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第1章-9

コンサートは京都、大阪、そして千秋楽の東京と無難に進んで、めぐの華麗な

ギタープレイは大いに観客を賑わせて度肝を抜いていた。


バンマス松岡のお抱えのスナックを借り切っての打ち上げも大いに盛り上がって

普段はあまり飲み過ぎないめぐも、この日ばかりは進められるままにビールを

流し込んで、けっこうなハイ状態に。打ち上げも半ばになった時、高橋は

「カラオケで歌いまくろうや!」と言って先陣を切って歌い始めた。

結局は自分が歌いたかったような感じであった。バンドメンバーや関係者が

歌い継ぐ中、めぐは盛んに歌うのを進められたが、断り続けるもさすがに

断りきれずに香坂みゆきの「乾いた花」をリクエストした。

めぐがマイクを握ると各テーグルで痴話話に沸いていた者たちは一斉に沈黙。

1コーラスが終わると拍手喝采!実際歌手顔負けのうまさだった。

「アイツ、ギターだけかと思ってたら歌も凄くうまいやんけ、驚きや!」

高橋はこの中では歌のうまさは自分が一番だと思っていたが、めぐには脱帽した。

落ち着いて皆が歌うのを観ていた松岡も、この時ばかりは手を上げての拍手!


打ち上げも最高に盛り上がって終え、しばらくはレコーディングも無いことから

だいぶ先になる再会を約束してその場を別れた。

めぐの方はというと、明日からCMミュージックの録音と、香坂ニューアルバムの

レコーディングとスケジュールはけっこう詰まっていた。

しかしながら六本木の馴染みのスタジオだったので、東京の母元である小料理屋

には毎日のように足を運べるというのが楽しみであった。


CM撮りも2つを終えた頃、いつものごとく小料理屋で遅い晩御飯を御馳走になっていたら、

めぐとは初対面となる常連が暖簾をくぐってきた。

「あら高橋さん、ずいぶんお久しぶりねぇ〜!」女将は笑みを浮かべた。

高橋というと、松岡直也グループのリズムを支える高橋ゲタ夫と同姓であるが、

よくある苗字なので、きっとまったく関係は無いだろうとめぐは思っていた。

この高橋という男はめぐを見るなり、図々しくも隣に座ってきて、

「ギターやってるの?昼間は何の仕事してるのかな?」と質問してきた。

ずいぶん失礼な人だなと思いつつも、これが仕事だと告げると今までの人と同様に驚いた。

「実は僕、今から日本のメディアを大きく変える動きをするんだ。君にも是非

手伝ってもらいたいんだ。君にはオーラがあって僕のイメージにピッタリだ!」

高橋は突然訳の解らないことを言ってきたが、酒を飲みながら語り続けるのを

聞いていると、どうやら新しいアダルトメーカーを設立するらしい。

「私、そのようなことに興味ありませんし、お金にも困っていません」

ぼそぼそと呟くようにめぐは言ったが、それを聞き高橋は驚いて、

「いや、君にアダルトの女優になってくれとは言っていない。僕が今からやること

を見続けてほしいんだ。そしてアドバイスでもしてくれたらウレシイよ」


しかしながら本当はめぐのような美貌を持った女性を探して出演契約に漕ぎ着ける

のを目的としていたことは明白だった。女将もさすがに

「高橋さん、このコは音楽で勝負しているのよ。アナタとは接点なさそうね」

こうたしなめたが、高橋はさかんに弁明して場を取り繕った。

しかしこの人こそ、後にソフトオンデマンドを創業する高橋がなりであり、

めぐにとって思わぬ助け舟を出してくれる人物となるのであった。

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