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第7話:森の怪異 -2-

「うっわー! 出たあ!!」

 とたんにロハスがものすごい悲鳴を上げた。妖怪対策用の食糧を後ろに向かって投げ捨て、ものすごい勢いで走り出す。

 その姿を見てオウルは、コイツ本当は戦士としても適性があるんじゃないか、と思った。


 だいぶ離れたところまで行ってようやく足を止めたロハスは仲間がいないのに気付き、

「何やってんの! 早くこっちに! 今のうちに逃げるんだ!」

 と叫ぶ。それでも後ろを振り返らないのは、妖怪を見たら呪われると信じているのか。


「今のうちにと言ってもなあ」

 オウルは、どちらかと言えば好奇心が勝っていた。

 背後から魔力は感じない。襲ってくる気配もない。となれば怪異の源を確かめるだけである。

 

 そう思い振り返ると、道の真ん中にうずくまって食糧をむさぼり食らっている灰色の塊とすたすたとそれに近付いて、

「君は魔王か? そうでなければその手下か何かか?」

 と普通に聞いているティンラッドの姿が目に入った。


 早いよ、船長。

 とオウルは思う。

 そして、警戒心がなさすぎだ。


「もふもふ、はははは、はひほほでもほっひゃるは」

 灰色の塊が謎の言語を発した。

 口から、パン屑が飛び散る。汚い。

 食いながらしゃべるな。そうオウルは思った。


 ティンラッドも嫌そうな顔をする。

 それから、もう一度問いかけた。

「君は魔王か? 言葉が通じるならちゃんと返事をしたまえ」


 灰色の塊はいじきたない仕草で食料を口に詰め込み、それからごっくんと音を立ててのみくだした。

 それから言った。

「魔王の眷属とは、失礼はなただしいですな。私は西の大神殿から特命を受けて派遣され、旅を続ける三等神官。非礼を詫びていただきたい」


 オウルは、出会って初めてティンラッドが仰天した顔を見た。

 もっとも自分だってそれ以上に度肝を抜かれていたのだが。


「はあ? アンタ、人間か?」

 思わず、口から間抜けた質問がもれる。


「何をおっしゃる。見ればわかるでしょうに」

 灰色の塊は余計に機嫌を損ねたようだったが、分からないから聞いている。そう思わずにいられないオウルだった。


 とりあえず、

「おーい、ロハス。戻ってこい」

 思いがけない成り行きに驚きながら、精神の平衡を取り戻そうと仲間を呼んだ。

「なんかこれ、一応人間みたいだぞ?」


 それにしても、森に潜む妖怪の正体が、いったいどうして大神殿の神官なのか。

 わけが分からない三人であった。

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