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恐竜?

 ミーナから強烈な「報告」をもらった翌日。

「これが船ねえ……マジで?」

 日傘をさして、私は船──正しくは、船だとミーナが言う岩山──を見ていた。

 

 え?なんで日傘かって?

 例の太陽光線対策だよ。

 これがあれば、とんでもない日差しの中でも、影を伝わずに行動できるって持たされたんだけどさ。

 ……正直、なんで日傘?

 それも、ものすごく地球的なデザインというか……大正モダンな感じの優雅なデザイン。

 

 あと、私の格好も……うん、やっぱり触れておこう。

 なぜか私、メイド服を着せられていた。

 メイド服に猫耳娘、そんで古めかしい日傘。

 ……正直、どこから突っ込んでいいのやら。

 あったま痛いわもう。

 

 さて、話を戻そう。

 

「どっから見ても岩山なんだよね……これ」

 私が今、いるのはその岩山の上だ。

 たしかに、のっぺりとした巨大な岩は、何かの偽装と言われれば「そうかな」とも思う形ではある。

 だけど地球にもオーストラリアの「エアーズロック」みたいに巨大な一枚岩っていうのはあるわけで、別に驚きはしない。大きさはたしかに一見の価値があるけどね。

「……」

 地上に出ている部分だけでも長さ数十キロはある。

 地下の埋没部分はよくわからないけど、これより小さいって事はないと思うから……とんでもない大きさだよこれ。

 これが船だって?

 大きさはともかく、どう見ても……やっぱり岩山だよねえ。

 だけど。

「……ん?」

 何かセンサーに反応があった。

「いや、何か……どころじゃないぞこれ」

 場所は、なんとこの巨大な岩山の『中』。

 突然に点のようなものが現れて、そこがみるみる大きくなって。

 さらにそこから、まるで血管でも伝うかのように大きく、広く岩山の中に広がっていく……なんなんだこれ?

「ミーナ、このセンサーの反応なに?分析できる?」

 思わずミーナに解析依頼を出したんだけど。

『ごめんなさい、こちらも驚いてるの。

 何より、こちらのセンサーでは何も感じられないわ。マコトだけなの』

「え、私だけ?」

『あなただけというより、その体の機能でしょうね。

 その体はボルダ製なんだけど、たしかボルダ製のボディには外来のわたしたちの知らない機能があるはずなの。

 それに由来するものじゃないかしら?』

 へえ……。

 この猫耳猫しっぽ娘の体は、たしかにいろんな能力が高い。この岩山に登る時も、ものすごく楽ちんだった。

 けど、そんな謎能力まであるのか。

「それはすごいね……じゃあ、どうする?」

『中に入ってみてくれる?』

「中に?どうやって?」

『誘導するわ。だいぶ形が変わってるけど、そのタイプの船なら何とかなると思う』

「わかった、よろしく」

 

 

 ミーナの誘導で入り口を探した私は、なんとか無事に『内部』に入り込む事ができた。

「中は意外にまともだね」

『そう?』

「うん」

 偽装された入口から入ると、中は拍子抜けするほどにまともだった。

 天然の洞窟っぽいデザインは変わらないけど、きちんと区画整理されていた。

 うん、これはたしかに人か──違うにしても、ひとに近い思考をする知的生命の作った設備に見える。

「よかった」

『何が?』

「系列の違う異星人の船なんでしょ?だからてっきり」

『てっきり?』

「地球の『エイリ○ン』って映画があるんだけど、あれに出てくるようなのを想像しててね」

 元の私はあの映画が結構好きだったみたいで、本人の主記憶がないにも関わらず、まるっと映画一本がちゃんと記憶に入ってた。

 ミーナに再編してもらって通して見たけど、トイレ行くのが怖くなるほどにはすごい作品だった。

『あれくらいなら、まだ可愛い方だと思うけど?』

「いやいやいやいや、だからってわざわざ怖いの見せないでよね?」

『えー』

「えーじゃない!」

 銀河のこわい映像とか、わざわざ見せないでほしい。

 どうもミーナは私を子供扱いしたいのか、こわいもの、不気味なものを見せてビビらせようとする。

 特にこの新しい身体になってから、ひどい。

 新しい体は感情に過敏みたいで、いちいちビクッと反応してしまう。

 そしてそのたびにミーナは楽しそう。

 勘弁してほしい。いやマジで。

 

 ところでナゾのセンサーの反応なんだけど……どうやら原因が判明した。

「これ、何かのエネルギーみたいだね」

『そうね、わたしもエネルギーと推測してるけど……マコトの印象をもう少し教えてくれる?』

「うんわかった」

 私は廊下の壁に手をやると、センサーの感じているあたりを指でなぞった。

「このあたりの壁の奥を走っているようだけど……なんていうかね、これ電気と同じような使い方してるっぽいね」

『電気と同じ?』

「灯火類とか、何かの装置につながってるから。

 電力みたいに、船内のいろんなものにエネルギー供給してるんじゃないかな?」

『ああ、そういうことね……ええ、おそらくその推測で合ってるんでしょうね。

 マコト、反応の中心点に向かえるかしら?』

「それはいいけど、あくまで私ら侵入者だってのを忘れないでよね。

 ここのコンピュータと連絡とかつかないの?

 私、この船の警備システムに始末されるのはヤだよ?」

『もちろん通信は試みてるけど、今のところ応答なしね。

 ま、がんばって無事に戻ってね!』

「簡単にいってくれるし」

 まぁ最悪、死んでもまた再生してくれるんだと思う。

 けど、たとえ再生してくれるとしても殺されたくないわ。

「わかったわかった、とにかくがんばってみるよ」

『ええ、悪いけどよろしくね』

 

 エネルギーの中心点を目指し、進んでいく。

 けど当たり前なんだけど。

「うわっ!」

 唐突に、眼の前にでっかい『恐竜』みたいなのが現れた。

 

 ちなみに大きさは……身体は中型犬くらいだと思うけど、尻尾が長い。

 爬虫類っぽいけどトカゲでなく恐竜といったのは、その姿。

 地球の映画で見た『ラプトル』ってやつに似てる。

 軽快そうな二本足の身体に、長い尻尾がとても特徴的。

 

 え?隠れる?

 無理無理むり、バッチリ見つかっちゃってるから!!

 あわわわ……って、あれ?

【……】

 恐竜は私のニオイでも嗅ぐかのように鼻を近づけてきたけど、それ以上何もしなかった。

 思わずビビっていたら、なぜかあっちは……警戒を解いた?

 よくわからなけど、それだけはわかる。

 そして、長い舌を出して顔やら体やら舐められた……うっへえ。

【……】

 やがて、恐竜は私を舐めるのをやめると舌をひっこめ、くるっと向こうを向いて立ち去ろうとするんだけど。

『……ついてこいって事かしらね?』

「そのようだねえ」

『大丈夫?』

「行くよ、記録よろしく」

『ええ、気をつけて』

 それが私の仕事だ、やるしかない。

 それに……別に命の危険はない気がした。

 だから、ついていく事にした。


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