16話 BROKEN
振られた。完膚なきまでに振られた。
自室に戻った私は、一人でベッドに突っ伏していた。
私の告白華麗にスル―されたもんな。あろうことかシェリア君私の事さっさと帰したそうだったもんな。
聴かなかったことにしてさっさと帰しちゃえ!って思った、んだろうな。うーわーーーマジへこむんですけどーーーーー。
好きです、って完全に言っちゃったしな…。もう今更あれは好きって親愛の好きの方だから!弟的な意味の!って訂正できないです…よね…?はい、デスヨネー。
一応間違っては、ない。私は、うう、お恥ずかしいことにシェリア君が、好き、だ。冗談抜きで。
一応、彼への好意の中でもLove方面の気持ちにはなるべく蓋をしてきたつもりなんだけど…。普通に無理だった。普通に惹かれちゃったもんね。私の恋愛経験値低すぎ。マジあうとおぶこんとろーる。
なぜ、蓋をしようとしてたかって?ふん、愚問だな!
『独身で、27歳の、美人でも何ともないただのOLが、4歳年下の異世界の王子様(超イケメン)にガチで恋する』
お分かりいただけただろうか。超いたたまれなくない?
私は、ここで「だって好きになっちゃったんだから仕方ないじゃない!」などと開き直れるほど子供でもないし、素直な性格してない。
こうやって、思考をアホな方向に走らせないと、泣いてしまいそうだった。
だがしかし泣いたら『独身で、27歳の、美人でも何ともないただのOLが、4歳年下の異世界の王子様(超イケメン)にガチで恋した挙句、振られて号泣』っていうさらに痛々しい状況に陥る。それだけは阻止せねば!頑張れ私のプライド!
「早沙子さん」
「ひゃっ!?」
だだだだ誰だいきなり!と思ってベッドに伏せてた顔をあげると、そこにいたのは遊利ちゃんだった。
あるぇー。部屋に入ってきたの全然きづかなかったんですけど。
「あの、外にいる見張りさんが入れてくれなかったので、こっそり入ってきました」
「ああ…なるほど」
部屋の外に見張りで立っているのはアレン君だ。シェリア君にはディラン君がついている。
遊利ちゃんはシェリア君たちと一緒にいるっていう方向だったと思うんだけど、まあ、抜け出してきたみたいだ。
アレン君は明らかに遊利ちゃんを敵視している。シェリア君が遊利ちゃんに頭を下げた時なんか、射殺さんばかりの鋭い視線を送ってたもんな。
「…大丈夫ですか」
また枕に顔を突っ伏した私に、遊利ちゃんは心配そうな声色でそう言った。
泣きそうな顔、さっき見られちゃったかも。情けない、ほんと。
「もし、ここにいるのが辛かったら、今この場で戻ることもできますよ」
―――ああ。
その言葉を訊いて分かった。この子は、全て、把握ってる。
私がシェリア君を好きで、告白して、玉砕したこと。そうでなかったらこんな言葉は出てこないだろう。
なぜ、どうやって、なんてこの子には今更すぎる疑問だもんね。
「…ううん」
枕に顔を埋めているから、その言葉は聞き取りづらかったと思う。でも、自分でもびっくりするくらい芯のある、まっすぐな声が出た。
「私は、シェリア君の相談役を途中で投げ出すんだから。投げ出すなりの誠意を見せなきゃならない。急にいなくなるなんて、できないよ」
ゆっくりと、私は顔をあげて遊利ちゃんを見る。
「予定通り、明日の午前中でいいかな?」
自分ではほほ笑んだつもりだったけど、たぶんへったくそな笑みになったと思う。もはや変顔の域じゃないだろうか。
遊利ちゃんはそんな不細工な顔をしている私を見て、笑うどころか、悲しそうな顔をした。
2011/11/13 改稿