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親愛と定めに抗いて

 燃え盛る火を遠くに見やりながら、憂いに沈んだ表情を隠せずに立っていた。

 ほんの些細な願いである。ただ皆が、幸せな笑顔を浮かべて暮らせたらいいと思っていた。

 遠き旅路の果てに辿り着いたこの地で……ゆっくりと、しかし着実に進めてきた理想の欠片。

 脆く儚く、その理想はまたしても叩き折られてしまった。

 いや、叩き折られたのでは無いのかもしれない。誰かのせいにすべきではないのかもしれない。


 嗚呼……と少女は悲しみを零した。

 どうしてこんなことに、とは言えない、言えるはずもない。ある男に言われた一言が胸に刺さって抜けることが無くて、


――私が……


 ジクジクと侵食して来る自責の重圧が胸を押し潰し、ぎゅうと掌で握り締めても収まることを知らず、


――私が来なければ……


 歩んできた道を振り返れば振り返る程に見えてくる屍の数々と、未来に目を向ければ見えてしまう人々の涙の雨は、


――私が来なかったら……こんなことにはならなかった……


 決意や覚悟を揺らがせられれば心の芯まで弾劾が響き渡る。


 一人きりで城壁の上。少女は桃色の髪を揺らして遠くを見やる。

 それだけしか今は出来なかった。また……いつものように、自分は此処で待っていることしか出来なかった。

 動きたい時に動くことが出来ればと何度思っただろうか。動けなくなったのはいつからだろうか。


 何か、何か一つでも出来ることは無いかと問いかけても……命を狙われているからと、やはり彼女は守られるだけしか出来なかった。


 空には燃えるような赤が広がっていた。大地にも、燃えるような紅が広がっていた。


 じ、と見つめたまま目を離さなかった。哀しみに暮れる心とは別に、締め付けられる胸とは別に、頭だけはやけに冷め切っていた。

 現実と言う名の冷たい世界を突き付けられたのは数え切れない……それでも今回は、前までとは違ったからこそ……


「……これが……いつか起こるはずの……“私が作る未来の姿”」


 引き裂いた口元から告げられた言葉が残っている。

 辿った道筋と、積み上げてきた事柄と、見つめ続けてきた現実が彼女に全てを理解させた。


 きっと大丈夫、そう口にしてきた彼女を無慈悲に突き落とす確立事象の一つを……彼女が一番に予測しておくべきであったのだと。

 平穏の最果てに現れるこの事象を、彼だけは知っていたのだと。


 哀しみの底で少女は涙を流せずに居た。


 耳の奥では、からからと渇いた笑いを上げる一人の男の声が聴こえた気がした。






 †






 思考の外に置いていた策を出されて、徐庶――真名を藍々――は苛立ちに支配されていた。

 何処か安穏と構えていたのだ。油断していた……否、侮っていたと言った方がいい。彼女は劉璋を侮っていた。

 目の前に広がる報告の書簡の数々には頭を抱えるしかない。益州北部に移動した間もなく始まったこの状況は、文官達の信頼も何もゼロに等しい桃香達にとっては最悪の事態だった。


「……どうするんスか朱里。指咥えて見てるわけにはいかねースよ?」

「そうだね」


 目の前で黙々と書簡に字を書き連ねている少女――朱里に向かって声を投げてみるも、返って来るのは生返事だけ。まるで興味が無いとでも言いたげなその態度に、藍々の眉間の皺が深くなる。


「蓄えていた糧食を民に配るのも限界があるッス。今年の収穫も畑を燃やされたせいで見込めない、高まり始めていた信頼も早急な結果で示さないと地に落ちる……劉璋は悪と民が認識したのは良かったですけど、このままじゃあ先の戦なんか勝てやしないッスよ」

