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第5話:ロハスの商売 -3-

 洞窟を出ると、雪嵐はやんでいた。

 空全体を覆っていた厚い灰色の雲にも切れ目が入り、ところどころ青空がのぞいていた。

 しかし、日はもうかなり西へ傾いていたので、その日はタラバランの小屋へ戻り、寒さにかじかんだ体を温め、食料を分け合いながらゆっくりと休んだ。


 翌朝、青空の下、雪道を歩いてトーレグの町に戻る。

 町の人間は、彼らの帰還をほとんど絶望視していたらしく、驚きをもって迎えられた。

「いやまあ、このくらい容易いですよ」

 ロハスの舌は絶好調である。

「ここだけの話、あの雪がやんだのも、オレたちが魔物を倒したからかもしれなかったり」


 お前、何もしてないじゃないか。そう、オウルはツッコみたかったが。

 口先が回るということにかけては、ロハスは結構なものである。

 気が向かないと口さえきかないティンラッドはもちろん、オウルも、ロハスのように人をひきつける話し方は出来ない。


 そして、こちらは命を懸けてきたのだ。その成果を、なるべく高く売り込むのは当然のこととも言える。

 たとえ、ティンラッドが倒した魔物と、雪がやんだことの因果関係がハッキリしなくても。

 この晴天がいつまで続くのか、まったく保証できなかったとしても。

 魔物を倒したことは確かなのだから、その点はたっぷり評価してもらうべきである。

 そのことを売り込むには、ロハスより適した人材はいない。


 ということで、オウルはロハスがあることないこと並べ立てるのを傍観していた。

 ティンラッドは、まったく他人事という様子で酒を飲んでいた。


 その日は、町を挙げての豪華な歓迎会。

 オウルもティンラッドも、たっぷりの食事と酒を供され、暖かな寝床でゆっくり寝た。

 翌日は、朝早くからロハスにたたき起こされ、ソエルの城下町へ逆戻りすることに。

「何で俺たちを巻き込むんだ。もうアンタと組むのは終わったはずだろう」

 オウルが文句を言うと、

「まあまあ。日当は払うから、手伝ってよ。人手がいるんだよね。あ、船長さんは用心棒ね」

 まったく悪びれない顔で晴れやかに言う。


 来る時は徒歩で何日もかかった旅だったが、ロハスが村長に用意させた二頭立ての馬車は雪の上を軽快に走った。

 途中で、厚い毛皮のコートに身を固めた三人の旅人とすれ違う。

「おーい。もう雪は降らないよ、本当に冬が来るまではね!」

 ロハスが明るく声をかけた。

「そんなこと、言い切れるのかよ」

 オウルがむすっとした声でツッコむ。

「暗いなあ、魔術師さん! 世の中明るい方に考えないと。知ってる? 悪いことばっかり考えてると、ホントに悪いことが起こるんだよ?」

「って、自分に都合のいい可能性ばっかり考えてるんじゃ、ただのバカじゃねえかよ」

 オウルは舌打ちする。

 どちらにしても、すれちがった旅人達はもうはるか後方だ。

 彼らが、ロハスの調子のいい軽口を信じたとしても、オウルの関知するところではない。

 情報は自己責任で取捨選択してくれ、と思うオウルであった。


 城下町に着くと、ロハスは目抜き通りに出店を開いた。

 オウルも二年間、ここで商売をしていたから分かるのだが、こういうところに店を出すのはそう簡単にはいかない。

 地元で店を構えている商店主たちの許可を取らなければいけないし、それでもかなりの出店料を取られる。

 しかし、ロハスは愛想よくあちこちに顔を出して簡単に許可を取り、出店料も値切ることに成功した。

 裏通りで占いの店を出すのがやっとだったオウルは、その手並みに舌を巻いた。


 その出店に、ロハスは商品を並べた後、大きな看板をかけた。

 そこに書かれた文句を見て、オウルはまた驚いた。


「驚異のヒカリゴケ効果!! 誰でもステイタスが上昇!!

 限定五十個販売、今日だけたったの五シル!!」

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