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今後どうする?

 次から次へと驚くことばかり続くので、彼女──メインコンピュータの『ミーナ』に聞きつつ一度情報を整理した。

 うん。

 

・私は人間でなく合成人間(ドロイド)らしい。

・だけど有機型、つまり人造とはいえ生命体であり、おまけに人間と子供も作れるらしい。

・所属は地球ではなく、マドゥル星系の惑星ボルダというところらしい。

・ボルダではドロイドも一般市民だが、国によっては道具扱いなので要注意。

・私に地球の記憶があったり自分を地球人と認識しているのは、生前の私の記憶を「形見」として部分的に所有している人がいたため。

・ただし記憶に欠落があるのも、同じ理由から……形見はあくまで形見であり、記憶のすべてが入っていたわけではないと。

(そも、なくなった当人に生前に、しかも明確に確認をとっていない限り、コピーした形見に個人的な記憶を入れてはならないのです──ミーナ追記)

 

 こうして並べて書くと、まるで小説のネタだよね。

 

 しかも現状、問題はこれだけじゃない。

 というより、こっちが差し迫った重要な問題かな。

 

・ここは、とある惑星の砂漠の地下。

・現在進行系で難破中なので、何とかしなくちゃいけない。

・でも船のシステムも壊れてしまっている。どうしよう。

・それで私を修理・稼働させたと。

 

 ……色々とツッコミどころ満載だよねホント。

 

「なんとか最低限の状況はわかった、ありがとう。

 それで私の仕事は何?

 修理の手伝い?

 よくわかんないけど、とりあえず指示をくれる?」

『まず方針を決める必要があります』

「方針?」

『今の状況は完全に予定外ですから』

「……そりゃ、撃ち落とされたのは予定外だろうけど」

『はい、まぁそれも含めてです』

「了解」

 少しだけ気分がほぐれた気がした。

 ミーナの方もそうだったみたいで、映像の中の顔が少しやわらいだ。

『当初の予定では、わたしたちはこの星に派遣され、この星の政府の管理下でお仕事をするはずでした。

 ボルダとの間で貿易が強化されていましたが、船や運転者(ドライバー)が足りなかったんですよ。

 わたしたちはそのための強化要員でした』

「なるほど」

 お仕事のために派遣されたわけか……なるほどね。

『ですがわたしたちは撃ち落とされてしまいました』

「要は二国に仲良くなってほしくない敵対者の妨害ってこと?」

『そうなります』

 あらら。

『しかし問題があります。先方の国と連絡がつかないのです』

 連絡がつかない?

「通信してみたの?」

『通信はできないのです。危険なので』

「危険?」

『撃ち落とした敵が上空にまだいる可能性があります。

 このため、銀河標準の通信方法は危険です。探査されるおそれがあります。

 ですが、それ以外の方法ですと、ここが地下なのが問題になります。

 各種センサーや通信設備も壊れている状況を何とかしないと現状を知る事すらできません』

「あー……なるほど、まずは耳や目をなんとかしないとってこと?」

『はい』

 そもそも、どれだけ時間が過ぎてるのって問題もある。

「連絡がとれたらお疲れ様、一旦帰国してねって可能性もある?」

『はい、それもありうると思います』

 ふむふむ。

「相手の国からは何も?調査にきたりもしてないの?」

『それはその……広大な砂漠でひと粒の砂金を探すようなものですから』

「え?」

『この映像を見てください。かなり古いものですが』

 そういうと、ミーナは眼の前に何かの映像資料を出してきたんだけど……。

 なんか、よくわからないスクラップっぽい……宇宙船か何かか?

