生存猫?
「うーん」
世界は広い。
見渡す限りの砂、砂、砂……そしてジャンクたち。
素人目にもゴミだろってやつから、分解すれば何かとれそうなやつまで、大小さまざまなジャンクが落ちてる。
ひとつひとつのジャンクを解析できればいいんだけど、今の私には無理。
私は映像やセンサーの情報を持ち帰り、ミーナにみてもらうだけだ。
けど、本当にそれだけでいいのかな?
せめて少しでも効率化する方法は……?
「あ、そっか、通信はできるわけだから」
そうだ、そうだよ。
たしかになんの能力もない私だけど、通信機能だけは普通に使えているよね?
ミーナとの会話だって、あれは別に端末を持っているわけでもなんでもなくて、この体でやってるわけで。
設定とかいじれないのかな?
「パソコンみたいに窓開いて作業できたら便利……ってうわっ!ホントに開いた!」
コントロールパネルみたいなもんがあるかな、ウインドウオープンとか思ってみたら、ぽんとそれっぽい画面が開いたのには驚いた。
ははは、なにこれ。
あれかな?チート主人公ってやつ……なわけないよね、うん。
まさか、こんなゲーム系のファンタジーアニメみたいな事ができるとは思わなかった。
ん?いや違う、逆?
もしかして。
地球の記憶しかない私にわかりやすいよう、ミーナがそういう仕様にしてくれてる?
うん、ありうる。
ということはむしろ、今まで開こうとしなかった私のほうがマヌケってことかな……アハハ。
ま、いっか。
「ふむ」
とりあえず開いたからにはもちろん、色々と調べてみる。
「なるほど、ミーナと会話しているのは、通信関係が『基本機能』だからなのね」
私のシステム種別だけど、『マザーシステム副官』になってた。
つまり作業員とか戦闘員じゃなくて、冗談でもなんでもなくミーナの部下扱いなのね。
けど、なんとなく理解できた。
私を再生した時のミーナは限りなくスタンドアロン、つまり孤立状態。
工場システムと連絡もとれず、船のほとんどの機能が停止状態……この状態で何とか組み立てられるのは、こんな間に合わせボディだけだったってことか。
で、それに拾ってきた誰かの記憶をぶちこんで復活させた……それがつまり私ってワケか。
ははぁ、なるほどね。
メニューの調査を続ける。
通信種別の項目を見ていたら『センサー』に関するものが出ていた。今有効になっているのは『通常』だけだ。
「探索中なんだから、他のものも使ってみないとね」
もっともミーナの話によると、うかつに自分から通信するのはまずいと思う。
だけど受信に徹するなら問題ないんじゃないかな?
よし、送信でないにしてもネットワーク系とか、こちらから何か出しそうなものはすべてカットしよう。
それで使えるやつ……およ?
「音紋解析?」
って、よく知らないけどアレだよね?
映画でしか知らないけど、潜水艦でヘッドホンつけたプロが、聞こえる音の種別で相手を判断してる例のアレを想像した。
いいね、うんおもしろい。使ってみよう。
よし『有効』と。
そしたら。
(──お?)
風の音や、さらにその風にふかけたジャンクたちのたてる音。砂の音。
さまざまな音が聞こえてきた。
それらの中から、ただの自然音をひとつ、またひとつと分離していく。
そして。
(──心音?
けど、今にもくたばりそうな心音じゃないか?)
なんだこれ?
「……」
あっちだね。
よし、ちょっと見に行ってみよう。
近づくと、音はもう間違いないほどハッキリしてきた。
地中の生物……じゃないと思う。
違うと思うけど、そちらも確認できるかな?
移動しながらメニューを調べると、バックログの項目があるのに気づいた。
ほほー、こんな機能まであるのね。
つついてみると、外に出てから今までの視聴覚の記録っぽかった。
よし、解析はじめる前のも聴いてみよう。
「巻き戻し再生……おおできる、まってそこ、二秒戻して」
しかも私の意思でコントロールできるっぽい。
つい声が出てしまうが、これは私の問題でシステムのせいじゃないよ念のため。
「風の音の周波数成分を分析して削除……おーすごいすごい、よしいいよ。それで再生」
うむ、やはりビンゴ!
だいぶ小さいけど。
「んー、歩き回って絞り込むかぁ」
おそらくどこかの物陰に、誰かがいる。
私は音声の分析を続け、その後にも不定期に出てくる音声から方角を絞り込んでいく。
(よし、足音を忍ばせて……いたっ!)
壊れた小型艇らしい残骸。
その横に転がる……二人?
おー、なんか猫耳としっぽついた女の子が倒れてる。
そんでもって。
「……これって?」
その横に転がっていた、もう一名は……一名だよね?
こっちは獣頭人身というか……これはもう人間じゃないな。
まるで物語の中から抜け出てきたみたいな……猫耳とかじゃなくて首から上が完全に猫そのものだった。
二本足で立ち上がった山猫といった異様な姿。
これは、たぶん間違いない。
ミーナに聞いた銀河の三大種族のひとつ、アマルー族。
つまり異星人だ。
すごい、はじめて見た!
いやまぁ、私もミーナもこの星の民じゃないって意味では宇宙人かもだけど。
こんな完全異種族の宇宙人なんて……すごい!!
どちらも意識がなかったが、生きているようではあった。
だけど猫耳娘の方は妙にきれいで、猫女━━たぶん女だと思う━━はボロボロだった。
その違いに首をかしげたが、今はそれどころじゃない。
私はふたりの生存者──何とか苦労の末、ふたりともそれぞれ片手で抱える事に成功した。
ふう、人間ふたりをそれぞれ片手にもてるとはね。今だけは合成人間の体力と腕力に感謝。
え、どうするんだって?
まわりはジャンクだらけ、何もできそうにない。
とりあえず戻る。
さ、いそごう。