第2話:北への道 -6-
旅は体力勝負になった。
オウルが雪オオカミの毛皮を魔法でなめし、身にまとえるようにしたので、装備はいくらか改善した。
ロバの体にも、三枚の雪オオカミの毛皮がくくりつけてある。
それ以外にも、何十分か置きに手足に寒さ除けの呪文をかけないと、体が動かなくなってくる。
ティンラッドとオウルは、荷車に積んだ酒を飲み、呪文以外の方法でも体を温めるように努めた。
それ以外にも、もちろん魔物は襲ってくるし、道もすべて雪に埋もれているから、絶え間なく方角を確認しなければ行く先も見失う。
ティンラッドが道を切り開き、オウルは呪文をかけ続ける。
二人の体力と、オウルの魔力が村に着くまで持つか。
これはそういう戦いだった。
「まだ、何も見えないか、船長」
そう聞くオウルの声には、疲れと焦りがにじむ。
「無理だな。この雪では、十歩先も見えない」
「それは分かってるけどよ」
オウルは手元の地図を見る。これで何十回、いや何百回目か。
「そろそろ着くはずなんだ。夜通し歩いた。だから、そろそろ」
「いよいよとなったら、また雪穴を掘ってそこで春まで待つのもいいな」
ティンラッドはのん気に言った。
「飲み水なら山ほどあるし、雪ウサギを捕まえれば食べ物にも困らない。死ぬことはないだろう」
「俺たちはな」
オウルは暗い声で言った。
「その老いぼれロバはくたばるぜ。草なんかないからな」
「そうか、そうだな。餓死させるのは可哀相だなあ」
ティンラッドの言葉には何だか危機感が不足していて、オウルはイライラする。
「第一、ここに春なんか来るのかね」
彼は、いっそう暗い声でつぶやいた。
この積雪は、一日や二日雪が降ったくらいのものではないだろう。
まるで、何か月も雪が降り続いているかのように、何もかも雪に埋もれてしまっている。
(だとしたら、夏の間から雪が降り続いてるってことになる)
その暗い考えを、オウルは口に出す前に振り払った。
今は、とにかく町にたどり着くことだ。
他の心配は、それからでいい。
「悪かった。行こう」
オウルが言うまでもなく、ティンラッドはずかずか雪をかき分けて進み始めていた。
ロバがとぼとぼとその後に続く。
凍りつきそうなその車輪に、追加で雪道用のまじないをかけながら、オウルが一番後から歩いて行った。
そして、更に一時間ほど歩いた頃。
不意に、
「あいたっ」
とティンラッドが声を上げた。
「痛い。何かにぶつかった。ここに何かあるぞ、オウル」
駆け寄って、二人でティンラッドがぶつかった物を確認する。
左右に長く続く、枯れた木の列。
「魔物除けの生垣だ。町に着いたようだぜ、船長」
ホッとして、思わず笑みがこぼれる。
「入口を探そう。そう大きな町でもないだろう、すぐに見つかる」
そうして二人と一頭は、ようやく見つけた町の外壁沿いに歩き出した。
足は棒のようで、体は芯まで冷え切っていた。
ティンラッド
しょくぎょう:せんちょう
LV35
つよさ:250
すばやさ:300
まりょく:80
たいりょく:282
うんのよさ:310
そうび:かたな(しんげつ) かたな(こうげつ)
あきのコート ゆきオオカミのけがわ
わざ:ひっさつ
オウル
しょくぎょう:まじゅつし
LV20
つよさ:19
すばやさ:27
まりょく:221
たいりょく:23
うんのよさ:48
そうび:げっけいじゅのつえ
まじゅつしのマント ゆきオオカミのけがわ
じゅもん:アニリョ アラバル ソリード ファーデ
フォーヴェ(寒気をよけ、体を温める)
ザガル(皮をなめす)
スノタイ(車輪を雪道で走行しやすくする)
レスバロン(摩擦係数を減らす)
レンコルテ(雨、雪などをはじいて流れ落ちやすくする)
もちもの
まじしん
かんそうきょう
トーレグのまちまでのちず
やくそう×10
どくけし×10
みず×10
さけ×6
しょくりょう×6
ゆきウサギの肉×15
ゆきオオカミのけがわ×6
テント
おいぼれのロバ
こわれかけたにぐるま
しょじきん
1500ニクル