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昔も今も

作者: 奈月ねこ

ひだまり童話館 第38回企画「くねくねな話」参加作品です。

 僕が住んでいるところは昔田んぼだったらしい。らしいというのは、僕が生まれる前だからわからないんだよね。でもこのくねくねと曲がりくねった道は、かくれんぼするのにちょうどいいんだ。さあ、今日もみんなでかくれんぼだ!


「もういいかーい」

「まーだだよ」


「もういいかーい」

「まーだだよ」


 友達の孝也が鬼だ。僕たちはかくれるために時間をかせぐ。みんながあちこち散らばってから返事をする。


「もういいよー」

「よーし、行くぞ!」


 孝也の声がひびき、かくれんぼが始まった。孝也の走る音が聞こえる。僕たちはくねくねとした道に潜んで、孝也を待つ。


「みーつけた!」


 孝也の嬉しそうな声が響いた。誰かが見つかったみたい。僕はかくれ続けた。まだ見つからないぞ! 


「みーつけた」


 また孝也の声が聞こえた。それが三回聞こえたところで、誰の声も聞こえなくなった。


「あれ?」


 僕は不思議に思って、孝也たちのいた方角へ歩いてみた。何だかおかしい。誰の声も聞こえない。

 ……どうしよう。まさかはぐれた? とりあえず歩いてみよう。


 くねくね


 くねくね


 この道は知らない。くねくねしてるけど、違う道だ。どうしよう。


「和樹!」


 孝也の呼ぶ声だった。僕はほっとしながら声をあげた。


「ここだよー」

「みーつけた」


 声とともに、孝也が現れた。


「どこまで行ってんだよ。あれ? 泣いてんの?」

「泣いてない! ずっとかくれてたんだ! 僕の勝ちだよね!」


 僕のその言葉に、孝也は笑った。


「泣きながら言ってんじゃねーよ」

「泣いてない!」


 でも本当は怖かった。くねくねとした道で先が見えなかったんだ。


「泣いてたことは内緒にしてやるよ」

「泣いてないってば!」


 そんなやりとりをしながら、僕はみんなのところへ帰った。


 今度はくねくねしたこの道を覚えて、みんなをあっと言わせるんだ! かくれんぼのエキスパートになってやるんだ!




「何笑ってるんだよ」

「子供の頃、道でよくかくれんぼしたよね。和樹、泣いてたよね。ふふ」

「泣いてない! 紗知こそすぐに見つかってたじゃないか」

「どうせわたしは足が遅かったわよ」


 ピンホーン


「あ、来た!」


「よう、久しぶり」

「いらっしゃい、孝也」

「もう結婚して十年か。お前らの子供も大きくなったな」

「よくかくれんぼして遊んでるぞ。あの道で」

「ああ、和樹が泣いた道だな」

「泣いてない!」


「ふふ」

「ははは」


「二人とも笑うな!」




 僕にとって不思議な道。子供たちはどう思うんだろう。もしかしたら、僕みたいに迷うかも。でも、みんなはそこにいるから、泣いてもきっと大丈夫。僕は泣いてないけどね!




おしまい



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― 新着の感想 ―
時代を超えた、くねくね道の伝承がよいですね。 こどもだからこそ行ける場所も、あるのかもしれません。 神隠しがないことだけを願います……。
幼馴染の思い出の場所、いいですね。 和樹からみんなが見えなくなったのは、くねくね道の見通しが悪かっただけなのか、不思議な世界とつながってしまったのか、その雰囲気もおもしろかったです。
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