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第14話:封印と魔法陣 -6-

 なんとか岸にたどり着いたが、その時には広間中の天井から小石が降ってくるようになっていた。

 ロハスは完全に震え上がっていたが、それでも小舟を回収するのは忘れない。

「重いし水浸しだし! オウル、これすぐに呪文で乾かしてよ!」

「お前な。急いでるのかそうじゃないのか、どっちなんだ」

「いいから急いで!」


 とりあえず物を乾燥させる呪文を唱えて形だけでも水気をはらった。

 ロハスが苦労しながら小舟を『何でも収納袋』に入れている時、広間の奥の方でずずんと重い音がした。

「良くない流れだな」

 ティンラッドが呟く。

「君たち急げ。どうやら時間がない」


「オウル、手伝ってえ」

「ああもう、さっさとしろよ」

 二人がかりで小舟を袋に押し込む。

 その時、

「二人とも水から離れろ!」

 ティンラッドの怒鳴り声がした。


 振り向いた瞬間、打ち寄せた大波が肩まで濡らし足元をすくう。引いて行く水の力が強く、立っていられずにオウルは四つん這いになる。体中水浸しになった。地面に着いた手や膝の横を、波に流された小石が転がっていく。

「オウル。先にここを出ていろ」

 ティンラッドの声がした。目の前を革の長靴が駆け抜けていく。


 横にいたロハスがいなくなっていると、その時気が付いた。

 大きな水音。びしょぬれの顔を袖で拭うと、黒い水の間に波をかき分けていくティンラッドの長身が見えた。

 目の前にまた拳ほどの石が落ちてきた。奥の方で再び崩落の音がする。

 追いかけても足手まといになると理解した。

 腰が抜けて立てない。四つん這いのまま出口に向けて進んだ。


 波の音と岩が落ちる音が続く。ティンラッドとロハスはどうなったのだろうと思う。

 なかなか前に進まない。

 引きずっているローブの裾が岩角に引っかかった。あわててはずそうとしていると、その横に石の塊が落ちてきた。こんなところで手間取っている場合ではないと思うが、焦ると余計に指がうまく動かない。


「何をしている、オウル!」

 後ろから怒鳴りつけられた。

 ティンラッドが体中から水を垂らしながら、仁王立ちで後ろにいた。魂が抜けた様子のロハスを引きずっている。

「グズグズするな! 立ちなさい、行くぞ!」

 

 人間というのは、号令に従うように出来ている。

 つくづくそう思った。それだけで萎えていた足に力が入り、ローブの裾が破けるのも構わず立ち上がる。

 ロハスを引きずりながら足早に進むティンラッドの後を、オウルはよろよろとついて行った。


 何とか広間を出た後、中でひときわ大きい落盤の音がした。



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