序章Ⅱ
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わああああああああああああああああああああぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
闘技場の中央では半裸の男二人がとても剣とはとても呼べないような錆びついた鉄の棒を振り回しながら気が狂ったように戦っていた。剣がぶつかり合うたびに観客たちは狂ったように吠え、剣を振りかぶれば吠え、剣が外れればまた吠える。
(あの男はこの歓声を闘技場の叫び声と揶揄していたけど…それも分かるわね)
リウィアはそんなことを思い出しながら。二人の剣闘士に目を向けていた。この叫び声さえ除けば彼女もまた熱狂的とまではいかないまでもファンの一人であることには変わりはなかった。
ガンッ!ギンッ!ガッギィイイ!!
歓声の合間の縫って剣戟の鈍い音が耳に届く、
このフラウィウス闘技場は一階の席は剣闘士を見易いため貴族達御用達の席、貴賓席とも言われている。二階の席は一般席そして三階の立ち見席と見難くなればなるほどその席の価値は下がっていく。
彼女の座っている席は一階席その中でもより剣闘士達に近い席であった。
1階席から3階席までの距離はそれこそ40メートルもあるが、それでも4万にも上る群衆の声だ。
如何に距離があろうとこの煩わしい群衆の声が聞こえなくなることなどない。
この歓声もまた闘技場の花だという輩もいたが到底理解できるものではなかったし理解する気も彼女にはなかった。
「全く、煩わしくてかないません。」
「?、何か申されましたか?」
「いいえ、何も。」
今、この男(名前は何だったか?)に連れられて闘技場に来ている。まぁ、こんな男の名前なんていちいち覚えるだなんて無理な話よ…全く、などと彼女は考えていた。それもそのはず彼女には連日のようにこのような男達にエスコートされているのだから。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!
決着がついた。
さっきまで戦っていた剣闘士の一人がもう一人の喉元に切っ先を突きたてた。赤い鮮血が突きさした剣闘士にかかる。突きさされた方の剣闘士の目は有らぬ方を向き、口からはビチャビチャと血が溢れてくる。体もまだ痙攣しているようで数度体をビクン仰け反らせていた。
見事勝利を収めた方の剣闘士は切っ先をソレから抜き取った。さっきまで動いていた剣闘士は人形のように崩れ落ち2度3度痙攣したのち動かなくなった。
勝利した剣闘士は高々と剣を掲げた、切っ先にはべっとりと赤い血が付いていた。その赤い血をまるで敵から奪った宝石のようにその剣闘士は見せつけている。
それを見た彼女はえも言われぬ何かを感じていた。
(ああ、うつくしい…いや、違うわ、何でしょうこの思いは…滾り、そう滾りだわ…私は何に対して滾っているのかしら?)
すぅっ、と彼女の口の端が持ち上がる。それを隣にいた男がチラッと見た後すぐに目をそらした。
なんて…なんて悪い顔をしているのやら、ここに連れてくるときにはムスッとしていたわりには随分といい顔になったものだね~フフフフフそれだけでも連れて来た甲斐があったものだよ。これで1歩前進かな?彼はそう思い剣闘士の方に目をやった。
今もまだ剣を掲げている。観客たちの声援も絶えていない。そのうち主催者が現れて歓声を鎮めるだろうと考えていたら主催者が現れた。
主催者はその歓声を抑え、勝利した剣闘士に一杯の酒を振る舞いそれを剣闘士が飲み干す。ワァアア!と再度歓声が上がった後剣闘士は闘技場の奥へと戻って行った。次の準備が整った!と大声を出す主催者。その主催者の後ろから慌てて人が出てくるのが見えた。
慌てて出てきた人物は主催者に耳打ちをすると今度は主催者の顔が見る見るうちに青くなっていった。
「本当に、本当に出場なさるお積りなのかっ?」
「え、ええ、先ほど従者の方が現れて急遽準備するようにと…」
「なぜ?なぜこんな急に…」
主催者は最後にそう呟き、慌てて入ってきた男に準備させるように指示し、観客に向けて声高々とそれを言う。
「皆様!長らくお待たせいたしました。コンモドゥス皇帝陛下がご出場なさいます!!」
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いやぁ~連日投稿もいつまでできるのやら
書き貯めも序章の分は残っているのでそれまでは
スムーズに投稿できると思います。
…たぶん