうかした?」
彼は後ろの執事の方を見て目で何かを訴えている
「坊っちゃん。そういうのはちゃんと自分で言わないと駄目ですよ」
微笑んだ顔はとても優しそうだ
「ぇ…で、も…ッ」
「坊っちゃん?」
彼は何か言いたそうだったが
近所の人も心配するだろうだから
「僕そろそろ戻らなきゃ行けないからごめんね」
後ろを向いて戻ろうとした時
袖を捕まれた
「待って!ごめんなさい!」
「なっまえっ」
「え?…名前………あぁ僕の。」
袖を掴んだ彼はコクコクと物凄い勢いで
頷いた
「僕の名前は
藤之木 美紀 だよ」
フジノキ ミキ
「…みきっ
僕の名前は
華仙 衣和 って言うの宜しくね!」
カセン イオ
「ん。宜しくね」
彼は勢い良く執事の方に振り向き何かを伝えている。とても嬉しそうだ
「良かったですね坊っちゃん」
執事も又、嬉しそうだった
「みきっまたっ…また来てね!」
「また?…ん~それは分かんない」
「えぇっ…みき僕の事、嫌?」
「違うよ、忘れてるかもって話僕忘れっぽいんだ。」
「えっえっ…どうしよ…どうしよ忘れないでみきぃ……ぐすっ」
「……」
「坊っちゃん泣かないでください。大丈夫ですよ。」
「だっ、てぇ…ぐすっ みきぃ」
「分かった忘れないから泣かないで」
「…ん」
泣かないで。宥めたら泣き止んだ
それに驚いた執事はおや坊っちゃん珍しい。
驚きの声を言っていた。