第2章-3
「えっ?嘘でしょう?めぐちゃん。。。妹さんかお姉さん?」
高坂の予想通りの驚きぶりに矢野はしてやったりという感じだった。訳を事細かに話すと
赤の他人でこれほどソックリなのがありえるのかと更に驚いた様子だった。
オーダーしたジュースがテーブルの上に乗せられ、麗がストローに口をつけズズズーと音を立てて
飲むと高坂はチラッと麗の顔を見た。矢野は、めぐだったらこんな下品な飲み方はしないだろう、
やっぱり他人なんだなと高坂さんは思っているだろうなと高坂の心中を察した。
高坂は出来るだけの協力はすると約束しホテルを離れた。その後は矢野は編集作業、麗はギターの
練習に時間を費やすこととなった。番組の打ち合わせなどはまったく進まずスローペースだった。
1週間が過ぎ、年末のあわただしさがいっそう増してミュージックジャーナル編集部はバタバタしていた。
今年も例年通り年末恒例のカウントダウンライヴなどの取材があるのだが、矢野はどうも気がすすまない。
もちろんめぐが参加していないというのが大きな理由であるが、目玉的なグループが少ないという
音楽業界の谷間的な部分が最近どうしても強く感じられるようになっていた。しかしながら
誌面を詰めなければ発刊は出来ないという雑誌社の宿命であるがために仕事はこなしていかなければ
ならなかった。麗はギターの練習の他に進み始めてきた番組の打ち合わせなどでテレビ局にも
通うようになっていた。しかしながら年末年始はテレビ局も超多忙な時期だけに番組の進行状況は
相変わらずカメの歩みのようで、まったくやる気が感じられない。
1988年もいよいよ終わりとなり、忙しい矢野とマイペースの麗は対照的な存在となっていた。