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依頼内容その2 物資輸送列車護衛

「あのやろう、、、」


カズトは恨めしそうに呟きながら、スケアクロウでコンテナを運んでいた。

カズトのイライラは、先日のソシエートが開発していた新兵器を奪取する依頼が原因だ

最大速度で突っ込んでみたところ、向こうはちょっと手前の地面にレーザーを打ち込んで砂煙を発生させ煙幕代わりにした。

一呼吸置いてレーザーが連続で飛んでくる。

流石に精度がない。

目くらましの射撃だ。

おそらく煙幕の外を回り込むと予測しているか、距離を取るのだろう。

しかし、奴はわかっていない。

カズトは内心ほくそ笑んだ。

レーザーが飛んでくるということは、その先に奴は自分が居ることを知らせているのだ。

だったら、そのまま懐に飛び込んだらいい。


「驚いて腰抜かすんじゃねぇぞ!」


左腕に装備されたブレードを構え、砂煙の中に突入する。

くぐりぬけた先に居るであろう敵ストライカー・ギアを追い詰める自分を想像し早くも勝った気でいたが、、、


「あ、あれ、、、」


煙の先には敵ストライカー・ギアではなく携行用の自動迎撃装置だった。

レーザーを飛ばしてきたのはこいつらしい。

つまり、、、、


「あのやろう、、、、逃げやがった。」


トレーラーも居なくなっていた為、必要なデータも残っていなかった。

不幸中の幸いは、辛うじて収集できた試作兵器の評価データ。

そして、置き土産となった自動迎撃装置。

実は、これも既存の兵器には一致するものがなく動作時間や出力に向上が見られる為、ソシエートが開発していた兵器の一つとして認められた。

しかし、逃がした魚は大きく報酬は当初の半分、機体の修理代は何とか払ってもらえる事になった。

かといって収支はトントン若干の赤、、、

スケアクロウも修理代のほかに燃料や弾薬の補充が必要になり、カズトやツトムの家代わりとなっているストライカー・ギアの運搬トレーラー「シュバルツ・マローゾ(命名ツトム)」にも整備や燃料補給が必要となる。

いつもであれば依頼をこなして次の街へと移動していたが、稼ぎが足りないので今回はもうしばらくとどまることになった。

例の任務を持ってきたエージェントは、何度か依頼をこなしている相手だった為、依頼がないか確認してもらいちょうど新規で登録されていた依頼をまわしてもらった。

その依頼の内容はこうだ。


お前たちが今居る街に資源輸送用の列車が来ている。

当然、次の行き先に物資を運ぶわけだが。。。

少し前にソシエートとの戦闘に駆り出されて、護衛任務を担当するストライカー部隊が現在再編中という状態だ。

当然、警護もなしで列車は動かせない。

だが、資源にはロストグランドじゃ作れない医療品が含まれている。

というわけで、悠長に部隊が再編されるのを待っているわけにも行かないってことだ。

それで、お互いの街の責任者が協議してデスペラードを雇おうって話になったわけだな。

ここまで説明すれば、言わなくてもいいと思うが、、、簡単に言えば列車に輸送用のコンテナを積み込んで目的地までそれを護衛。

目的地までの移動にかかる燃料は報酬とは別に、ストライカー・ギアとトレーラー込みで清算してくれるそうだ。

お前さんたちも移動のコストが浮いてハッピーだろ?


ツトムは移動用の燃料が浮くという内容に大いに心を揺さぶられ、カズトは物資目当てに盗賊が襲ってくれば、この間の憂さ晴らしが出来そうだと考えこの依頼を受けることにした。


「しかし、このコンテナ、いくつあるんだよ。。。」


もう何個目かわからないコンテナを列車に積み込んでも、半分くらい残っているコンテナの山を見上げカズトはウンザリする。

ダミー用の列車も同時に発車するため、そちらに積み込むコンテナの数が多すぎる。

本物と合せて合計5本の列車を走らせるのだから当然なのだが、まさか依頼を受けたデスペラードが自分たちだけだとは。。。

もくもくと作業を続けていたカズトの所へ中年の男性が現れた。

列車の運転手だ。


「悪いな兄ちゃん。一人じゃいくらなんでもつらいだろ。」

「いや、まぁ、数が少なければ報酬を山分けしなくて済むんで。。。」

「はは、そいつは、悪いことしちまったかな。」


運転手は缶ジュースをカズトに渡す。


「飲みな、おごりだ。実はさっき、もう一人と契約できたって連絡があってよ。取り分減らしちまったな。」

「いや、正直、ありがたいっす。コンテナ運びなら一人でも出来ますけど護衛は数が多いほうがいいっすから。」

「ありがとよ、頼りにしてるぜ。」

「うっす。」


運転手はニヤッと笑うとカズトにこう伝えた。


「その、もう一人な、かなりのベッピンさんらしいぜ。」


出発まで後わずかとなってから、そのもう一人は現れた。

女のデスペラードというのも別に珍しいものでもない。

美人かどうかはまた別の問題だ。

問題なのは、大体の場合において気が強く、男には負けないという強い意思が体中から放たれていることだ。

過去に何度か合同で依頼に当たったことがあるが、何かと文句を言われたり注文が多かったりと、いい思い出がない。

カズトは、正直これなら一人のほうが気が楽だと思っていた。

しかし、彼女は今までとは少し違っていた。


「初めまして、私はコンチェルト・シャントナーゼ」


てっきり、敵意を向けられると思ったがそうではなかった。

淡々としたただの挨拶だったが、カズトにはわりと好意的に感じられた。

あと、運転手が言っていたとおり、いや、それ以上の美人だった。

腰まで届く長く黒い髪、背はそれほど高くないがスラッとしていてスタイルもいい。

どこかのお姫様と言われても信じてしまえるほど、気品のようなものを感じる。

予想外の状況に、動揺しつつもカズトは挨拶を返した。


「ご丁寧にどうも。。。俺は、カズト。アウタードだから名前だけだ。」


そう、アウタードはファミリーネームと呼ばれるものはない。

ネイションやソシエートの人間は、ファミリーネームを持っている。

ロストグランドにネイションやソシエートの人間がやってくるのは別に珍しいことではない。

その逆は、ほとんどありえないが。

つまり、彼女は何かしらの目的があってこちらにやって来たのだろう。


「そう、ではカズトと呼ばせてもらうわ。私の事は好きに呼んでくれてかまわない。」

「わかりました。シャントナーゼさん。」

「ありがとうカズト。早速あなたのストライカーギアのことを教えてもらえるかしら。護衛の役割分担を検討したいの。」


そういうと、彼女はストライカー・ギアを格納しているコンテナの方へ歩いていった。

カズトはなんとなく主導権を握られてしまったような気がした。


「おい、兄ちゃん。しっかりしねぇと尻に敷かれちまうぞ。」


運転手が、やらしいニヤケ顔をしながらカズトを小突く。


「な、別に。。。」


ポンとカズトの肩に手を置くと


「これも何かの縁だ。女が一人で向こうの世界捨ててこっちに来てんだ、分けありって事だろ? 手ぇ貸してやるのも悪くねぇんじゃないか。」

「何か知ってるんすか?」

「まさか、まぁ、あえて言えば、兄ちゃんよりちょっとばっかし長く生きてるから、その分、いろんなものを見てきたってだけだ。」


そう言って、運転手も列車の先頭へ行ってしまった。


「答えになってねぇよ。。。」


あーあ、とため息をついて、カズトは先に行ってしまった彼女を追って歩き出した。


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