別の場所
カルエはいなくなった。
「そこの剣士さんも、彼女のあとを追うといい。みたところあんたは彼女についてきたという感じのようだし」
「そのとおりです」
ヨマは魔女のいうとおりに、カルエを追った。
「さあ、男どもよ、貴様らも後に続くといい。どうせ金か、傾国の危機か何かだろう。全て解決できるぞ。この奥、魔法世界にいけばね。北東のエントンの屋敷を尋ねるといい。そこには戦神ウーリの情報が訊けるかもしれないし、荒れ神ヨニサマの情報も訊けるかもしれない。彼らを戦いに参加させれば一騎当千だ。金なら南西のバルム山だね。あそこには一番しなやかな剣が作れるというニーム金属がある。あれの大きなものを一つでももっていってみろ。億はいく。億万長者だろう。探してみなさい。原石はその辺に転がっている。しかし、到達するのは簡単ではないよ。あそこには凶悪な魔物がいるから」
魔女はそれ以上なにも言わず、奥へいくことだけを促した。ならば、と三人はカルエたちに続いて扉の奥の廊下を進んで行った。
廊下は随分長く感じた。背後で走り寄る音が聞こえた。振り向くことはしなかった。のんとなく、ヨマだろうと察しがついたからだ。
「カルエ」
ヨマの優しい声に、カルエは安堵した。ヨマはついてきてくれる。
「この先にある場所の、北東、ブリテの森。ヨマ、そこに一角鼠はいるんだって!」
希望を持つカルエの表情に、ヨマは憂いの顔を浮かべた。
「魔法世界というのを、カルエは知っているのかい?」
「知らないけど、普通の場所じゃないんでしょ。だけどいかないと。お母さんは必ず助けるから!」
「カルエ……俺は君を護るけど、俺の力が及ばなかったとしても、どうか許してくれ」
カルエはヨマの一人称が変わったことに気づいた。
「ヨマ、ここまできて、そして今もまた私についてきてくれる。貴方には感謝の言葉しかない。ありがとう」
ヨマは憂いの表情をやめ、微笑みを浮かべカルエの肩に手を触れた。
「最後まで付き合うよ」
カルエはぼうっと、汚れた姿ながらも美しい公達であるヨマに見惚れた。こんな男がこの世界には幾らでもいるのだろうか。いや、違うだろう。ヨマのような美丈夫はそうそういないと思う。そんな人を神は自分に寄こしてくれた。ヨマはカルエにとっての幸運の星なのではないか。
通路を進む。次第に光がひろがっていき、眩しくなっていった。それから──。
二人は魔法世界、ミャエステにいた。




