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それから、毎日の勉強の成果か、奈々ちゃんの成績は少しずつ伸び始めた。
今までが全く勉強をしていなかったので、まるで乾いたスポンジが水を吸い込むように、奈々ちゃんはぐんぐん知識を吸収していった。
「央太、ここどうしたらいいの?わかんない…」
「どれ?ああ。これは、この公式にあてはめて解くんだよ」
俺は奈々ちゃんのノートにサラサラと公式を書いてやる。
「えっと…………ああ、なるほど!わかった!」
奈々ちゃんがパッと顔を上げた。
うわっ!
ち、近…!!
目の前10センチの至近距離に奈々ちゃんの顔。
俺は慌ててパッと顔を逸らした。
びっくりした……。
落ち着け、心臓……!
数回息を吸ったり吐いたりしてから、なんとか気持ちを落ち着かせる。
再び奈々ちゃんを見ると、彼女は真剣な顔で次の問題を解いていた。
はあ。
まいった。
小さなテーブルで勉強しているから、自然と顔を突き合わせることになって、俺は勉強に全く集中できなかった。
わからないところを聞いてくる時の奈々ちゃんの上目遣いとか、ふとした拍子に髪から香るシャンプーの香りとかに、俺の胸はドキドキして、奈々ちゃんに気づかれないようにするのに必死だ。
そしてさらに、夏になると事態は悪化した。
夏休みに入り、奈々ちゃんのお願いで、俺たちは夜だけじゃなく昼も一緒に勉強するようになった。
好きな女の子と一日中狭い部屋に一緒にいて、まして至近距離で顔をつきあわせていたら、自分の勉強なんか手につかなくなって当然だ。
いけないと思っていても、彼女のTシャツの胸元からちらちら覗く胸や短パンから伸びた太ももに、ついつい目がいってしまう。
幸い自分の受験勉強はもう終わっていたので、彼女の勉強をみてやる間、俺は本を読んだり勉強をしているふりをしながら、胸の動悸を気づかれませんように…とそれだけを願っていた。
そんな苦しくも幸せな夏を乗り越えて、やがて冬がやってきた。
奈々ちゃんの問題集は何度も繰り返し使ったためにボロボロになっていた。
K高校の模試の判定はC判定。
受かる可能性50%。
先生にはもう一つランクを落としたらどうかとかなり勧められていたが、奈々ちゃんは絶対受けるといってきかなかった。
でも、回りには絶対受かるからと笑ってみせる彼女が、本当はすごく不安なのを俺だけは知っていた。




