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依頼内容11 小さな誓いと小さな願い

また、時間が空いてしまいました。ちゃんと続きになってるか怪しいですが…続きです。

もしも、お付き合いいただけるならよろしくお願いします。

その老人は、この辺りは大昔の時代に何らかの目的で当時の人間が地下をくりぬき、空洞となっていることをカズトとニーナに教えてくれた。

「昔の人間は、天高くそびえる塔も作ったが、こんなふうに地下にも自分たちの世界を作っとったらしい。」

「なるほど、どおりで自然にできた穴にしては不自然なわけだ。ところで爺さん、アンタ一体、なんでこんなところに?」

ニーナを隠すようにして、カズトは老人に問いかけた。

「そう警戒しなくていい、ワシはマイヤーという。医者をやっていてな、皆からはドクター・マイヤーと呼ばれたりしとる。」

医者という単語にニーナが反応する。

「お医者さん・・・?」

「町の近くでドンパチが起きたからな、パトロールに出ていた自警団がそれを発見して通報があった。それで救助にきたというわけだよ。」

そういいながら、ドクター・マイヤーは肩から下げている鞄に入った薬や包帯などをカズトに見せてくれた。

「ニーナどうやら助かったらしい。」

カズトがそう言うと、ニーナもホッとしたようだった。

本当はずっと怖かっただろうに、目の前の状況へ冷静に対処できるなんてすごいなと思うと同時に、そうならなければ生きていけなかったのだろうとたやすく想像ができるこの世界に対しカズトはやるせない怒りを覚える。

そして、自警団が組織できる町ともなると目指していた目的地はかなり発展した部類に入る都市なのだろうと確信できる。

そこらへんで手に入らないような薬が調達できるのも当然か、とカズトは納得した。

正直、まがい物の薬をつかまされる可能性も、あのエージェントの依頼とはいえ少なからずあったのでそれ自体は杞憂に終わりそうで安堵する。

「自警団は、どのくらいの規模なんだ?」

「さすがに軍隊相手には歯がたたんだろうが、ごろつきの相手は十分できるレベルじゃよ。ストライカーギア4体で1つの隊を組んで、それが3隊じゃな。」

「そいつは凄い。そこまで組織立って自警団をやれているなら確かに安心だ。でも、どうして医者がこんな戦闘が起きるような場所に?」

「戦闘があれば、怪我人が出るだろう。死んでなけりゃ手当をしてやらにゃぁならん。自警団は戦闘はできても治療はできないからな。運ばれてくるのを待っていたら助けれられるものも助けられん。」

カズトは『死んでなけりゃ手当を』と言った老人の言葉を反芻する。

そうやって、救われたかもしれない命を自分は何度奪ってきたのだろう。

やらなければこっちが死んでいたのだ、それ自体はお互いにお互いさまで百も承知で当然だ。

ただ、命を救う医者という人たちにその理屈は通らないとカズトは思ってしまう。

「そのストライカーギアはちょっと無事ではなさそうだが、お前さんが無事でよかった。よくお嬢ちゃんに怪我をさせなかったな。」

ポンっと肩を叩かれ「大したもんだ」とねぎらわれる。

正直、そんな言葉をかけてもらえるとは思っていなかったので意外だった。

「ふむ、その包帯と止血は自分でか?」

「これは、ニーナが。」

「あのお嬢ちゃんが? 少し包帯の巻き方が雑だが・・・大したもんだ。ちゃんと応急処置ができとる。しかし、あんな子供にこんな技術を覚えさせる世の中はたまらんよなぁ」

リアクションに窮していると、ドクター・マイヤーの持っている通信機に連絡が入った。

『ドクター、こっちはかたが付きましたよ。そっちはどうです?』

「おお、ごくろうさん。こっちも問題はない。やはり地下からつながっている空間に落っこちておったよ。発信機の信号はキャッチしているな?」

『ええ、問題ありません。そのルートでしたら地下から別部隊に回収させます。』

「ああ、それでいい。あー、ストライカーも回収してやらんといかんから、トレーラーをよこしてくれ。」

『了解です。では、我々も賊と戦闘していた方々を連れて町のほうに戻ります。以上』

ドクター・マイヤーは通信を終えた。

「さて、まぁ、聞こえていたと思うが、お前さんたちのお仲間も無事じゃったようで何よりだな。」


しばらくすると、ストライカーギアを搬送できるトレーラーがやってきた。

しかし、スケアクロウはガレキの下敷きになっているうえに落下の衝撃で下半身が埋まってしまっている。

カズトは、これをどうにかするにはストライカーギアでも持ってきて引っ張り上げるしかないかと思っていたが、レーラーにはクレーンが付いていて引き上げることができ無事回収作業が開始された。