「そうだね」


 ぴたり、と筆が止まる。

 灼眼がゆっくりと藍々の眼を捉え、口元は僅かに微笑んでいた。

 粟立つ肌はその不気味さに。軍の窮地であっても変わらないその妖艶さが、もう居ない悪龍のようで恐怖を覚えた。


「慌てても仕方ないよ藍々ちゃん。撒かれた種はいつか芽吹くモノ……この国に来てから私達が行ってきた政策は決して無駄じゃない。

 一つ一つと繋げてきた絆は既に民に浸透し、各村々でも希望を持たせてあるから。そういう点で言えば……今回の騒動は私達にとっての追い風にもなる」


 おぼろげな回答を得て瞬時に思考を回す。


「追い風……? 今回の食糧危機がッスか?」

「うん。食糧が少なくなるからこそ……私達は大きな力を得られるんだよ」


 口の中で反芻してみるも答えは出ない。朱里に見えるモノが藍々には見えないのだ。

 未だに戦乱の世に浸り切っていない彼女にとって、戦事は今回が初めて。机上で唱えてきた論理は幾つもあれど、彼女の頭の中だけで世界が完結しているはずもない。

 一呼吸の間を置いて朱里が微笑みを深くした。


「苦しくて、つらくて、悲しくて、恐くて……それでも生きたいって願ってしまうのが人。黄巾の乱だけじゃない、もっとそれ以前から人は争いが起こる度に哀しみを背負ってきた」


