ちなみにアレフは
アレフ・ロナルド・ハンナの三人は、陸路から西を目指していた。
シグレル村には数日滞在した。この村に魔物が出ないことや魔物避けの儀式をしてくれる神官の話を聞いた時は半信半疑だったが、実際村の周りでは全く魔物に遭うことがなかった。
「この世界に何が起きているんだろう。俺たちの知らないところで、何か変化が起きているのかもしれない」
アレフのつぶやきに、仲間たちも同意した。
魔物を倒しながら西の砦に向かった。朽ちかけたその砦の周りには鬼ガラスの小さな群れや魔犬が数匹巣食っていたが、三人で何とか倒すことが出来た。
砦で一夜を明かした。中は荒れ果てていたが、塔の一番上の部屋だけには人が住んでいた痕跡があり、比較的綺麗だった。
「ここに、バルガスって魔術師がいたのかしら」
ハンナが首をかしげる。
「旅人たちが追い出した、という話だけれど。戻ってきたりしないわよね」
念のため、交代で不寝番に立つことになった。
石の床に寝袋を敷き、丸くなって眠りにつこうとしながらアレフは考えた。
この砦から闇の魔術師を追い出したという旅人たち。いったいどのような人だったのだろう。
何年もこの場所を占拠していた魔術師を追い出したのだから、相当の手練れに違いない。
いつか出会うことがあるのだろうか。そう思いながら、彼はゆっくりと眠りに落ちていく。
魔術師の都は、まだ遠い。