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第20話:砂漠の旅 -3-


 掘り下げたのは、吹き荒れる冷たい風を少しでも防ぐためだ。

 天幕は風に吹かれて揺れているが、土の床部分には焚火の暖気がこもって多少は夜を過ごしやすくさせてくれていた。

「あー、服の中じゃりじゃり。風呂入りたい」

 ロハスが体をバサバサと叩く。砂埃が舞う。

「やめろ、砂がかかる」

 あちこちから文句が出る。


「水は貴重なんだろ。オアシスに着くまで我慢しろよ」

「分かってるよ」

 ロハスは憂鬱そうに言った。飲み水も、瓶をみんなで回し飲みである。

「最初の町までどのくらいかかる?」

 バルガスが訊ねた。


「うーん。それが、よく覚えてない」

 ロハスは言った。

「旅が過酷だったから、後半の方の記憶が飛んでるのかなあ。西から来て、湖や大きな川沿いの街を三つ、それ以外に小さな集落を五つ通ってきたことは覚えてるんだけどね。最後、ソエルに近付いたところで大きな街に寄ったような気がするけど、はっきり思い出せないんだよなあ。気が付いたらパーティの人数が半分に減ってたし」


「何だソレ。砂漠の怪談か」

 オウルは眉をひそめる。

「いやだから。本当、思い出せないんだって」

 ロハスは髪をかき上げた。そこからも大量の砂が落ちる。

「疲れてたんだと思うけど。それもあって、この道はあまり通りたくなかったんだよね。またあんな目に遭うのかと思うとさあ」


「魔物はどうした。魔物が出ないぞ」

 ティンラッドが不満そうに言う。

「出るでしょ。そのうち、イヤになるほど出るよ」

 ロハスはため息をつく。

「今はヒカリゴケの護符のせいで細かいのが寄って来ないだけだろ、多分」

 オウルも言った。

「それは、要するに出る時は強い魔物ということだな」

 バルガスがせせら笑った。


「そうか。早く出ないかな」

 ティンラッドは楽しみにしている様子であるが、そんなものには出会いたくないとしみじみ思うオウルだった。


「むむう。後学のためにお聞きしたいが、どんな魔物が出るのですかな」

 アベルが聞いた。殊勝そうだが、おそらく内心では魔物が出た時どうやって逃げるかを考えているのだろう。

 だが、確かに前情報は価値がある。オウルも耳をそばだてた。

「そうだなあ。まず蛇系、トカゲ系が多い。毒もある」

 ロハスは土の上にあぐらをかき、指を折って数えはじめた。

「あと、砂漠ラクダや砂漠ロバの群れが襲ってきたりとか。数が多いから面倒くさかった。あと、砂漠ネズミとか。いつの間にか近付いて来てかじられたりするんだよ」


「何だか、あまり面白そうじゃないなあ」

 ティンラッドが不満そうに言う。細かくて数が多いものより、大きくて強いものを求めているのだろう。

「船長。ラクダやロバをなめちゃいけない。ヤツら凶暴だよ!」

 言い張るロハス。余程ラクダに嫌な思い出があるらしい、とオウルは思った。

「オアシスに近くなると、でっかい金目ヤマネコとかが出るよ。強いよ」

 そうか、とティンラッドはうなずいた。


「意外に魔物の種類は少ないんだな」

 オウルは呟く。砂漠越えの道は難儀だと聞いていたので、もっと様々な強い魔物が出ると思っていた。

「魔物にとっても厳しい環境だということだな」

 バルガスが肩をすくめた。


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