 机を並べて勉強してきた歴史を紐解けば分かる程度の事実は、乱世の最中に居ることでより現実感を持って押し寄せる。

 朱里の言わんとしていることはまだ分からない。そのまま彼女の灼眼の冷たさに引き込まれてしまいそうだった。


「偉くなればなる程に皆が見落として行く。一つ一つっていう数でしか数えられなくなる。其処に何があるか、誰が居るかも知ろうともしないで」


 自嘲気味に語るのは軍師の冷たき論理か、はたまた為政者の厳しき理論か。きっとどちらもであろう。

 己が行いによって人が死に行くとしても、軍師や政治屋は人を単位として数えなければいけない。大局を見る為には小さく尊い命一つに拘ってはならない。


 一を捨てて十を拾い。十を捨てて百を拾う。それが朱里達のようなモノが身をおく世界である。


 しかして……彼女が今話していることに藍々は疑問を持った。

 政治屋として、軍師として当然の論理を語っていることは分かるが……だからこそ自分達が得をするというのが分からないのだ。

 大局を見る為に切り捨てた敵側の計略は悪辣なれど有用なはず。自分達の頸を絞めるモノであっても、益州内乱の勝利に比べれば些末事だろうと藍々も思う。


 そんな思い悩む藍々を見つめながら、朱里はトクリと脈打つ胸に手を当てて目を瞑った。


――この策はあの人からの伝言だ。私達が“桃香様と共に戦う劉備軍”として確固たる姿を世に示せって……そう言ってる。


 この策は彼女の内の黒いケモノも出していた答え。自分達が一つ間違えば叩き潰されてしまう大きな一手。乱世の行く末さえ左右してしまう大切な戦。

 恋焦がれ、溺れ、求めた。故に彼女は、読み切った。

 自分達だからこそ出来る事がある。朱里はそう考える。他の軍ならば、他の勢力ならば出来やしないこと。

 過去の偉人には居たかもしれない。しかし今の乱世では……桃香達にしか為しえない。


 否……と、朱里の胸が疼いた。


――ううん……出来る人は私達の他に一人。だからこそ、私達を導くことが出来たんだから。


 黒、黒、黒が心を染め上げた。

 自分達がこれから取る行動はきっと掌の上だと知っている。それでもいいと、彼女は思った。最後の最後で勝利する為に、と。


「……桃香様が居るから、出来ることがある」


――彼が居たなら、きっともっとうまく出来た。


 心の中だけで呟いて、彼女は静かに微笑んだ。

 ぞっとする程に妖艶な表情は、幼い見た目に反して際立ち過ぎていた。藍々が小さく震える。


「哀しみを糧として絶望を希望に。人々は龍の背に導かれて階を上る。

 益州は……これからの益州人が守らないと……ね? 私達も、人々も、南蛮の子達も……皆で手を繋いで守ればいい」


 白い羽扇がひらりと舞った。

 ゆっくりと立ち上がった朱里は彼女の策を読みとった藍々に背を向けて扉に脚を向ける。


「藍々ちゃん、後はお願い。私は……しなくちゃダメな事があるから」


 キィ、と寂しげな音を上げる扉。小さな背から放たれる空気に、藍々は口を挟めず。

 甘い甘い声で、彼女は愛しさを込めて小さく言葉を紡いだ。


「絶対に逃がしませんよ……秋斗さん」






 †






 益州の北東、漢中から少し離れた場所に一つの集団が居た。

 なるたけ“其処”は避けたいと願っていた彼ではあるが、まさか漢中の城で合流するわけにはいかず、出来る限り高い場所で皆を待っていた。

 細心の注意を払い、数日前から“其処”に至る道々に敵の影が無いことは確認済みである。


 その場所は……定軍山。


「ふぁあ……ねみぃ」


 あくびを一つ。呑気なモノではあるが、こうも陽が暖かく風がそよぐなら眠くなっても仕方あるまい。

 待ち人はまだ来ない。既に部隊の過半数は合流済みであるが、合流できなければ動くことは出来ないのだ。

 劉備軍の出立から先回りして重要地点を抑えられたのは万全を期してこそ。例えば合流予定のモノ達が何等かのカタチで戦闘になったとしても上を取っている秋斗達は容易く挟撃に動くことが出来る。


