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第8話:西の砦へ -3-

 気を取り直して、旅を再開する。

 ロハスが魔物の毛皮をはぐことにこだわったので、出発までは少し時間がかかった。

「それでは、はりきってまいりましょう!」

 調子だけはいいアベルの掛け声が、余計に腹が立つ。しかし、それはもう無視することにした。ツッコんではいけない。ツッコめばツッコむほど深みにハマる。そんな気がする。


「なんと。砦の魔物は人間が率いているのですか」

 新情報に眉をひそめるアベル。

「罰当たりな。神罰を下してやらねばなりませんな。ご安心ください、この私の神言のひらめきが堕落した者どもを必ずや打ち滅ぼすことでしょう」


「回復呪文でどうやって」

「アベルの魔力じゃ足らないでしょう」

 同時にツッコんでしまうオウルとロハス。ツッコんではいけないと思いながらも、ツッコみどころがありすぎてツッコまずにいられない。その板挟みに苦しむ二人であった。


「問題はありません。神の力は広大にして普遍なのです」

 そしてそのツッコミを受け流すアベル。

「その時をお待ちなさい。必ずや神の力が発動し、この世に奇跡を起こすでしょう」


「そんな時は来ねえよ」

 オウルはむっつりと言い、

「うん。まあ、気長に待ってるから。オレが死ぬまでに何とかして」

 ロハスが投げやりに返事をした。


「このパーティもにぎやかになってきたな」

 ティンラッドがひとりうなずく。

「活気のあることはいいことですな。船長さんの人徳といえましょう」

 うなずきつつ、ヨイショするアベル。


「違う。船長」

 オウルはきっぱりと主張した。

「盛り上がってない。盛り下がってるんだよ、このパーティは今現在」


「にぎやかじゃないか」

「そうですよ。このように人がたくさんいて、楽しいではないですか」

「楽しいのはアンタだけだ、このクサレ神官」

 にらみつけてから、ティンラッドに顔を向ける。


「おい船長。提案するぞ。ここの魔物をやっつけたら、次に向かうのは大神殿だ。このクサレ神官をのしを付けて返品して、もっとマトモなヤツと交換する。そうじゃなきゃやってられねえ」

「うーん」

 ティンラッドは不満そうな顔をする。

「大神殿に魔王がいると思うか?」

「そうですよ。大体、私は大神殿から受けた特命を果たす旅の途中です。使命も果たさぬうちに、おめおめと戻るわけには」


「アンタに使命を語る資格はねえよ」

 どうしてもツッコまずにはいられないオウルだった。ある意味、それは彼の不幸とも言えるだろう。

「あと、魔王がどうとかよりこっちの方が大事だ。このクサレ妖怪が野放しになってる方が、魔物よりよっぽど問題だろうがよ。誰だか知らねえが、大神殿に行ってその責任を取らせなきゃ気が済まねえ。絶対に行くぞ、大神殿!」


「やれやれ」

 ティンラッドは肩をすくめた。

「そんなに言うなら、まあそうしてもいいが。どこにどんな手がかりがあるか行ってみなくては分からないしな」

 こうして次の目的地が決定された。


「もっとも、目の前の敵を攻略しないと次も何もないんだけどさあ」

 ロハスが憂鬱な顔で言う。戦闘が苦手な彼は、そのことを考えるだけで気分が落ち込むらしい。

 自分だって同じようなもののはずなのだが、とオウルは思う。

 気付いたらパーティの中核のようになってしまっている。非常に理不尽である。

 いつか絶対に、ここから抜けだしてやる。改めてそう胸に誓うオウルであった。


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