表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一角ネズミ  作者: 晴彦
18/23

昼闇の平原

 ヨマの提案により彼らは休憩を取った。水晶の結界を全員が張れば、かなりの強さを持つ。結界は敵からこちらの身を隠す効果もある。急に現れた大型の獣も、こちらの気配には気づかなかった。背中に茶色い毛皮。他には硬質そうな葉っぱに似た鱗と思われるものを纏った四つ足の獣。鹿に似た長い角からは微弱な光が流れている。大きさは大型の馬ほどある。獣はゆっくりと遠ざかっていった。

「雷おこしだ」ヨマが言った。

「なんですの?」舞雪が尋ねる。

「角から雷を出して電場を作る獣だ。いざとなると強力な雷で敵を威嚇する。だが基本的には草食の、おとなしい動物だ。こんなところで出くわすとは」

「電気ウナギみたいな動物ですのね」

「まあ、同じく電気を発する動物だね」

 休憩を終え、旅を続ける。みな警戒しており、空気は重かった。カルエのみたところ、ヨマと舞雪はどこか余裕があるように見えた。

平野は広かった。地図で確認したところ十キロほどは続いている。

「魔物と遭遇するのを考えるなら今日はこの平野を越えるだけで終わりそうだな」ホワックがため息をついた。

ここは昼闇の平原というらしい。カルエはその名に由来などがなければいいがと不吉な予感を覚えた。おそらく、いい意味などはないだろう。

さっきまで明るかった空が進むにつれて暗くなっていく。カルエは振り返る。南の空は雲が掛かっていなかった。

「なんて暗いんだ。もう宵闇みたいじゃないか」ヨマが呟く。

 ホワックがエントンにこの場所の詳細を尋ねていた。

「そこは昼間になると薄暗くなりますね。陽光をとおさない特殊な雲がそこだけを覆ってしまうからです。まあ、平原以外が晴れていれば真っ暗にはなりませんよ」

 太陽の光を完全に遮断することができる雲なんてありえるのだろうかとカルエは思った。しかし、現に空は真っ暗闇だ。まるでものすごく大きな、遮光度の高いカーテンで覆ってしまったかのような。

「ちなみに暗くなるとこの平原にはつきものの巨人が現れますのでご注意を」

 巨人という単語にカルエは恐ろしさしか感じない。目指すブリテの森は平原を超えて川を越えればすぐのところにある。十キロほどの平野はホワックのいうようにたんに通過するだけでは終わりそうもなく、難儀しそうであった。

 巨人の存在がすでに肉眼で遠く確認できるなか、六人は進んだ。巨人はこちらに気づいているのかもしれない。しかし交戦的でもなければ肉食でもない。巨人というのは大型類人猿の類だ。カルエは彼らのことをよく知らない。毛むくじゃらの巨大な化け物には圧倒されてしまうが、みたところこちらに対して警戒している様子も襲いかかってくる様子もない。相手に接近しなければ問題ないのではないだろうか。

だがどういうわけか、暗闇がいや増すと共に巨人の数は増えていく。そして明らかにこちらに対して敵意の目を向けていた。

「暗くなっていくにつれて奴らは好戦的になるのかな」ヨマが呟いた。

「きっと、暗いときにでる何かが奴らを警戒しているのだろう」

 アンリルの予想は当たっていた。大蝙蝠が闇の中、空から押し寄せてきた。二十匹ほどいただろうか。鋭い、剣歯虎のような歯を持った彼らは巨人の肉が好物の大人の男並の大きさを持ったおぞましい生き物だった。

 巨人たちは唸りをあげ、彼らが武器として扱っている様子の倒木を折ったものを棍棒の代わりに振るった。大蝙蝠は俊敏だが巨人たちの攻撃も侮れない。中には一撃で沈むものもいたし、軽々と避けて巨人の肩を鋭い爪で掴むと、長い牙を突き立てて手痛いダメージを与える蝙蝠もいる。

 そんな両者の戦いにカルエたちは巻き込まれてしまっていた。警戒する巨人たちは手あたり次第に攻撃するのでカルエたちにも攻撃を仕掛けてくる。幸い、結界が防護壁となり防いでくれたがいつまでも持ちはしないであろう。さらに蝙蝠たちはカルエたちをも襲ってくる。カルエは頭のすぐ上を蝙蝠に通過され、生きた心地がしなかった。舞雪の相手を切り刻む術がなければもっと困ったことになったかもしれない。ホワックの弓、アンリルの爆発する投石を投げて抵抗する。 カルエが再び蝙蝠に接近を許すも、蝙蝠はカルエに近づく前に鋭い剣の一撃により体を腹から横に両断された。

 巨人の攻撃にはホワックの盾が効果を持った。盾は大きく透明で軽く薄いのだがあらゆる攻撃にも対応できるものだった。だが巨人の棍棒の一撃で盾とホワックの体は吹き飛ばされた。

 舞雪が炎の環を周囲に張り、巨人は入ってこれなくなった。蝙蝠たちの攻撃により巨人は倒れ、体を蝕まられていくし巨人の攻撃により蝙蝠は倒れ、巨人のデザートにされた。

 さらなる混沌がやってきた。混乱をより決定的にするかのような大型の猫族ラウルーウの登場だった。四つ足に鋭い牙。鼻面の上に一本の角。ライオンを少し小型にして俊敏にしたような獣だ。狩人の中ではもっとも出会いたくない存在としてあげるものも多い。

「早いところここを離れよう。全力疾走だ」ヨマはそういうなりカルエの手を掴むと勢いのある走りを見せた。他のものも続いたが、ヨマはなるべく巨人と蝙蝠がいるなかをくぐるように走った。カルエにはなんとなくヨマの行動が理解できた。あの四つ足の獣の襲撃を避けるために巨人たちの混乱を利用したのだろう。十匹ほどの獣。しかしカルエのみたところ、巨人と蝙蝠のほうがましだと思われた。

 巨人たちは嫌な生き物がやってきたと思ったのだろう。蝙蝠たちを払いながらも彼らから遠ざかっていく。しかしもはやラウルーウと巨人の戦いは避けようもなかった。

 先頭を走るヨマは巨人の襲撃も剣で一蹴し、間髪いれずに襲いかかる蝙蝠も返り討ちにした。カルエはただヨマにはついていくだけだった。

巨人たちの戦いを抜ける。カルエが振り返ると、ラウルーウが巨人と蝙蝠を次々と襲撃していた。三種とも無事では済まないだろうなとカルエは思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