抗う者Ⅱ
――――――☆――――――☆――――――
リウィアはその一言を聞いて沈黙した。話はちゃんと聞いていたし何を言われたかも理解できている。カンビアには散々驚かされてきているしストリィアのこととなれば尚更だ。仮にカンビアがどんな突飛なことを言ってもストリィアのことなら別に不思議とは思わない。そんな風に考えていたがこの時ばかりは呆けてしまった。
「…意味が、わからないわ…。」
あまりの驚きにようやく喉から出た言葉はそれだけだった。
「まぁね、驚くのは無理ないと思うよ。俺もさ、もしもあの人が急に私は不老不死なのだよ。とか言ったら驚きで声も出せなくなるだろうし。」
「でも、カンビア、あなたストリィアは幼少の頃から一緒に居たんでしょ?」
「一緒に居たってのは違うな。あいつが一方的に近くに現れるだけだよ。それに子どもの頃からあいつを見ているからこそ分かる。あいつは俺が子どもの頃からずっとあの外見のままだよ…。何一つ変わらない。」
「…なんですって?」
「それにそれだけじゃない。俺が子どもの頃だけならまだしも…俺の母親が子どもの時からずっとあの姿のままらしいぞ。」
「あ…悪魔なの?」
カンビアがさっきまでのおちゃらけた顔とは打って変わって急に真剣な顔になった。
「さてね?仮に悪魔だとしても…。」
ゴクリ
カンビアの顔が急に変りリウィアもその空気に飲まれ生唾を飲み込む。
「悪魔だったとしても…。」
「俺は、全く驚かないね!」
リウィアの目が丸くなる。口がぽっかりと開きそのまま開きっぱなしになる。彼はしてやったとばかりに笑顔になる。
「…はぁ?」
「だってさ、そうだろ?あの爺様の正体が分かるんだったらそれこそなんだっていいだろ?悪魔だろうが神様だろうが神話に出てくる化け物だろうが英雄だろうがはたまたゴーストだろうが…人間じゃないことなんてとっくに分かっているんだ。だったら正体が分かるんであれば何でもいいじゃないか?どうせ俺達人間じゃあ一生かかってもあの爺様に関しては何も分からないんだしな!」
リウィアはしてやられたと、カンビアはしてやったと、それぞれ真反対の顔をしている。
「それ…ただ開き直っているだけじゃない。」
疲れた顔でリウィアは言った。
「ああ、だけどな、あいつについて真剣に考えても無意味なんだよ。だってあいつは人知の外の存在なんだからな。」
「普通…そこまで言う?なんかタネでもあるんじゃない?」
「…タネか、もしタネが有るんだとしたらそれこそ化け物だな…数十年いや、もしかしたら数百年…それ以上もあの姿で過ごし続けているだなんて。」
それこそ狂気の沙汰だよ。と彼は付け加えた。
コンコン
ドアをたたく音が聞こえる。
「リウィア入ってもよろしくて?」
「はい。お母様、大丈夫です。」
カンビアが静かに立ち上がる。
ガチャリ
外側からドアが開かれリウィアの母が入ってくる。髪は長く後ろで結ばれている。彼女からはとても落ち着いた雰囲気が感じられる。
「どうも、お邪魔させていただいています。」
カンビアは立った状態から会釈をした。
「うふふふふ、家ならいつでもあなたを歓迎するわよ。」
ありがとうございます。カンビアは笑顔でそう言った。
「お母様それでどうしたのですか?」
リウィアがそう聞いた時リウィアの母は手で合図しカンビアに座るように促し、彼女もリウィアの隣に腰を下ろす。カンビアも再度長椅子に座りなおす。今度はだらんとは座らず姿勢を正しくして座っている。
「リウィア、今日のお相手はどうでした?」
リウィアの母が聞く。リウィアとカンビアは驚いた表情に変わり、カンビアは急いで席を立とうとする。それをリウィアの母は片手で静止させる。カンビアは気まずそうに口を開く。
「すみませんが…そういう話をするならば俺は居ない方がいいと思うんですが…。」
「いいえ、あなたにも関係あるお話ですわよ?カンビア・プレヴィデンザ・ヌーラ。」
カンビアのフルネームを口にする。リウィアはハッとしカンビアの顔を覗き込んだ。彼の表情が変えていないことにほっとする。
「お母様…どういうことですか?」
間髪いれずにリウィアが聞いた。
「つまり、俺もリウィアの婚約相手の一人として正式につき合うと?そういうことですか?」
「ええ、やっぱりあなたは物分かりがいいわね。」
――――――☆――――――☆――――――
書き貯めがなくなってしまった…なので更新が少しゆっくりになります。
そして次回からは抗う者はではなく、無知な者が始まります~
(-_-)/~~~ピシー!ピシー!