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第11話:バルガスの想い -2-

 数日歩いて、シグレル村の境界に入ったことを示す道しるべの場所まで着いた。

「じゃ。ここでちょっとやってもらおうか」

 荷物を下ろして一息ついたオウルが言った。

「何をですか?」

 アベルがたずねる。

「例の封印だよ」

 オウルは言った。月桂樹の杖で石作りの道しるべの下の方を叩く。

「ここを見ろ。例の紋章が彫り込んであるだろ」


 アベルとロハスがそこをのぞきこんだ。

「ホントだ」

「なるほど。ではオウル殿。この森に魔物がいなかったのは、何者かが神殿の秘術を使って封印を施していたからだと申されますか」

 アベルは不思議そうに聞く。

「私以外にこの秘術を使えるものはいないはず。これはどういうことなのですか」


「俺が知るかよ」

 オウルは木で鼻をくくったような返事をした。

「ただ、事実ここにこの紋章はあるだろ。村に着いてから失敗しても困るし、練習だと思ってやっておけよ」

「練習など必要ありませんよ。私は大神殿でしっかりと修行を積んできたのですから」

 ぶつくさ言うアベル。ついこの前まで使命の内容すらう忘れ去っていたくせにとオウルは思ったが、面倒くさいのでツッコまなかった。


「まあ、いいでしょう。オウル殿がそんなにおっしゃるなら、ひとつやっておきましょう」

 術をかけようと構えを取るアベル。それに向かってオウルは声をかけた。

「大丈夫か。しっかりやれよ。間違っても村人の前でゼロとかマイナスとか出すなよ」

「失礼な」

 アベルは憤慨して振り向いた。

「マイナスは出たことはないと申し上げたではありませんか。あれは神様のちょっとしたお茶目ですな」

 砦の戦いでのことは全く記憶にないらしい。

「出たんだよ」

「出たよ、思いっきり」

 と呟くオウルとロハスであった。


 今回のルーレットが差したのは『2』。まあ、悪くない目である。

 アベルの魔力が回復する前に同じ術を使うとルーレットの倍率が変わってしまうので、アベルにはそこで昼寝をするよう強制された。

「昼寝で魔力が回復するって神官もお手軽でいいよねえ」

 ロハスがため息をつく。

 普通、魔力というものはゆっくり休養を取らないと回復しないのだが。

 アベルはあらゆる意味で特別製らしい。


「まあ、レベルが上がっても魔力が大して上がらない神官だからな」

 オウルもため息をついた。砦の戦いで皆それなりにレベルが上がったのだが、アベルの魔力値に見るべきほどの変動がなかったのは悪いことなのか良いことなのか。

 その判断が簡単につかないこと自体がどうかと思う彼だった。


「これからの話だが」

 バルガスが言った。

「私は村に入らない方がいいだろう。あの村では、顔を知られてしまっているのでね」

 冷たい薄ら笑いを浮かべる。

「確かにねえ」

 ロハスが言った。

「魔物を連れて西の砦を支配している闇の魔術師としてカオが売れちゃってる人を連れて村には戻れないなあ」


「だが、それでは君はどうする」

 ティンラッドが尋ねた。

「森で野宿でもしているさ。君たちは村でゆっくりしてくるといい」

 バルガスは何でもないことのように言った。

「それじゃこうしよう」

 オウルが言った。

「俺がこの難儀な御仁に付き合うぜ。森を歩いている村人に鉢合わせしないとも限らないからな。その時は俺が応対する。アンタは物陰にでも隠れてろ」


「それでは村へ行くのは私とロハス、アベルということになるな」

 ティンラッドはあごをなでる。

 とても不安な顔ぶれだなと思ったオウルは、

「おい。お前が最後の砦だ。何とか騒ぎを起こさずに戻ってこいよ」

 と固くロハスに言いつけておいた。 



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