表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/23

襲撃?

 すっぽんぽんで海に入ったのは……たぶん前世含めても初めてだと思う。

 普通は全裸で入るったらお風呂だよね、やっぱり。

 水着どころか下着もろくにない私は文字通り、一糸もまとわぬすっぽんぽんで入水したわけだけど。

「っ!」

 入った瞬間はたしかに冷たかった。

 だけど思い切って水中に潜り込んでみたら、それは一瞬のこと。

 それよりも、私はたちまち広がる景色に魅入られてしまった。

 

 なんて──なんて、きれい!

 

 水中なのでよく見えないことを想像したのだけど、それは一瞬のことだった。

 有機合成人間であるこの体は瞬時に適応したのか、まるでスイミングゴーグルごしのようなきれいな風景に変わってしまった。

 

 はるか彼方まで見渡せる透明度は──見えすぎて逆にこわいくらい。

 水がきれいなのか、それともこの目がすごいのか──両方かもしれない。

『──おさかな』

 意識を向けた途端、幾万ともつかない無数の大小の魚の群れが、私の視界とセンサーに現れた。

 これはすごい。

 これほどの魚たちが普通に生息しているとは。

 うん。

 これなら、少しくらい私たちが食事のために釣ったところで、ここの生態系はゆらぎもしないだろう。

 そして。

『んー……』

 見つかる限りの魚の種類を見ていくに……これは日本近海のお魚と大差ない感じかなぁ?

 ただし回遊しそうなタイプのお魚は少なそう。

 どちらかというと、近海の岩場やサンゴ礁の海にいそうなのばっかり。

『お』

 なんか、でっかいのが近づいてきた。

 んー……水中はサイズがよくわからないけど1m以上は確実にあるよね。

 日本でハタとかクエとかいわれるやつに似たお魚。

『お……お?』

 まるでこっちを観察するみたいに、そーっと近づいてきて……こっちが動かないと悟ったのか、おもむろに鼻面をぶつけてきた。

 ちょ、待った、なんか、くすぐったい……っ!?

『な、なにこれ!?』

 そのクエさんもどきが近づいてきた途端、なんか周囲から一斉に小魚が集まってきた。

 それはいいんだけどさ。

『いたっ!ちょ、ちょっと誰!?』

 ぎゃあああ、しっぽ、しっぽかじられてる!?

 振り向くと、しっぽにものすごい数の小魚が群がってて、何も見えないようなありさまになっていた。

 しかも。

『え?な、なにこれ……えええっ!?』

 気がつくと魚たちに押され、私はどんどん外に向かって運ばれていた。

 海はどんどん深くなり、そしてさらに魚たちはその数と、そして大きさが──!?

『っ!?』

 センサーが突然、警告を発した。

 何事かとセンサーの示す方を見た私は、今度こそ絶句した。

 

 なんと。

 地球のサメをはるかに凶悪にしたようなバケモノが、明らかに私を狙って接近していたから。

 

 逃げようとした。

 だけど私はその途端、魚たちの意図も理解した。

 

 この魚たち──あのバケモノに私を食わせる気!?

 

 おそらく、あいつに獲物を運び、食べこぼしを食べるつもりなんだろう。

 さすがに小魚たちにそんな知恵があるとは思えないけど、ある程度の魚なら経験則が学習している可能性はある──って冷静に分析してる場合かいっ!

 に、逃げなくちゃ!

 ──だけど、逃げられない。

 

 私が水中を進むには、普通に手足で泳ぐしかない。

 泳法自体は覚えてるし、たぶん泳げる。

 だけど正直、押してくる魚たちを押し戻すほどの推力はない。

 そして──。

『ちょ、待って、やだ、ちょ、まって!!』

 

 バケモノが近づいてきた。

 そして口が開いて──。

 

 突然、何か視界が真っ暗になった。

 そして。

 

 ──私の意識は途絶えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