第5話:ロハスの商売 -7-
「意外だったな」
宿に着いてから、オウルはロハスに言った。
「何が?」
「アンタが。てっきり、もっと暴利をむさぼるつもりかと思ったが」
「分かってないなあ。商売はね、信用が大事なのよ。そのためには、落としどころをわきまえていないとね」
偉そうに講釈をしてくる。
「あれ以上吹っ掛けたら、警戒されるでしょうよ。それより、恩を売りつけて末永くヒカリゴケの手間賃を払ってもらった方が得でしょ。考えてもみてよ。一個売れるだけで、百ニクルのお金がオレの懐に入るんだよ? 何にもしないでだよ? 半年後にはそれが、一個当たり三百ニクルに! ああもう、考えただけでウットリするなあ!」
そういう顔は、心から嬉しそうである。
オウルは、「タダより高いモノはない」という諺を思い出した。
この町の人々は、ロハスに安く食糧を調達してもらった代わりに、未来永劫たかりつづけるダニに憑りつかれた。
そういうことらしい。
「ロハス。君は、このままこの町に居続けるつもりか?」
ティンラッドがたずねた。
ロハスは首を振った。
「いいや。適当なパーティが見つかったら、まぜてもらってこの町を出るよ。言ったでしょ、商売は見極めが肝心なんだよ。いつまでも居座っていたら、恩人のありがたみも失せるからね。なるべく早く消えるのが吉だね」
「そうか」
ティンラッドはあっさりとうなずいた。
「それでは、明日私たちと来たまえ。誰でもいいなら、我々と一緒でもいいだろう」
ロハスの黒い目が、丸くなった。
「船長。本気かよ」
オウルは苦い顔をする。
「言っただろう。私は冗談は嫌いだ」
ティンラッドは大真面目に言う。
「えーと」
ロハスは恐る恐る言った。
「それって。オレに、断る権利はあるのかな?」
「あるわけないだろ」
オウルは断定的に言った。
「そんなもんがあるなら、俺はそもそもこんなところにいねえよ」
「あ、やっぱり?」
ロハスは少し情けない表情になり。
しばらく思案してから、決然とした表情で言った。
「分かった。それもいいかもね。アンタたちといると、面白い商売が出来そうだ」
「ふん。いい覚悟だ」
ティンラッドは笑い。
「おいおい、アンタ。考えてからモノを言えよ。ウチの船長には、冗談は通じないぞ」
オウルは呆れた。
「何だよ。拒否権はないって言ったの、魔術師さんじゃないか」
「そうだけどよ」
オウルは乾いた唇を、唾で湿らす。
「ホントにいいのか?」
「まあね」
ロハスも笑った。
そして、朗らかに宣言した。
「このオレが参加するからには! この旅の収支決算を、必ずや黒字にして見せましょう!」
収支決算はともかく。
「陸に上がった船長」と「攻撃呪文の使えない魔術師」しかいないパーティに、次に参加するのが「ごうつくばりの商人」でいいのか。もっと先に、強化すべき方面があるのではないか。
そう思わずにいられないオウルであった。
-ロハスがなかまにくわわった!(確定)-
ティンラッド
しょくぎょう:せんちょう
LV35
つよさ:275
すばやさ:330
まりょく:88
たいりょく:300
うんのよさ:341
そうび:かたな(しんげつ) かたな(こうげつ)
わざ:ひっさつ まざん・せいめいこうげつ
もちもの:ヒカリゴケのおまもり
オウル
しょくぎょう:まじゅつし
LV21
つよさ:21
すばやさ:33
まりょく:253
たいりょく:25
うんのよさ:53
そうび:げっけいじゅのつえ
まじゅつしのマント
もちもの:まじしん かんそうきょう ヒカリゴケのおまもり
ロハス
しょくぎょう:しょうにん
LV17
つよさ:17
すばやさ:24
まりょく:13
たいりょく:32
うんのよさ:101
そうび:ヒノキのぼう
もちもの:なんでもしゅうのうぶくろ ヒカリゴケのおまもり
しょじきん
13ゴル7シル800ニクル
-パーティのへいきんせんとうりょくがさがった!!-
彼らの未来に幸あれ。