7
奈々ちゃんは、昼休みが終わる頃になり、ようやく教室に戻ってきた。
俺はその時一瞬、奈々ちゃんの赤く腫れた目を見てしまって、それが授業中もずっと気になって仕方なかった。
放課後、いつものように俺たちは一緒に帰った。
だけど、奈々ちゃんはいつもの元気がないし、俺もなんとなく気まずくて二人とも黙っていた。
「あの……奈々ちゃん、大丈夫?」
「うん…」
「あいつら先生にきつく叱られてたから、もう言ってこないと思うよ」
「うん…」
「ごめんね?」
「どうして央太が謝るの?」
「だって俺がもっと強かったら奈々ちゃんを守れたのに…」
「そんなのいいんだよ。私、強いから大丈夫」
「だけど、奈々ちゃん泣いて…」
「大丈夫だよ。それに、央太は私を守ろうとしてくれたんでしょ?喧嘩得意じゃないのに」
「うん…でも、結局奈々ちゃんに助けられたし…」
「それでも、嬉しかったよ?ありがとう」
奈々ちゃんはにっこり微笑んでくれた。
「……うん」
でも、今日のことでわかった。
奈々ちゃんは、強くてもやっぱり女の子なんだ。
俺、奈々ちゃんを守れるようになりたい。
強くなりたい!
この日を境に、俺は奈々ちゃんを女の子だと意識するようになった。
それまでも、もちろん奈々ちゃんのことを大好きだったけれど、もっとちゃんと女の子として自分が守ってあげたいと思う存在になっていった。
しかし嫌なことに、それから卒業まで、奈々ちゃんと二人で登下校していると、しょっちゅうあの三人組がやってきては、俺たちを冷やかすようになった。
「ひゅーひゅー♪やっぱりお前ら付き合ってんのー?」
「もうちゅーはしたのかー?」
「げー!マジ?やってみせろよー!」
ゲラゲラ笑いながら絡んできて、
「なんですってー!」
奈々ちゃんが拳を振り上げると逃げていく。
「ムカつくー!央太、あんなの相手にしたらダメだよっ」
「うん…」
そう言いながらも、二人ともどこかギクシャクするようになった。
登下校は続いていたけれど、学校では冷やかされるからお互いあんまりしゃべらないようになり、そのまま卒業式を迎えた。
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