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次の日の放課後、一緒に本屋に寄って奈々ちゃんの問題集を買った。
その夜、俺が風呂から上がって明日の予習をしていると、コンコンと窓ガラスを叩く音がした。
カーテンを開けると、奈々ちゃんが手を振っていた。
(俺たちの部屋は向かい合った位置にあって運動神経のいい彼女は決まってこうしてやってくる)
また屋根づたいにきたな。
滑ったらどうするんだ。
俺には恐ろしくてとても考えられない。
情けないけど、子どもの時落っこちた体験が、いまだに恐怖として残っている。
俺は鍵を開けて彼女を部屋に入れた。
「またこんなところからきて。危ないよ」
「だってここからの方が近いんだもん。おじゃましまぁす」
奈々ちゃんがエヘヘと笑いながら俺の部屋に入ってきた。
ふわっ
彼女が部屋に入ってくると、いい香りが鼻をくすぐった。
奈々ちゃん、石鹸の香りがする。
風呂に入ってきたのか。
髪の毛もまだ少し濡れてる…。
「……じゃあ、早速始めようか。今日買った問題集ちょっと見せてくれる?」
俺はドキドキと逸る鼓動をごまかすために、問題集を捲りながら気持ちを落ち着かせた。
それから毎晩、俺は彼女の勉強をみてやった。
小さなテーブルに問題集を広げて真剣に取り組む彼女の横で俺も自分の勉強をする。
奈々ちゃんが真面目に勉強だなんて、すぐに嫌になって止めると思っていたのに、俺の予想はみごとに外れ、奈々ちゃんは毎日俺の部屋にやってきた。
一度、奈々ちゃんの部屋に行ったら、6時ー夕飯お風呂、7時ー俺と一緒に勉強というスケジュール表が壁にはってあって、感心すると同時にちょっと笑ってしまって、彼女に拗ねられた。
笑っちゃいけないよな。
奈々ちゃんは真剣なんだから。
でも、やっぱりなんだかかわいくて、つい笑ってしまった。




