第11話:バルガスの想い -4-
「俺の方も一言いいかね」
背中を向けたままでオウルは言った。
「村境の石柱にあった魔物封じの紋章。あれ、何だったんだろうな」
「さあな。知らんよ」
バルガスも背中を向けて答えた。
二人の魔術師は背中を向けあったまま、しばらく黙りこむ。
オウルがまた口を開いた。
「最初から気になっていたんだ。この一帯にだけ魔物がいないのはあまりにも不自然だった。シグレル村に行った時、村の門にあの紋章を見つけた。村境の石柱にも同じものがあった。その時はまだ、村に伝わる何かのまじないかとおもっていたんだが。アンタのいた西の砦。あの隠し通路の扉全てにご丁寧に同じものが描いてあったな。それが魔物封じのためと分かってみれば、誰が何のためにそれを描いていたのかなんて子供の算術より簡単な話だ」
焚火をかき回す。パチリと音を立てて火がはぜた。
「アンタ、あれが何だか知っていたんだろう。それどころか、あれを描いて使いこなしていたのもアンタだ。神殿の秘術を、魔術師のアンタがなぜ使いこなせるのかは知らんが、他に考えようがない。アンタは人間たちを国境から遠ざけるために魔物を連れてきたが、完全に操ることは出来なかった。だから自分の安全を守るため、あの術で自分と魔物たちの生活域に線を引いた。そして同じ方法で生まれた村を守ったんだ」
オウルは体を回して、闇の魔術師の背を灰色の目で見た。
「アンタが国境に現れ、砦を占拠したのが三年前。魔物の数が減り出したことに村人が気付いたのが二年ほど前。広い範囲で術の効果が出るのにそれだけ時間がかかったと思えば納得できるし、どうしてアンタがわざわざシグレル村に顔を出したのか、その謎も解ける。村を守るために、あの紋章を刻むために、アンタはどうしても一度あの場所に行かなくてはいけなかった。嫌われているのが分かっていてもな」
バルガスは返事をしない。
束ねた黒髪を揺らすこともなく、ただ手元の魔術書の頁をゆっくりとめくっている。
「アンタはさ。見せかけてるほど悪人じゃないんだろ、先達。何がどうして闇の魔術師なんてものになったのか、聞く気はねえが。そうやって悪ぶってるのも気恥ずかしいからじゃないのか? 追い出された生まれ故郷を守ろうとするアンタ自身、ってヤツがさ」
バルガスがゆっくりと振り向いた。
黒い目を剥きだして恐ろしげな表情で脅すように言う。
「今、君をここで呪い殺しても良いのだぞ。半端魔術師」
「おお。怖ェ」
オウルは大げさに避ける仕草をして見せた。
「後進をいじめないでくださいよ、先達」
バルガスは莫迦にしたように大きく鼻を鳴らし、また背中を向けた。
オウルは大げさにため息をつく。
「本当に難儀な先達だぜ。付き合いにくいな」
聞こえよがしの言葉に、バルガスは返事をしない。
それに背中を向けて、また料理の続きを始めながら。
まあ今回の補充は、船長にしてはマシな方だったのではないだろうかとオウルは思った。
どれほど信じられるかどうかはともかく、当座の戦力としてアテになる相手であることは確かである。
少なくとも、オウルの中ではアベルよりはマシだった。
「陸に上がった船長」に、「攻撃魔法の使えない魔術師」、「ごうつくばりの商人」に「クサレ神官」。そこにどうやら、「付き合いづらい闇の魔術師」も加わったようだが。
それはそれでこのパーティーらしい。そう思うオウルであった。
-アベルがなかまにくわわった!-
-バルガスがなかまにくわわった!-
彼らの未来に幸あれ。
ティンラッド
しょくぎょう:せんちょう
LV36
つよさ:280
すばやさ:335
まりょく:89
たいりょく:307
うんのよさ:345
そうび:かたな(しんげつ) かたな(こうげつ)
わざ:ひっさつ まざん・せいめいこうげつ まとつ・りょうあんしんげつ
もちもの:ヒカリゴケのおまもり
オウル
しょくぎょう:まじゅつし
LV22
つよさ:22
すばやさ:35
まりょく:260
たいりょく:26
うんのよさ:49
そうび:げっけいじゅのつえ
まじゅつしのマント
もちもの:まじしん かんそうきょう ヒカリゴケのおまもり
ロハス
しょくぎょう:しょうにん
LV18
つよさ:17
すばやさ:26
まりょく:14
たいりょく:33
うんのよさ:108
そうび:ヒノキのぼう
もちもの:なんでもしゅうのうぶくろ ヒカリゴケのおまもり
アベル
しょくぎょう:しんかん
LV6
つよさ:9
すばやさ:280
まりょく:17
たいりょく:66
うんのよさ:500
そうび:しんかんふく
わざ:ビックリドッキリルーレット
もちもの:ヒカリゴケのおまもり
バルガス
しょくぎょう:やみのまじゅつし
Lv29
つよさ:242
すばやさ:198
まりょく:780
たいりょく:275
うんのよさ:38
そうび:まじゅつしのローブ
もちもの:こくたんのつえ ヒカリゴケのおまもり
しゅうにゅう
トーレグの町の酒 400ニクル(50ニクル×8本)
ヒカリゴケの権利金 200ニクル(100ニクル×2件)
ししゅつ
シグレル村の宿代 360ニクル(120ニクル×3人)
食糧代(肉・野菜など) 300ニクル
しゅうしけいさん マイナス60ニクル
しょじきん
13ゴル7シル740ニクル