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プロローグ

一体何が起きたのか。


 自分の体がうまく動かない。いや、感覚すらない。


 けれども意識だけはやけにはっきりしている。


 どうすればいい。どうしようもない。そういえば何をしていたかも思い出せない。


「はいはーい! こんにちはー! 元気ですかー? なわけないか、死んじゃったんですもんねー」

 耳障りな甲高い声が聞こえたと思ったら視界がはっきりとしてきた。

 目に映ったのは真っ白な世界の中に立っている、小柄な茶髪ショートヘアの女の子だった。

 ホットパンツにニーソ、上はタンクトップ。自己主張の無さすぎる胸から察するにJSくらいか。

 全くこの状況が理解できないがとりあえず言っておこう。

(niceニーソ。ぜひprprしたいな)

――と声を出したつもりだが声が出ない。

「初対面の華麗な少女を舐め回すような視線に変態的な思考回路。おまわりさんこっちです! あ、声を出す必要はありませーん。出せないと思いますけどねぇ」

 舌をだしておどける少女の愛くるしい仕草を見せられて、思考の暴走を止められようか、いや無理だ。

(大丈夫恐れないでいい。恥ずかしがらなくてもいいよ! 怖くないからね! すぐ終わるから! ちょっとだけ! 少しだけでいいから――)

 瞬間ブラックアウトする視界。

(あ ? かん えがま まらな ん が)

「あまりに変態的な思考なので介入させてもらいました。もう!確かに私は絶世の美少女ですし、夢中になってしまうのは分かりますが、大事な話しなくちゃいけないので落ち着いて聞いてください!ちくしょう……何だってこんな変態に適性があるんですか、しかも私の担当とかついてないというか――」

 そのまま自分の世界に没頭していってしまう少女が、俺を元に戻して本題に入ってくれたのは、しばらくたってからだった。




 ひとしきり考えがまとまり落ち着いたのか真剣な表情に変わり、びしっと人差し指を立ててこちらを見て話し始める。どうやらテレパシーのようにこちらの考えは伝わっているらしい。

「では真面目に説明しますね。今回あなたにはとある『適性』があったので、別の世界に跳んでいただき世界を変えてきてもらいます」

 イミフである。いきなり何を言いだすのかこの少女は。

 世界を変えるとかどこのシスコン王の力持ちなのか。いやあれは壊すだったか。

(何の適正だよ。あれか? 光が逆流する的なやつで10mくらいの大きさのロボット乗ってどっかの王子を水没させたらいいのか? それともシスコンの死神が穴に落ちるのを止めるのにブラコン少佐の部下になればいいのか? できれば吸血鬼様の椅子になりた―――)

「どちらも違います! あなたはナニカサレてませんしドSな吸血鬼の下僕さんにもなれません!」

残念だ。適性といえばどっちかの世界に行きたかったんだが。

(世界を変える……ねぇ。具体的に何をしたらいいのか全くもってよくわからんから詳しく頼む)

「いくつか課題がありましてそれを達成すればおのずと世界は変わります。いうなれば決められた流れをかき混ぜる要因になってもらうというわけです」

(ちなみに行く世界は?)

「あなたの場合三国志ですね」

(……あのー……三国志の世界変えるって多分人とか殺さなくちゃいけないじゃん。髭のおっさんとか触覚つきの最強さんとかと戦えってか?)

「課題に含まれていればそうですね。ちなみに確定事項ですので確実にその世界には行ってもらいます」

 無茶振りも甚だしい。三国志は好きだしゲームもちょっとはやってたがそれをリアルでするってことは戦争の真っただ中に飛び込むことだろう。

(いやだ。人殺しなんか絶対いやだ! それにそんな化け物達と戦ったら一般人の俺なんか簡単に死ぬじゃん! 無理無理、絶対無理!)

 きつく拒絶するが少女は事務的な表情を崩さずに続ける。

「確定事項ですので。最終的に世界を変える気がないと判断された場合は、上位意志の介入によってその世界自体も壊されます。その世界の生物全てが最も苦しむ形で……ね」

 にやりと三日月型に口角を上げてとんでもないことを言う。身体がないはずなのに寒気がした。他愛ない会話をしていたがこいつは自分をどうにでもできて、抗うことなどできない存在だと今更思いしらされた。

「ふふ……聞き分けがいいのは人間のいいところです。まあ気負いすぎずに気軽に行ってきてください。ちなみに特典として失った身体の復元、ある程度の身体強化と武器、その扱い方、あと言えませんが一度きりですが限定条件下で発動するある力が与えられます」

 理解などしたくない。できれば逃げ出したい。しかし死んでいる身としては従うしか選択肢は残されていない。

(……わかったよ。やるしかないみたいだし)

「よろしい。では最後にその世界ではあなたの氏は没収します。徐晃・公明と名乗ってください。あと真名は名前のまま秋斗しゅうとです」

……徐晃か。ん?

(ってちょっとまて! つまり俺に徐晃になれってこと!?)

「あくまで『名前は』ですよ。歴史をなぞろうが反逆しようがのたれ死のうがあなたの自由です。まあこれから行っていただく三国志は歴史とも少しだけ違うので好きに動いちゃってください」

(適当すぎだろおい。ってか真名ってなにさ)

「真名っていうのは勝手に呼んだりしたら殺されるようなものすごく大事なものですから気軽に教えちゃだめですよー。時間も押してますしここまで。では外史の世界に……いってらっしゃーい!」

(ちょ、おま、言葉とかどうすんだよ!しかもまだまだ聞きたいことがたくさん――――)

 強かに言い切って手を振る少女。自分の言葉を言い切る前に意識が遠くなる。


 回る。廻る。くるくる落ちていく。


 暗い昏い意識の底へ。




「ミッションスタート。このイレギュラーで変わる。いや……変えてみせます。旧管理者の――」





 †






 暖かい日差しが身体全体に差し込み、一筋の柔らかい風が頬を撫でる。

「あ――大丈――」

 何か声が聞こえるがもう少し寝かせてほしい。

 変な夢見てたんだからちゃんとしたいい夢が見たいんだ。

(あれ? 俺、死んだんじゃなかったっけ? あの時、俺のバイクにトラックが横から――――)

 バッと勢いよく飛び起きた俺は辺りを確認しようとして

「あわわっ!」

 小さな魔女と出会った。

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