この辺の処理から、この町の自警団が様々な経験を積んでいることが伺える。

こんな町もあるもんなんだなとカズトは感心していた。

あの爺さんに聞きたいことはたくさんあったが、ニーナを放り出して話し込むわけにもいかない。

そのニーナはというと、ドクター・マイヤーの簡単な診察を受けやはり問題はない様子だった。

正直、カズト自身、落下の衝撃で肩や膝に結構痛みが走っていた。

ニーナに問題がないのは本当に良かったが、あれだけの衝撃を全部吸収する安全装置を積み込むなんて用意がいいにもほどがある。

まぁ、今回はその用意の良さに感謝しかないわけだが・・・

「カズトさん、問題ないって言ってもらえました。」

「そうかニーナ、よかったよ。戦闘になんかなって、怖い思いをさせてごめんな。」

ニーナはさすがに安堵して疲れが出たのか、やや疲れたようだったがやはり小さく笑顔を作る。

「カズトさんが居てくれましたから。」

会って間もないこの少女にここまで信頼される理由が、それが正直カズトにはわからなかった。

だが、理由がどうあれそこまで信頼を寄せてくれるのであれば、裏切りたくはないし裏切ってはならないと思うし、この子に悲しい思いをさせたくないと思う。

『無事に薬が受け取れそうで本当に良かった』この子に弟を助けさせてやりたい。

自分にはできなかったことを果たしてほしい。

「薬ちゃんと届けるから。俺が必ずニーナの弟のところまで届けるから。俺のことを信じていてくれよな。」

ニーナはうれしそうに笑った。

「はい。カズトさんを信じてます。また、守ってくださいね。」

彼女は父のことを思い出す。

ストライカーギアを操り依頼をこなす、そう彼女の父もデスペラードの一人であった。

その父のエージェントが今カズトたちと組んでいるエージェントだ。

父が行方不明となった後、父の代わりに自分たちの生活に便宜を図ってくれているエージェントの彼から、ことあるごとにカズトの話を聞いていた。

ある時は「せっかく物資を独り占めできたのに、現地に半分くらい置いてきちゃったんだよねぇ。食べ物と飲み物。あの地域、食い詰めた子供多いからなぁ。」またある時は「いやー、依頼主にブチ切れしちゃってさぁ。そりゃぁ、まさか、現地に行って依頼内容聞いてみたら、開発が禁止されている生体兵器開発の資料を極秘に輸送しろって話になればいくら金を積まれてもねえ、そんで、口封じされそうになったんだけどぜーんぶやっつけちゃったんだよね向こうの戦力。ま、きな臭い話だったし、もしもの時の援軍を用意しておいた俺のおかげだけどなぁ。」そして「ホントさぁ、ニーナのお父さんにそっくりな性格してるんだよカズトのやつ。まぁ、ストライカーギアの腕はニーナの親父さんのほうが上だけどな。」カズトの話をするときの彼は、楽しそうで父の活躍を自分の事のように語っていた時と同じだった。それだけでわかった。信じてよいのだときっと自分を助けてくれると。


「おーい、二人ともこっちへ来とくれ。」

ドクター・マイヤーが二人を呼ぶ。

「トレーラーへの積み込みが終わったぞ、少し揺れるがお前さんたちも乗ってくれ。そう時間はかからんが少し座席で寝るといい。」

二人は促されトレーラーの後部座席に座る。

「ニーナ付いたら起こすから、安心して寝てていいぞ。」

偉そうにそういったカズトは、座って背もたれに体を預けた瞬間スヤァっと眠りに落ちた。

警戒心はどこへ行ったのか。

「そういうところまでお父さんに似てるんですね。ちょっとずるいですよ…」

ニーナは悪いと思いつつついつい笑ってしまった。

「私は知ってましたよ。ずっと前からあなたのことを信じてます。だから、ちゃんと守ってくださいね。」

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