魔法使い
アラニーの家から離れ、彼らは林の中の小道を進んだ。辺りから感じる獣の気配に敏感な男たちが常に警戒しながら進んだので進みはさほど早くなく、そのわりに体力の消耗も早かった。
魔女が一緒にきてくれればよかったのにとカルエは思った。きっと高等な魔術を扱えるに違いないのに。カルエは自分が魔法を扱えればいいのなとも思った。そうすれば足手まといにはならないだろう。
「待ってください」
背後から声が聞こえた。振り返ると、妙な着物を着た若い女が駆けてきていた。女は一行に追いつくと、荒い息をついた。
「何者だ?」ヨマが彼女に尋ねた。女は白くふっくらとした絹の上衣を着、下衣にはこれまた妙に膨らんだ金色のものを履いていた。
「私は舞雪と申します。アラニーの家に滞在していた者です。私は魔術の心得が多少あるゆえ、あなた方の力になれるのではないかと思い参りました。私の目的はマンニと呼ばれる……薬の材料です。一人では大変なので、ご一緒させてください」
「魔術とは何を扱えるのかね?」アンリルがすかさず聞いた。彼はこうしている間も隙をみせずに周囲を警戒している。
舞雪は、右手に炎の球を作り出してそれを木に向かって投げた。木が炎上するも、すぐに消えた。木は焦げているが葉に支障はないようだ。
「魔術師の力は是非欲しい。よろしく頼む」
アンリルが彼女の同行を決定した。
カルエは彼女のことを美しいと思った。白い肌。後ろに一つに結わえられた艶やかな黒髪。知的な目にすらりとした上品な鼻。薄い桃色の唇。カルエは自分のぼさぼさの明るい髪とは違う舞雪の髪に見惚れた。
「よろしくお願いします」
舞雪はヨマに向かって満面の笑みで微笑んだ。
カルエはなんとなく、察してしまった。なるほど、ヨマは確かに美しい公達だ。