「緊張感無いわね」

「一応警戒はしてるさ。ただいつでも気を張ってたって仕方ないってもんだ」

「そりゃ、そうだけど……」

「ニシシ、まぁいいんじゃねぇの? こうやってゆったりのんびり待つってのもいいじゃんか!」

「あ、猪々子。それだ、ロン」

「うぇ!? 待って! 無し! ちょっと待って!」


 慌てる猪々子を尻目に彼は捨てられた札を拾って手札を広げていく。

 あちゃー、と額に手を当てた隊員の二人が苦笑いを浮かべていた。


「ほい、跳満な。親だから一万八千」

「文ちゃん弱ぇ……」

「何回目のトビだよ……」

「うっせぇぞ! あーもう! アニキなんでそんなに強いんだよぉ」

「年期がちげぇよ年期が。こちとら麻雀を教えた側が負けてちゃ話しにならんのでな」


 兵士達の時間つぶしの為に教えたお遊びではあるが、賭け事が大好きな猪々子が知れば混ざらぬはずもなく。

 待ち人たちが来るまでと始めれば皆が囲んでわいわいと騒ぎ……そんな様子に詠は一人むすっとしてそっぽを向いた。

 頭を抱えて蹲る猪々子に苦笑を零しながらも、彼は詠の不機嫌をなだめようと声を上げた。


「予定では明日到着のはずだがきっと早めに着くだろ。その前の最後の息抜きさ、許せえーりん」

「……あんたのそういうとこきらい」

「クク、そうかね」


 つんとした声に肩を一つ竦めた。どうやら相当拗ねてしまったようだ。

 気を抜き過ぎている息抜きに対してだけではないだろうと分かってはいるが、彼も愚かな予測だけで彼女の心を推察しようとはしない。

 ゆったりと、普段通り彼女に声をかけるだけ。


「じゃあちょっくら散歩でもしにいくか」

「……こんな山の中で散歩って何処いくのよ?」

「そりゃ山だし。昇るだろ」

「はぁ? また長旅になるっているのに?」

「俺はバカなんでね、高い所が好きなんだ。ちょっと付き合ってくれたら嬉しいんだが……」


 逡巡は一瞬。秋斗が突然こういった提案をすることなど詠にとって分かり切ったことである。


――ほんとズルいわよ、あんた。ボクが断らないの分かってるくせに。


 諦めるしかない。惚れたモノ負けである。此処で断る選択肢は詠には無い。

 この旅で二人きりの時間は何度もあった。だがこれできっと……最後。次に二人きりになれるのは何時のなるのかと考えれば、詠の心が僅かに軋む。


「……分かったわよ、バカ」

「ありがと」

「ふんだ」


 心の中を覗かれないようにそっぽを向く。寂しいと感じている心は絶対に見られたくなくて、彼女は見えないように唇を尖らせた。

 よっこいせと立ち上がった秋斗はそんな彼女の隣に並び、ゆったりとした歩調で歩きはじめる。


――隣に並べるのは、今だけ。


 それに気付いてしまってはいけないとは分かっていた。しかしもう、彼女の心は止まらない。

 詠はさらに締め付けられた胸を誤魔化すように首を振って後を追った。







 絶景とは言えないが、少しだけ開けた場所で二人は遠くを見やっていた。

 夕暮れならば良かったのにと詠は思う。

 あの美しい藍橙の空ならば、きっと意地っ張りな自分も素直になれたのだろうと思って。


 隣に目をやれば、木漏れ陽が揺れる涼やかな其処で、彼はただ心地よさそうに微笑んで寝ころんでいた。

 なんとなく気まずい。詠はそう思う。こういった時はさっさと本題を話してしまうのが吉なのだが……せっかくの二人きりを早く終わらせたくない気持ちが大きくて言い出せなかった。


