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一角ネズミ  作者: 晴彦
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沼地

 次の日、エントンはカルエ達にミャエステの地図と水晶玉、護身用のナイフ、非常食、それからそれらをいれる麻の袋を渡した。

「水晶玉には逐一定期連絡を入れておくようにしてください。また迷ったときや困ったときにも連絡をくれればその場に応じたアドバイスをします。その水晶は強力な結界にもなります。それからナイフは特殊な金属で作られたナイフです。切り裂く力は凄いのですが、残念ながらすぐに刃が欠けてしまうのでいざというときに使用してくださいね」

 カルエはナイフの扱いなど包丁としての用途にしか使ったことがないので戦闘用の武器を持つのは不安を覚えた。ヨマや他の者に頼り切りなのはまずいだろうとカルエは感じていたのでいざというときの武装は必要だ。カルエはナイフの柄を強く握りしめた。なんとなく、勇気が湧いてくる気がする。

 そしてまた旅が始まった。最初の目的地である戦神ウーリ探索。エントンの話では彼は定まった場所におらず、この魔法世界をたえず歩き回っているらしい。 ならばウーリは他の目的を果たしているときに出くわすだろうと、最初の目的はカルエの、一角鼠を捕らえるというものに専念することになった。目指すは北東にあるブリテの森である。ホワックとアンリルの二人を先頭に、カルエ達は前進した。エントンの屋敷が遠ざかると木々はなくなり沼地に変わった。沼地はそのままでは進めないような場所ではあるが、木の板がいたるところにあってぬかるみのなかを通らないで進むことができるようになっていた。

「ここは沼人がでるから注意してくださいね。泥の深みより現れる半漁人のようなものです。連中は沼地に引きずり込もうとします。沼地のなかには獰猛な魚もいます。人を骨にしてしまうようなね。気をつけて」

 ホワックが水晶でエントンに連絡を取ったときのエントンの対応だった。沼人という存在がカルエには気にかかるところだった。

 沼人はすぐに現れた。泥だらけの汚れた存在が二足歩行してやってくるのはカルエには心臓に悪い光景だった。しかしヨマやホワック達にはさして怖い存在ではないようで、ホワックはハンマーを振るって沼人を寄せ付けず、ヨマは泥まみれの怪物の、トカゲのような魚のようなそれでいて人にも似た頭が自分の刀の範囲に入るなり一瞬で撥ねた。

 沼人にミトソが捕まった。ミトソは悲鳴をあげ抵抗するも泥の中に引きずりこまれそうになっていた。鱗の皮膚の太い腕がミトソを捕らえて離さない。

 ホワックが槍の一撃を沼人の背中から突き刺したのでミトソは泥の中に埋まるのを免れた。

「ミトソ殿。片方の腕で相手の心臓に一突き入れる。敵は案外鈍い。近距離からのナイフでも充分戦えるぞ」

「獣と戦うよりは楽でしょうね」ヨマが言った。

「足元には注意してくれよ」アンリルが警告した。

 そう言った先からカルエは泥の中から現れた手に脚を掴まれた。カルエの細脚は対抗できずにそのまま沼の中へ案内されそうになった。しかし素早く、アンリルが剣を沼人の腕に突き刺した。そのあとでヨマが腕を切り落とす。

「こいつら……引きずりこんでどうするつもりだ?」ミトソが声をだす。

「食べる以外にあるまい!」ホワックは前よりも警戒し、沼人の腕が水面に現れるか見えたとたんに槍で突いて威嚇した。

 そうして、予断を許さない状況ではあったがなんとか沼を超えることができ、こんどはただ広い平野が続いている。

「難儀だったな」ホワックは疲れた声をだした。

「少し休もう」


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