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第2章-1

めぐがこの世を去ってから1年が過ぎようとしていた。亡くなった当時は音楽雑誌などを

中心に、彼女の残した功績を称えるかのような記事が沢山目についたが、3ヶ月も経てば

人々から忘れ去られることとなった。


小料理屋の女将は、めぐが亡くなってから1ヶ月に渡ってショックで店に立つことが

出来なかったが、現在は元気にお客を迎え入れている。亡くなってすぐに知らされなかった

高坂は、めぐの実家に出向いてお墓と仏壇に手を合わせ、すすり泣きながら長い時間立てなかった

という。松岡もショックで活動をしばらく休止したが、現在は後任のギタリストを入れて活動を

再開していた。


ミュージックジャーナル誌の矢野は、めぐに対しての記事をどの音楽雑誌よりも大きく紙面を割き、

どのように素晴らしいミュージシャンであったか詳しく書き記した。相変わらず締め切りに追われる

毎日であったが、そんな彼に驚くような企画が持ち込まれてきた。


それはミュージックジャーナル社が親交を深くしているフジテレビが、めぐのドキュメント番組を

作ろうという懸案を矢野に相談してきたのであった。もちろん矢野は、めぐの活躍を多くの人に

知ってもらいたいと常日頃から思っていたので、二つ返事で企画への参加を了承した。

企画としては、彼女の残された映像があまりにも少ないということで、再現ドラマを製作すると

いう話になった。しかしキャスティングに問題があるということで、一時は断念せざるを得ないと

いうところまでいったが、最終的に一般のオーディションでめぐ役を抜擢することとなった。


ミュージックジャーナル誌で公募記事を出すのはもちろんだが、フジテレビの系列会社である

ラジオのニッポン放送音楽番組で、大々的にDJがリスナーから募集するという大掛かりな企画へと

発展していった。ロックが好きで注目を浴びるルックスの女性が回りにいたら推薦で知らせて欲しい

というDJの呼びかけは大きな反響を生んだ。


写真付きの履歴書はかなりの数が溜まって、最終的にオーディションをするという形になって

10人に絞り込まれた。面接には矢野も列席することとなり、ニッポン放送会議室にて行なわれた。


矢野を含め、番組ディレクターやDJ、放送作家など8人で面接が行なわれたが、2人目の面接が

終了した時点で矢野は痛感した。確かに最終選考まで残った女性は容姿端麗でスター性があるが

めぐの代役などありえない。ギターを持った姿など考えられないのだ。これは自分の意見を言うまでも

無い企画だったと思い始めていた。


最後の1人で面接が終了という時には、矢野は完全にやる気が失せて、遠くをぼんやりと見つめて

いるといった感じで、この場が早く終わらないかと思っていた。

最後の女性は関西弁まる出しのギャルで、しゃべる雰囲気が生意気な感じがし、顔など見る気力すら

失せていた。しかしフッと顔を上げて彼女の顔を見て、持っていたボールペンを思わず落として

しまうほど驚いた。茶髪であったが、顔立ちがめぐと瓜二つなのだ。こんなことがあるのか...

矢野は彼女の履歴書を書類の束から探し出して見直した。


日野(ひの) (れい1966年生まれの22歳、生まれも育ちも大阪


彼女を見た瞬間、出来ないと思っていたこの企画いけるかも知れない。いや、彼女に出会う為に

この企画は持ち上がったのだ。これは運命的なものに違いない...矢野の中に燃える何かが芽生えた。

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