――なんでボクがこんなに悩まなくちゃいけないのよ


 バカらしい、といつもなら割り切れる。イライラが募る心は彼に対してではなく、自分に対してだと分かってもいる。

 哀しきかな……それでも踏み出せない恋心を、もう彼女は自覚してしまっているのだ。


 不意に、ゆるりと彼が手を伸ばした。木漏れ日の中から日輪を掴もうというように。


「いつもありがとな、えーりん」

「……何よいきなり」


 突然の感謝の言葉を受けて訝しげに眉を寄せた彼女は、ようやっと彼の瞳を覗きこむ。

 透き通った黒は宝石のようで、また一つ、胸の鼓動が高く鳴った。


「言いたい時に言っておかないとダメかなって思ったんだよ」

「あんたってばいっつもわけわかんないわね」

「クク、思いつきで行動してばっかだかんな」

「振り回されるボク達の身にもなってよ」

「すまんな」


 言いながらも彼は楽しげに喉を鳴らすだけ。

 この距離感はいつも変わらない。冗談を言う彼と咎めて拗ねる自分。洛陽から此処まで、彼が記憶を失っても変わっていない。

 だからだろうか。きっとこの二人きりだけの時間を求めていたというのもある。

 ほんの少し、ほんの少しだけだが……詠には珍しいことに欲が出た。


 ストン、と横に腰を下ろした。不思議そうに見つめる彼はおかまいなしに。

 合わされる視線は甘いモノでは無く、チクリと痛んだ胸に気付かない振りをしてじっと見つめ続けた。


「どうした……?」


 答えない。質問をするのはこちらだと、彼女は大きく深呼吸を一つ。

 寝ころんだままの彼の身体に――普段の詠なら絶対にしないが――跨いで乗っかった。

 彼は何も言わなかった。冗談の一つでも飛ばすところであるのに。


「……ねぇ」


 ゆっくりと頬に両手を添えて、彼の黒瞳に沈み込む。

 あの時の絶望はもう無い。今の彼は黒麒麟では無い。安堵する自分と落胆する自分、二つが交錯して哀しくなった。


 聞かなければならないことがある。聞いておきたい事があった。

 このバカでどうしようもない……いつか消えてしまいそうな男に。


「秋斗は……死ぬのが怖くないの?」


 それは誰も聞かなかった質問。

 命を投げ捨てて使い捨てる戦い方をする彼に対して、徐晃隊でさえ聞くことは無かった。


 詠はそれを当然と思って欲しくなかった。

 死が隣にあるモノと、いつでも死を享受して生きて欲しくは無かった。


 幸せに生きる為には、生きたいと思わなければならない。

 心の底から生きたいと思って、自分から死を遠ざけるべきなのだ。


――あんたは……人として壊れてる。


 彼は死ぬことに対して人とは違う感覚を持っているのだと、詠は分かっていた。

 壊れている、と誰かが評価した。それはきっと正しいこと。彼はもう、自らの死を隣人のように認識している時点で、とっくに壊れているのだから。


 長い沈黙に木の葉同士がすれ合う音が流れて行く。涼やかな場には似合わない重い沈黙が、詠の心を逸らせる。

 黒い瞳はこちらをじっと見つめるだけ。憂いが僅かに浮かんだその眼が……優しく綻んだ。


「クク、そうさな……お前さんの見立て通りに、俺は死ぬのが怖くないよ」


 なんでもない事のように出てきた答えに、詠の胸がまた締め付けられる。


「守りたいもんがある。生きて欲しい人達が居る。作りたい平穏がある。だから俺は死ぬのが怖くない」


 いつ死んでもいいような心は、洛陽でのあの時と同じだろう。聞いては居たが、この考え方を変える事は出来ないのだと彼女も悟っていた。

 雛里が咎めてもダメなのだ。詠では間違いなく、彼を変えることは出来ない。


「だから……」


 続きの言葉は聞きたくないと思った。耳を塞ごうかとも思ったが……ぽんと頭に置かれた掌の暖かさに誤魔化される。

 しかしその続きは、詠にとって予想の範囲外であった。


「一緒に戦ってくれな、えーりん。俺はさ……えーりんも、ひなりんも、ゆえゆえも、猪々子もバカ共も他の皆も……信じてるから余計に怖くない」


 ぽかんと開いた口を見て苦笑を零しながら、彼は尚も言葉を紡ぐ。


「ごめんな、頼りにしてる」


 謝りながら言われた言葉は、すっと詠の胸に溶け込むモノで。

 浮かべた笑顔が綺麗過ぎたから、彼女は泣きそうになった。


――そんな返し方……卑怯よ


 トン、と彼女は彼の胸に顔を埋めた。


「ズルい……あんたホント……ズルいわよ」

「クク、俺は卑怯者なんでね」

「ばーか、ばか、ばか」


 悪態を尽きながら弱々しく彼の胸を殴るも、全く効いてないことなど分かっている。


「だからさ、いつもありがとな……えーりん」


 そんな彼女に返されるのはいつでも不意の一撃で。詠は悔しいながらも嬉しくて歯噛みするだけ。


 他にもきっと、話したいことはたくさんあった。しかしこれでいいと思えてしまった。


 彼と自分は、まだこのままでいい。

 答えを出さない曖昧な関係が居心地良くて。

 まだぬるま湯の距離感に甘えていることにした。
















 †






 来客は彼の予想に反していた。

 益州での時間はそのモノ達が来れば終わりを告げることは分かっていたが……さすがの彼も頭を抱えることとなった。

 絶対に不可測が起きないように手は打ち尽くしたが、万が一ということもあり得る。


 詠と二人で山を下りて陣に向かい……小さな待ち人が二人と、来てほしくなかった一人が居た。


 静かに目を細めた彼は三人を見据え……いつものように不敵に笑った。


「よぉ、元気そうで何より……んじゃあ、さっさと劉備に引導を渡して……俺達の乱世を始めますかね」


 魔女帽子の少女は優しく微笑み、


 白に藍が混ざった髪をした少女は彼に駆け寄って抱きついて、


 蒼い髪を風に揺らした麗人は片手を彼が上げた手に合わせた。


「そうだな。始めようか。お前と共同戦線を張るのは初めてだが……よろしく頼むぞ、徐晃」


――覆さなきゃならん運命なら変えてやらぁ。史実の夏侯淵が此処で死んだとしても、秋蘭は死なせねぇよ。


 定められた軍が交わるその山で、彼は自分だけが知っている世界に吐き捨てた。

読んで頂きありがとうございます。


ただいま、です。

長い間続きを上げずに申し訳ありません。

仕事や資格勉強などで少しペースは遅いですが完結まで上げていきます。


これからも楽しんで読んで頂けたら幸いです。

ではまた

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― 新着の感想 ―
[一言] 7年前で更新が途絶えている作品ですが、 ここ数年読んだ中で一番心を揺さぶられました。 続きが...読みたいです...(´;ω;`)
[一言] とても続きが気になります
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