依頼内容その5:コンチェルト・シャントナーゼ
敵ストライカーがヒートブレードを振り下ろす瞬間、カズトはスケアクロウのライフルで、敵ストライカーの足元を撃つ。
踏み込んだ足元が崩れ、敵ストライカーは勢いはそのままにバランスを崩してスケアクロウに覆いかぶさるように倒れこんだ。
カズトは倒れこんでくる敵ストライカーに向かって全速力で加速し、押し倒し返した。
カズトは、そのままテキストライカーを押さえつけ、パイロットと回線をつなぐ。
「状況は理解できてるかと思うけど、まだ抵抗する?」
『うるせぇ!! よくも、あいつらを!!』
闇雲に機体を動かし、何とかして押さえ付けから逃れようと敵ストライカーは抵抗するが、スケアクロウの方が重量で勝っているようでたいした抵抗になっていない。
カズトはコクピット付近にスケアクロウの腕をぶつけて、振動で相手を黙らせた。
「お前、黒い翼のストライカーを知ってるか」
『クソが・・・、知らねぇよ、知ってたところで誰が話すか』
「もう一度聞くよ、黒い翼のストライカーだ」
『知らねぇよ、それに、人に物を聞く態度じゃねぇだろうが』
「そうか、残念」
カズトは、スケアクロウのライフルを敵ストライカーのコクピットに向けて放ち、敵ストライカーは動かなくなった。
「収穫なしか。。。」
カズトは、そう呟きながらレーダーを確認する。
新たに2体の敵ストライカーの反応があった。
おそらく挟み撃ちにしたかったのだろう。
コンチェルトを残してきたので問題ないとは思うが、合流したほうがいいだろう。
「三人で仲良くな。悪くない連携だったよ」
カズトはそう告げると、スケアクロウを輸送列車の方へ急がせた。
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「どうして、もっと楽に戦わないのかねぇ」
ツトムは飛び出して行ったカズトの戦い方を見守りながら、やれやれといった感じで呟いた。
「ツトム、カズトを援護するなってどういう事なの?」
コンチェルトは射撃体勢を取った状態でシェーラザードを待機させている。
少し心配そうな表情でカズトの先頭を見守っていた。
対照的に、ツトムは淡々としていた。
「どういう事も、まだ敵の数が判明してませんからね、増援がワラワラ出てくるかどうかくらい確かめないと」
「あなた、ストライカー戦で3対1なんて・・・」
「まぁ、ちょっと大変かもだけど、なんとかなりますよ。カズト君はピンチに強い子だから。」
と、そのとき、シェーラザードのレーダーに2機の敵ストライカーが補足された。
進行方向のトンネルの中に潜んでいるようだ。
ストライカーを格納しているコンテナは、有事の際に壁を瞬時にバージ可能なように設計されている。
コンチェルトがコクピットからパージの信号を送り、一つ前のコンテナを土台にしてライフルを構え狙撃体制に入った。
しかし、敵ストライカーはトンネルの中で煙幕を使い視界をさえぎった。
同時にレーダーから敵が消えたことをコンチェルトは確認し、この煙幕がジャミングの性能を持っていることを理解する。
ツトムが運転手に状況を伝え、運転手が一旦車両を停止させようとしたが、それをコンチェルトは制止した。
「待って、止まったら向こうの思う壺よ。このまま、できれば加速して」
それを聞いた運転手は、カズトとの合流と提案した
『お譲ちゃん、もう一人の兄ちゃんと合流したほうが良くねぇか』
「速度を緩めたところを狙ってコンテナを持ち逃げするつもりよ、速度を緩めないほうがいいわ。」
『トンネルの中でストライカーとやり合うってのかい? レーダーいかれちまったんだろ?』
「大丈夫、ロックが出来ないだけよ。敵もシェーラザードの事は認識したみたいだからうかつな攻撃は出来ないはずよ。私のを信じて」
『はは、どうせあんた達に託したんだ、信じるもクソもねぇよ。もしものときはこの物資、街のみんなに届けてやってくれ』
運転手はそういうと、列車の速度を上げた。
トンネルの入り口が近づいてくる。
「来た!」
ツトムが叫ぶのと同時に、煙の中からマシンガンを構えた敵ストライカーが2機飛び出してきた。
その瞬間、狙い済まされた射撃によって、敵ストライカーのマシンガンが打ち抜かれる。
状況を理解できず、呆気に取られる2機の間を列車は猛スピードで駆け抜けていった。
そして、列車の最後尾シェーラザードとすれ違う瞬間、至近弾を受け破壊された。
『お譲ちゃん、、、あんた、とんでもない腕前だな』
「ほんとほんと、僕もびっくりした! カズト君にも見習って欲しいよ、最低限の動作、最低限の弾消費、最大限の収益!!」
トンネルを抜け、列車は通常の速度に戻りカズトも合流した。
後ろから事の一部始終をカズトも見届けていたので、コンチェルトの腕前を素直に認めていた。
「レーダーのロック補助もないのに、あんな正確な射撃できるんですね」
「ありがとう。そう言ってもらえると素直に嬉しいわ。でも私の腕というよりシェーラザードが良くやってくれているのよ。あなたのスケアクロウもそうでしょう? お互い、いいストライカーにめぐり合えたわね」
カズトは、コンチェルトの言葉に少々答え辛いものを感じていた。
実を言うと、スケアクロウはカズトのストライカーではない。
ツトムのストライカーだった。
それを借りているのだ、ツトムとであったあの日から。
確かに、スケアクロウはジャンクパーツで作ったとは思えないほどの機体だが、いつかはツトムに返さなければいけない機体でもあった。
「そうですね、、、スケアクロウに出会えたのは幸運でした」
それを聞いたコンチェルトは、満足そうにウンウンと頷く。
そして、カズトにこう伝えた
「実は、あなた達にお願いしたい仕事があるんだけど、受けてもらえないかしら、報酬は、、、黒い翼を持ったストライカーの情報でどう」