 地球の解体屋にも似ているけど、違うのは全く整理されていない事だった。

「なにこれ?」

『ジャンクです』

「ジャンク?」

『この星域は億年単位の昔から、たびたび星間戦争の舞台になったいわば古戦場なのです。

 戦いがあれば当然、破壊された船舶などが出ます。

 ですが、そういう戦いで大破した場合、母星に落ちたり宇宙を永遠にさまようよりはと、知的生命がいないまでも生存可能な大気のあるこの星に落下させる者たちが多かったようです……大抵の船では、生存者のブースには落下から中の人を守る仕組みがありますしね。

 時にはこの惑星の形が変わるほどの落下物があったとも言われます。

 そのせいでこの星は、公転軌道すら本来あるべきものとは違ってしまっているそうです』

「船や機械類の落下で、星の形が変わるって……いくらなんでも大げさじゃない?」

『大型船ですと、地球の単位で直径2000kmに達するものもありますが?』

「前言撤回、なんで無事なんだよこの星!」

『いえ、さすがにそのクラスをこのタイプの星には落としませんが。

 落ちているのは数キロ単位の小さな船が多いかと』

「キロ単位で小さいんだ……ははは」

 さすが宇宙文明。

「そのジャンクって、今も落ちてくるの?」

『国家建設が宣言されましたからね、今はないはずです。

 ですが、過去の遺物だけでも大変な量なんですよ。

 なにしろ専門の業者が存在し、活動しているくらいです。

 ボルダとの貿易品目にも含まれているくらいですよ』

「え、これ運ぶ予定だったの?ジャンクだよ?」

『ああ、これはさすがにわたしたちじゃありませんよ。

 こういう資材を亜高速でゆっくり、でも大変お安く運ぶ輸送手段があるんです』

「へえ……」

 星単位の大量のジャンクを、安価に運ぶ手段か……それはそれですごいかも。

『そして、この多すぎるジャンクはもちろん問題の元になっております』

「もしかして……スクラップの山に混じってるせいで、自分たちも検知してもらえない?」

『その可能性が高いです。

 大破のうえに地中に埋もれていて、さらにわたし自身もしばらく活動停止していました。

 発見されずじまいだったのは、おそらくそれじゃないかと』

「そりゃまた本当に最悪だね」

『まったくです』

 まぁでも。

 古今の宇宙船やら何やらの残骸が大量に転がってる土地かぁ。

 所詮はジャンクかもだけど、スケールがいちいち宇宙的で何ともいえないね。

 

『それで今後の方針ですが、どういたしましょうか?』

「え、私にきくの?」

『ダメですか?

 あなたは確かにわたしの庇護下ですし、その体もわたしのものではありますね。

 ですが、今ここにいるのはわたしたちだけなのですよ?ご意見くらいくださってもいいのでは?』

「あ、そうか。ごめん」

『あやまる必要はありません、立場が微妙なのはお互い様ですから』

「あはは、たしかに」

 私たちはクスクス笑った。

『そんなわけですので、意思決定の際にはマコトさんのご意見もお願いしますね』

「……気のせいかなぁ」

『え?』

「ミーナ」

『はい』

「あなた、本当にマザーコンピュータ?」

『えっと……それはどういう意味でしょう?』

「いや、なんていうかね……年下の反応を面白がるお姉ちゃんみたいな感じなんだけど?」

『あー……それは気のせいですね』

「えー、そう?」

『気のせいですよ。

 まぁ、あえて言えばわたしも人型の知能システムですからね、自覚なくにんげんくさく考えちゃってる可能性はありますが、それでもあなたの言うところのマザーコンピュータなのは間違いありませんね』

「……そうか」

 うーん。

 まぁよくわからないけど、そういう事にしておこうか。

 とりあえず。

 

 ちなみにこの違和感、あとでわかる事だけど大正解だった。

 間違いなく彼女はマザーコンピュータ。

 だけど「きわめて人間臭く設計された」という言葉がよく似合う存在だった……いやホントに。

 

 

 ところで肝心の方針なんだけど、こんな感じになった。

「とりあえず船の修理だよね」

『直すんですか?』

「まずは情報収集が必要なんでしょう?

 今って、要は見えず聞こえずなんでしょう?」

『はい、その通りです』

「だから、とりあえずアンテナか何かしらないけど、センサー類を地上に出さないとね。

 それで周囲を調べたり、先方に連絡とったりできるんだよね?

 最終的な方針を決めるのは、情報を集めてからにしない?」

『……それもそうですね。

 わかりました、それではまず修理システムの再起動から始めましょう』

「わかった、指示よろしく」

『ええ、まかされました』


次話は2日後になります。

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― 新着の感想 ―
[一言] おぉ、久しぶりの新作。楽しみにさせていただきます。
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