呵責
螺旋状に山の外観を進んでいたのだが、急に打って変わって内部のほうに道が続くようになっていった。道といっても獣道で、茂や藪を掻き分けるように進んで行く。苦労しながら進むと開けた場所に出た。休憩するには最適の様子だったのでカルエ達は休憩をとり、ホワックがエントンに詳細を伝えた。受信がし難いので位置情報だけ伝えて送信するに留めた。ホワックはそれを済ませると木の幹に背を預けて腰をおろした。随分、疲れたような顔をしていた。
アンリルの様子がまた妙になってきたことにカルエは気付いた。彼はちらちらと森の向こうをみては、苦々しい顔をしていた。
「アンリル殿?」
ヨマもアンリルの様子に気づいたようだ。
「私は魔術をかけられているようだ」アンリルは苦痛を感じているような声で答えた。
「呪い犬の呪いを受けたのか!」ホワックが立ち上がるも、アンリルは首を振った。
「違う。あいつだ。あの痩せ細った妖魔の類。あいつの幻覚がなおも私を苦しめる」
「アンリル殿、何がみえているのです?」
ヨマは質問したが、なるべくならその質問をしたくないという口調だった。
「私の妻だよ。十年前に火事で焼かれて死んだ妻が炎の中で私に叫ぶのだ。何故私だけが生きているのだ、と」
重苦しい空気が漂い始めた。ヨマも聞いたことを後悔したような顔をしていた。カルエは辛くともアンリルに訪ねたヨマに代わってアンリルを少しでも慰めることができたらなと考えた。しかしカルエにはどう気遣ってやればいいのかがわからなく、誰かに救いを求めた。ミトソをみたが、心苦しくは思っているようではあるが関わりにはなるたくないといった顔をしている。舞雪を見る。舞雪は、特に興味がないというように自分の手の爪を手入れをしている。
「アンリルよ! あんたがそんなことでどうする。あんたの奥さんはもうとっくに亡くなったではないか。死人が口を聞くことも顔を見せることもない。幻影があんたをどうこうすることなどできない」
ホワックの激励は効果があったようで、アンリルの絶望感がありありと見受けられた目に輝きが灯った。
「アンリル殿、ホワック殿の言うとおりです。幻覚はあなたの潜在的な恐怖に手直しをしてあなたの精神を脅かそうとしている。だがこれは心弱きもののみがかかる者でしかない。ちゃちなまやかし術だ。屈強な戦したるあなたなら克服できるはずです」
アンリルは脂汗をかいていたが、次第にそれも落ち着いていった。
「そうだな。幻は所詮、幻だ」
アンリルは落ち着いたようで、ホワックとヨマはほっとした顔をした。
「何かくるわ」舞雪が言った。
一同は見上げた。というのもそれはここにいる誰よりも大きかったからだ。
戦神ウーリだろうかとカルエは驚愕しながら思った。こんな大きな人間はいないからだ。
「バジヌ神」
ホワックはそう呟くと膝を着いた。




