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あのあと、奈々ちゃんは毎日のように俺を遊びに誘ってきた。


最初は奈々ちゃんに振り回されてばかりで嫌々遊んでいたけれど、ある日を境に俺たちは仲良くなった。


あれは出会ってから2、3ヶ月くらいたったある日のこと。


~~~~~~~~~~~~~

「ななちゃん、危ないよ~」


「平気平気。やっぱりここからいけそうだよ、おうたもおいで」


幼稚園から帰ったら、奈々ちゃんが遊びにきた。

いつもいつも振り回される俺は、奈々ちゃんと遊ぶのが本当はあまり好きじゃない。


だけど、気が弱い俺は断れなかった。


この時も一緒に俺の部屋で遊んでいたら、奈々ちゃんが俺の部屋のベランダから屋根を伝っていけば自分の部屋までいけそうだといいだした。


俺はそんな怖いことは絶対したくなかったけれど、奈々ちゃんは聞き入れず、無理やり俺のことを引っ張ってベランダに出た。


「ほら。ゆっくり足をかけておりておいで」


奈々ちゃんに言われ、おもちゃを踏み台にして恐る恐るベランダの柵を乗り越える。


「そうそう。うまいじゃない。じゃあ、わたしから先にいくからついてきてね?」


奈々ちゃんは屋根の上を歩いて、隣の家の屋根へとひらりと跳び移った。


「わぁっ!すごい!」


俺も奈々ちゃんの後について恐る恐る屋根を歩きそこまで行ったものの、跳び移れずにその前で座り込んでしまった。


「ななちゃん、やっぱりこわいよ~……」


「大丈夫だよ。ちょっとしかあいてないんだから。思いきってとんでみよ?」


「ムリ…」


俺はプルプルと首を振る。


「大丈夫だって。おうたは男の子でしょ?ぜったいできるって」


「だって、こわくて立てないもん…」


「じゃあ、ちょっとまってて、今そっちにいくから」


奈々ちゃんはそう言ってまた俺の家の屋根へと飛び移った。


「ほら。立てる?」


「うん…」


俺は奈々ちゃんの手をにぎりながらゆっくり立ち上がる。


「もう一回とんでみせるから、よく見ててね?」


「う、うん…」


「よっ…と。ほらかんたんでしょ?おうたもおいでよ」


俺は奈々ちゃんに言われて、少し足を前に出してみた。


「そうそう。そこから思いきってとんで……」


「こら!なにしてるのあんたたち!」


その時、大きな声がして、俺はビクッとして屋根から足を滑らせた。


「わぁ………っ!!!」


「おうた!!」


「央ちゃん!」


幸い、下に植え木があったので、切り傷と打撲だけですんだけれど、俺たちは母さんたちにひどく怒られて、しばらく遊ぶのを禁止された。


それから病院にも行って、幼稚園も3日間休んだ。


おとなしく部屋で遊んでいたら、奈々ちゃんが母さんたちに見つからないように、こっそり屋根伝いにおやつをもってやってきた。


「おうた、ごめんね?痛くない?」


奈々ちゃんはしょんぼりしながら部屋に入ってきた。


「まだちょっと痛いけど、大丈夫だよ。それより、いいの?あそんじゃだめって言われてるのに…」


「だって…わたしのせいでおうたけがしちゃって……。ほんとにほんとにごめんね?これ…食べていいよ」


「これ、ななちゃんの大好きなドーナツでしょ?食べていいの?」


「うん。これおうたにあげたくてもってきたんだもん。食べてくれないとやだ!」


「ふふっ。ありがとう。じゃあ、はんぶんこしよ?」


「うん…」


「はい。はんぶんこ。モグモグ……おいしいね」


「うん。おいしい」


ななちゃんはやっとにっこり笑ってくれた。


それからも、奈々ちゃんは毎日おやつをもってお見舞いにきてくれた。


無茶苦茶だし、強引だし、わがままだけど、優しいところもある奈々ちゃん。


この時から俺は奈々ちゃんのことが好きになった。


そして、自分からも奈々ちゃんを誘って遊ぶようになり、それからはいつも二人で一緒にいるようになった。


~~~~~~~~~~~~~

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