それは本当に真実の愛なのかしら?
私が貴方と出会ったのはちょうど10年前のことでした。
王宮で開かれた春のお茶会。
大人達の会話に退屈した私は一人抜け出し、庭を散策していて…そんな時に貴方に声を掛けられました。
『ちょっと待って…。君のフワフワの綿菓子の様な髪が、薔薇の蔦にに絡んでしまったから取ってあげる』
つるバラで出来たアーチをくぐる時に、私のフワフワの長い髪が引っ掛かってしまったようです。
突然、声を掛けられたので驚いて振り返ると…
そこには…太陽に輝くサラサラの金髪に、晴れ渡る空のように透き通った瞳の王子様が微笑んでいました。
比喩ではなく、本当にこの国の王子だった彼と、公爵家の娘だった私は、その後紆余曲折はありましたが…結果として婚約が結ばれました。
私は公爵家の一人娘だったので、本当は王太子の彼ではなく、彼の弟の第二王子と結ばれ、第二王子が婿として公爵家に入る予定でした。
でも貴方が
『マルガリータこそが私の真実の愛の相手だ』
そう仰るから、第二王子には別の侯爵家の令嬢と縁が結ばれ、我が公爵家は親戚から養子を迎え、私は王家に嫁ぐこととなりました。
貴方が私を『真実の愛』と仰るから…
同年代の人達との楽しい交流の時間も削って、厳しいお妃教育にも耐えたのに…
最初はあんなに優しかった貴方が、段々と余所余所しくなり、学園に入ってからは交流のためのお茶会にもいらっしゃらなくなって…
まさか、こんなことになっているとは思いもしませんでした…。
「ごめん僕達の婚約を解消して欲しい…。
君は全然悪くない。全て僕の責任だ…。
僕は…本当の真実の愛をみつけてしまったんだ…」
その空色の目を伏せて、辛そうな顔をする貴方…その隣には、貴方と手を繋いで、こちらを見つめる可愛らしい人が…
貴方に婚約を申し込まれた時、止める人達もいました…。
私の両親も反対していました。
でも…初めて会った時の笑顔に一目惚れした私は、諦められなかった…。
でも、今は違います。真実に気づいてしまったから…
真実の愛だと言って、当時7歳の私と婚約した20歳の貴方が、本当の真実の愛だと言って、どう見ても7、8歳くらいの少女を連れて来たのを見て…。
私と婚約した時にも、年が離れ過ぎていると反対されましたが…
今年30歳になる貴方が7、8歳くらいの少女を本当の真実の愛と言うのは…それは真実の愛ではなく…単なる性癖です。
その後、王太子は治ることのない重い病を患っていると発表され、一生出られない療養施設に入院しました。
私は公爵家の養子に入った従兄妹のミッシェルお兄様と結婚し、末永く仲良く暮らしました。
お読みいただきありがとうございます。
申し訳ありません。頭に絵が思い浮かんだら、どうしても書きたい衝動に駆られました…。
お付き合いいただきありがとうございます。