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ネカフェの懲りない面々  作者: shian2011
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【prologue】お店員様は神様です?

【prologue】お店員様は神様です?


 ぼくは伊藤佑樹。

 23歳。

 野球の『佑ちゃん』と同じ年。

 名前も似ているし、誕生日が同じならネタになるけど、そうウマくいかない。

 浪人も留年もせず大学を無事卒業。

 就職に失敗。


 たぶん、初めての挫折。

 たぶん、致命的な挫折。


 とりあえず、実家の近くのネカフェでバイトしてる。

 時給900円。

 『佑ちゃん』とはえらい違いだな……。



 ネカフェにはいろんな客がいる。

 ぼくがこのバイトを始める前に持っていたイメージは『ネカフェ難民』だ。

 4年前の2007年頃だったか、TVで放送されてから有名になった言葉。

 まさかいないだろうと思って入社したら、フツーにいた。

 何人も、何十人も。

 年齢層は幅広くて、上は白髪のじーさんから、下は18-19歳のヤツまで難民してた。

 マジでひいた。



 ネカフェ難民の中には変わった客も多い。

 特にいじりやすそうなキャラの客がいると、同僚の大学生バイトなんかはこう言い始める。


「この難民系、ちょーウケるし! ね、伊藤さん! こいつ、ウケません?」


 なにがそんなにウケんのかよくわかんないし。

 てか、難民『系』ってなに? 『系』って。

 勝手に『系』とかつけんなよ、と。

 


 また、違うネカフェ難民の客で、スタッフへの態度が大きい客などへの陰口がすごい。


「終わってる人間」


 そんな些細な事で人格や人生を判定されたくないだろうな。

 しかも、全店舗共有の顧客データにまでそんな書き込みがされてることもあった。

 さすがにマズいだろと思った。

 

 

 大学生はなんでこんなに上から目線なんだろ?

 上からっていうか、むしろ『神』目線?

 『お客様は神様です』って昔の演歌歌手が歌ってた。

 大学の講義や一般教養でカスタマーサービスについて軽く勉強する。

 昔の演歌はともかく、後者は大学生なら知ってるはずだけど、自分がバイトとはいえ接客業をしているって自覚がないんだろう。

 

 というぼくだって、去年までは似たようなもんだった。

 就職に失敗するまでは。

 


 就職も決まらないまま大学からポンと社会に押し出されて、「はい、今日からキミはフリーターね」と烙印を押された。

 バイトしてなければフリーターでもない、ただの無職。

 親がまだ働いているから実家に寄生できる。

 それがなければ、ぼくだって卒業と同時にネカフェ難民だったかもしれない。

 いや、貯金も仕事もなかったから、ネカフェ代が支払えずにネカフェ難民にさえなれなかっただろう。

 ネカフェでバイトするようになって、それを痛感した。

 同僚の大学生バイトは、そーゆーのがまだわかんないんだろうな。

 『神』目線のおまえと、おまえがいじって嘲笑っているネカフェ難民とは、『神』じゃなく『紙』一重 だということを。


 ……うん、うまいこと言おうとするとやっぱダメだ。

 こーゆーのがウマくできれば、就職も失敗しなかったかも知れないな~。


 でも、悪いことばかりじゃない。

 お陰で、ネカフェ難民を見下さず、偏見を持たず、逆に親近感を持てるようになった。

 そして、興味を持つようになった。

 興味の対象は、ネカフェ難民だけではなく、他の風変わりな客にまで及んだ。


 奇人で変人で奇天烈な、愛すべきネカフェの懲りない面々。


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