ところでアレフは
その頃。
トーレグの町を目指してソエルの城下町を出たアレフ、ロナルド、ハンナの三人だが。
町に近付いた時、激しい雪に阻まれて後退を余儀なくされた。
一度城下町に戻り、冬の装備をそろえて再び町を目指す。
雪の領域にもう一度足を踏み入れた時、空は晴れ渡り、木の枝に積もった雪が陽光を受けてキラキラときらめいた。
「キレイ」
ハンナがため息をつく。
その時、二頭立ての馬車が彼らの横を通り過ぎて行った。
「もう雪は降らないよ! 本当の冬が来るまではね!」
御者台にいた黒髪の男が、陽気に声をかけ、馬車は去って行った。
三人は、何があったのだろうと訝しみながら旅を続け、その日の夜遅くトーレグの町に着いた。
旅人が魔物を倒したとかで、町はにぎやかだった。
気さくな町長が、彼らを館に泊めてくれた。
そこでアレフは、求めていた人と出会う。
魔術師タラバラン。その人こそが、魔物の手掛かりを求めて十年前にアレフの父が会いに行った相手なのだ。
老魔術師はもう他界していたが、彼の娘マージョリーが町長の館に滞在していた。
「その人のことは覚えているわ」
マージョリーは暗い表情で言った。
「でも、父はその人と話している間、私を部屋に入れてくれなかった。二人は何時間も何時間も話し合っていたわ。そして次の朝、その人は旅立った。私が知っているのはそれだけよ」
そして、タラバランの研究室にはその手がかりが残されているかもしれない、と言った。
「けれど、あの研究室には父の呪文がかかっているの。私でさえ、立ち入ることは出来ないわ」
それでも父の手掛かりを求める一心で、アレフは北の洞窟に向かい、閉ざされた研究室を守る魔物と対決することになるのだが。
それはまた、別の話。