13
受験前のある日曜日、俺は奈々ちゃんを息抜きに誘った。
「太宰府天満宮?」
「うん。お参りしにいかない?」
「でも……勉強は?」
「大丈夫。今まですごく頑張ったんだから。今さら一日くらい勉強しなくてもかわらないよ」
「でも……」
「たまには息抜きも必要だよ?御守り買ってあげるから、ね?」
「……うん」
俺たちは電車に乗って久しぶりに遠出した。
パン!パン!
『二人とも合格しますように…!』
俺がお参りを終えても、奈々ちゃんはまだ隣でお参りしていた。
一生懸命だな……。
長い間手を合わせていた彼女がやっとお参りを終えてこっちを向く。
「大丈夫だよ。あんなにがんばったんだから。絶対受かるよ」
「………うん」
「ほら。御守り買いにいこっ」
俺は御守り売り場に奈々ちゃんを連れて行った。
へえ。
御守りってこんなにいろいろあるんだなぁ…。
学業御守に交通安全に縁結びに安産祈願なんてのもある。
感心しながら、たくさんある中から学業御守をとろうとしたら、奈々ちゃんが俺の袖を引っ張った。
「私、これがいいな…」
え?縁結び?
「央太と一緒にK高に縁がありますようにって…」
ああ。
高校と縁があるように。
なんか変な感じだけど、奈々ちゃんがそれが欲しいなら、まあいいか。
俺は縁結びの御守りを2つ買って一つを彼女に渡す。
「はい」
「ありがとう」
奈々ちゃんは御守りを両手で大事そうに受け取ると、とても嬉しそうに笑った。
かわいい。
今までずっと、K高に受かっても、私立の男子高に行こうかと迷っていた。
でも………
ここへきて、俺の気持ちは揺れていた。
奈々ちゃんと別の高校に3年間。
その間に他の奴が奈々ちゃんに告白したらどうする?
奈々ちゃんは男女問わずみんな同じように仲良く接する。
普段はちょっとがさつなところもあるけれど、愛嬌があるし、時々見せる女の子っぽい仕草や表情がかわいいと、一部の男子から人気があることを俺は知っていた。
同じ高校じゃなかったら、奈々ちゃんを狙う奴の存在にも気づけないまま、彼女をとられてしまうかもしれないんだ。
なにより、本当に奈々ちゃんと3年間も離れていられるのか?
「央太?」
眉間にしわを寄せて考え込んでいたら、奈々ちゃんが俺の顔を覗き込んできた。
「私、きっと受かるよね?央太と一緒の高校行けるよね……?」
眉を下げて不安げな表情で見つめられて、胸が締め付けられる。
「奈々ちゃん……。
うん。受かるよ、絶対!」
俺と一緒の高校、か。
俺もそろそろ決めなきゃ。
「奈々ちゃん。行こうね。一緒の高校」
「えっ!?一緒の高校?本当に?」
「うん。俺も、私立受かっても、K高に行くから」
「うん!約束だよ。絶対、一緒にK高行こうね!」
密かに決意を固めながら言うと、彼女はパアッと明るい笑顔になり、小指を差し出してきた。
俺は笑いながら奈々ちゃんの小指に自分の小指を絡める。
つないだ指の先から、彼女の温もりが伝わってくる。
俺を見つめる奈々ちゃんの瞳は、嬉しそうにキラキラ輝いているように見えた。




