山間のアレフ
西を目指すアレフ一行。
砦を出てしばらくは人っ子一人いない山道でひたすら魔物を倒す日々が続く。
ある時は崖の上から襲いかかる怪鳥と戦い、またある時は道を塞ぐ岩型の魔物に悩まされる。
「もう私、耐えられない……一度ソエルに帰りましょうよ」
勝気なハンナがそう泣き言を言うほどの難路である。
「砂漠を行くよりは楽なはずなんだ。そう思って頑張ろう」
アレフは仲間を励ますが、辛い道のりに皆くじけそうだった。
そんな時、山間にようやく小さな村を見付ける。
喜んで村に入る三人だが、荒れ果てたその場所に人の姿はなかった。
崩れかけた神殿にようやく病に倒れた老神官と、それを看病する若い神官見習いの姿を見付ける。
「この村もかつては街道を通る旅人の憩いの場としてにぎわっていたのですが、今ではこの有様です」
神官見習いは力なくうつむく。
「更に数年前には村の近くに魔物が巣を作ってしまい、村人も一人、また一人とここを去ってしまいました。二年ほど前に西から大神殿の三等神官という方がいらっしゃって、魔物を退治してくださると言って山に向かわれましたが、その方も戻ってくることはありませんでした」
今では老神官のための薬草を探しに山へ入ることも危険で出来ないのだという。
「神官様はみなしごの僕を育ててくださった恩人なのに、病で苦しんでいらっしゃる姿をただ見ていることしか出来ない。僕は……無力です……」
貧しい暮らしの中、一行のために食事を提供してくれた神官たち。
彼らのために魔物を倒そう。アレフたちはそう決意し、山奥に巣くう爪長グマに挑むことになるのだが。
それはまた、別の話。