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それから数日がたったある日、奈々ちゃんが俺の部屋の窓を叩いてやってきた。
例の奴と付き合うことになったという報告かと思ったら、英語の予習を見せろという。
俺は内心ほっとしながら、奈々ちゃんに英語を教えてやった。
そして、予習が終わって、さっさとさよならを言ったら、最近冷たいねと言われた。
……冗談じゃない。
誰のために無理して冷たい態度をとってると思ってるんだ。
こっちは、まわりから俺たちが付き合ってるとか誤解されないように、気を遣ってやってるのに。
……バカみたいだと?
すると、急に奈々ちゃんが真面目な顔で訊いてきた。
「もしかして、誰か好きな子いるの?」
不意打ちに、頬がパッと赤くなる。
「誰?クラスの子???
応援するから、教えてよ」
応援……?
余計なお世話だよ。
奈々ちゃんは自分のことだけやってればいいだろ。
俺のことまでかまうなよ。自分が告白したからって、俺まで誰かとまとめようとするな。
おせっかい……。
「……奈々ちゃんには関係ない」
俺は低く冷たい声で言った。
「え……?」
「もうほっといてよ。
いつまでも小さな子どものままじゃないんだから」
「……央太?」
「もう帰って」
俺は奈々ちゃんを窓の外に押し出して、鍵をかけた。
胸の中に黒くてドロドロしたものが溜まって、すごくイライラしていた。
奈々ちゃんにあたって、自分の気持ちまでわめき散らしてしまいたくなった。
そんなことをしても、彼女は困るだけだ。
幼なじみという関係まで壊れてしまう……。
だけど、この胸のどす黒い塊はなかなか消えてくれそうにない。
奈々ちゃんの馬鹿……。
無神経。お調子者……。
いくら悪口を言っても、胸の痛みはちっとも治まってはくれなかった。
次の日、俺は朝早く家を出て一人で登校した。
小学校から続いていた奈々ちゃんとの登校だけど、今は顔を合わせたくなかった。
でも、課外が始まる5分前になっても、奈々ちゃんはなかなかやってこない。
奈々ちゃん、置いてきちゃったけど、ちゃんと起きれたかな……?
早くも奈々ちゃんを置いてきたことを、俺はちょっと後悔していた。
そうこうするうちに、始業を告げるチャイムが鳴り響き、それが鳴り終わるのと同時に、彼女が教室にかけ込んできた。
ほっ。
間に合って良かった。
こんな状況なのに、安堵している俺は、かなり阿保かもしれない。




