第17話:ソエルの影 -2-
五人はルデウス四世の指示でそれぞれ立派な部屋に通された。
ティンラッドはさっさと眠ってしまい、ロハスとアベルは王侯気分を楽しんでいる。
オウルとバルガスは、請われてグロウルとセルゲの訊問に立ち会うことになった。(ティンラッドも請われていたのだが『つまらない』と言って断った)
国王の叔父と異国の魔術師は互いに責任を押し付け合っていたが、切れ切れに白状したことをつなぎ合わせるとこういうことであるようだ。
セルゲは一年半ほど前からソエルに現れ、グロウルに近付いた。グロウルは彼の術の確かさと魔術師の都から来たという触れ込みに、何かに使えるだろうと思ったらしい。
彼の力によって政敵たちを王の周辺から遠ざけたことについては、グロウルはセルゲにそそのかされたのだと主張し、セルゲはグロウルの命令でなければ自分がそんなことをする理由はないと冷笑した。
「とにかく、叔父上がご自分の勝手な都合で他人を陥れたことには間違いがないようですな」
ルデウス四世は苦い顔で言った。
「貴方には謹慎と、公職の罷免を命じざるを得ない。館に戻り静かに日々をお暮しください。そして、この者どもとは接触を絶っていただく。それを見張るため、当分の間あなたの領地には城の兵を置きます。ご承知ください」
グロウルはガックリと肩を落とす。
「ハルベル」
ルデウス四世は警備隊長に命じる。
「グロウル卿に警護の兵を付け、領地まで送り届けよ。信頼できるものを選び、館の外側を固め外部との連絡が取れないようにするのだ。警護の兵は定期的に入れ替えろ」
「分かりました」
ハルベルはうなずき、手配をするために部屋を出て行った。
ルデウス四世はセルゲに向き直る。
「さあ、お前の番だ。お前は一体、何のために叔父上に近付いた」
「何のためにとは。私はただ世話になっているグロウル卿の手足として、命ぜられるままに働いたまでのこと」
セルゲはせせらわらった。
「全てはグロウル卿のご意志。私に特別の意図はございません」
「では、なぜ大神殿の特使殿を襲おうとしたのだ」
魔術師セガールが声を厳しくする。
「グロウル卿には特使殿を襲う理由がない。そもそも特使殿が城に入られたことさえ、ハルベル卿の他には知らなかったのだ。お前はなぜそれを知っており、その使命を邪魔しようとした」
セルゲは横を向く。
「存じませぬな。そのようなこと、グロウル卿にお聞きなさい」
「何を言う。貴公があの者どもを何としても城下から追い出さなければならぬと言ったのではないか。だから私は配下の兵を動員して」
グロウルがまくしたてる。見苦しいことこの上ない姿だ。
「魔物を封じる力を持った神官を城下から追い出そうとしたのなら、その理由はひとつでしょうな」
バルガスが口を開き、ボソリとそう言う。
セルゲとグロウルを含め、全員の目がバルガスとオウルに向いた。だがバルガスはそれきり、涼しい顔で口を閉ざしている。
この野郎、とオウルは思った。面倒くさいことはいつもこちらに丸投げだ。