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1章 情報過多の世界②

『異世界の英雄っぽい一般人召喚』それが俺をこの世界に呼び出したスキル。つまり、俺は英雄っぽい一般人ということになる、


俺は一般人なのは間違いないから、そこに文句はない。


だが、英雄っぽい?


俺が? 

どこが? 


ブラックでもない普通の会社で、人間関係も良好なのにも関わらず、一年弱で『勤労の義務』という概念にメンタルをやられてしまう程度には社会不適合者だぞ。


アレか、神様達に渾身のプレゼンをぶちかましたからか?

もはやそれくらいしか思い浮かばん。


「そういうわけで、一般人の君をうちのバカが勝手に呼んでしまって申し訳なかったわね」

「いや、もう気持ち切り替えてるんで大丈夫っす」


ぶっちゃけ勤労から解放されるならなんでもいい。


「そう言ってもらえるとありがたいわ。どちらにしろ、元の世界に返す方法なんて知らないし」

「気にしないでください。考えても仕方ことは考えない主義なんで」


サラッと元の世界に返す方法は知らんとか言われたけど、まあ期待してない。なんせ神様にプレゼンした上で飛ばされてるし。そう簡単には戻れないのはわかっている。

そして、俺は考えても無駄なことは考えない派だ。

サラリーマン時代、今から急に日曜日にならないかなぁと勤務時間中にずっと考え続けていたが、一度も急に日曜日になることはなかった。しかも、それを考えている間は集中力が下がり、下がった分の仕事が溜まり、サビ残が増える。という最悪の循環だった。

そして俺は悟ったのだ。

考えても無駄なことは考えるべきではない、と。


「これまでの会話や君の落ち着いた様子から……」

「はい?」

「君と私たちの世界の間にはそんなに大きな文化レベルの差はなさそうね」

「まあ、そうですね」


氷堂セリカは鋭い視線を俺から離さない。

照れちゃうぜ。

まあ、実際は一体どんな奴を召喚したのか確認してるだけなんだろうけどな。

こんな奴ですいません。


「君は目が覚めた瞬間に、ここはどこだと言った。この部屋はいったい何なんだとは言わなかった」

「間違いないです」


21世紀前半日本の普通のワンルームにしか見えなかったからな。


「つまり、君の住んでいた世界は、この部屋に違和感をそれほど感じない文明レベルの世界だった?」

「まあ、この部屋を見た感じではそうですね。文明レベル的に上でも下でもないって感じです」


よく見れば家電と家具は新品ばかりだ。一人暮らしスタートしましたって感じ。しかし、いい部屋住んでるなぁコイツ。


「わからないものは?」

「パッと見はなさそうっすね。パソコンとかはOSどんなん入ってるかは想像つかないっすけど」


この部屋にあるパソコンのマークは日本にはなかったマークだ。何かのゲームで見たかもしれないが、少なくとも今は思い出せない。


「なるほど……わかったわ。ところで、君さえ良ければ、これまでの夜影野遼真と同様に私達の国が君の身元保証人になろうと思うのだけど、いいかしら?」

「つまり、俺はこれから夜影野遼真として生きていけと?」


それしかないだろうから支援してくれるならありがたいけど、夜影野遼真の身元保証人って国家なの?

夜影野遼真、一体何者?

というか、そもそも夜影野遼真と氷堂セリカってどんな関係なんだろ?


「そうね。夜影野遼真は孤児で国が育てたようなものだから、学生の間、もしくは成人するまでは面倒を見るのがスジだという上層部の判断ね。たとえ中の人が変わっちゃったとしても」


ということはこの部屋は国が用意したのか。


「夜影野遼真は国家公務員的な扱いなんですか?」


もしそうだとすれば、俺はまた労働者となってしまう。労働にコミットできない俺としては断固としてお断りしたい。


「違うわ。国のために働くのはあくまでこのモコモコのバカ」


氷堂セリカは無造作にグッタリしたモコモコのぬいぐるみの尻尾を掴み持ち上げて見せる。


「私たちの君の認識は、このバカの軽率な行動に巻き込まれた被害者。そして、このバカの保護者として、国はできるだけの補償すべきだと考えているわ」

「なるほど。。。」


……なんだろう。上手く言えないが、不労所得的な気配がする。

この状況をフルに活かすべきだと俺の不労を求める本能が叫んでいる。


「仮にこれから俺が夜影野遼真として生きていくとして、夜影野遼真ってどんな奴なんですか?」

「そうね。それは後日このモコモコのバカに直接説明させるわ」

「えっと、大丈夫ですか?それ」


俺は無造作に氷堂セリカに持たれているモコフィンを指差す。


「症状的にはたぶん魔力切れね。明日には回復するはずよ。ぬいぐるみって生命体じゃないからどういう生物になったのかはこれから調べるわ」

「あ〜、なんかそれ普通に興味深いっすね」


どういう原理でぬいぐるみが生き物になるのか。この世界がファンタジーだとしてもファンタジー過ぎる。


「結果は君にも教えるわ。君の使い魔になってるみたいだし。それはそうとして、君も今日は休みなさい。その身体もたぶん魔力切れのはずよ」

「魔力切れ? ……あぁ、なるほど。この身体がだるい感じは身体が貧弱なんじゃなくて魔力切れってことか」


なるほど。この体のだるさは魔力切れなのか。筋肉不足の虚弱な身体に入ったのかと思ったぜ。


「今日のところはこの部屋で大人しくしておいてくれるかしら? 明日にはケータイとかの一通り必要なものを用意できるはずだから。それにこの世界の通貨や社会についての簡単な資料も用意するわ」

「あ、それは助かります」


願ってもない話だ。特に資料はぜひ欲しい。

それでこの世界に幾つのゲームが混ざっているかだいたい把握できるだろう。

氷堂セリカ、格ゲーキャラとしてしか知らんかったが、どうやら仕事ができる女らしい。


「この部屋のものは夜影野遼真のもの、つまり君のものだからなんでも好きに使って。で、このモコモコのバカは今日はちょっと借りて帰るわね」

「わかりました」

「魔力切れは寝たらだいたい回復するから、ゆっくり休むことをオススメするわ。じゃあ、また明日」

「ありがとうございます。失礼します」


とりあえず寝よう。

なんか魔力切れって言われてから、身体のダルさが増した気がする。


おやすみ

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