第二話(後半) 小松奈美視点
「そうだ! 奈美ちゃん、今度バレンタインでしょ? もしその日に彼が来たら、カフェラテと一緒にチョコレート渡しちゃえば?」
「チョ、チョコレート!?」
突然の千尋の提案に、奈美は思わず声をあげた。
「シーッ! 声が大きい!」
千尋は慌てて奈美の口をふさぐ。
勤務中に私語をしていたなんて店長にばれたらなんて言われるか。
「例えばの話よ、例えばの。都合良く彼がその日に来るかなんてわからないし」
千尋の言葉に奈美は落ち着きを取り戻して「うんうん」と頷いた。
「でもマジな話、チョコレート作戦はいいと思うんだけどなー」
「そ、それは千尋からしたらそうかもしれないけど……」
奥手の奈美は、過去一度として男の子にチョコレートをあげたことはない。
いいなと思ってた男子も、クラスメイトたちはみんなあげていたのに、奈美だけはあげることが出来なかった。
結局、その男子もクラスの女子とくっついて卒業してしまった。
奈美にとってバレンタインデーのチョコレートはハードルが高いのだ。
「まあ、ダメ元で用意だけしといたら? いざチャンスが来たとしても持ってなかったら渡せないしね」
「う、うん……」
奈美はあまり気乗りしなかったが頷いたのだった。