新関係で再出発
猫耳娘ボディになったその日、ミーナと私の関係は大きく変わった。
今まで敬語だったりタメ口だったりと気分次第でブレブレだったミーナが、一貫して全く敬語を使わなくなった。
まぁ、元々ミーナは司令塔で私は子機みたいな立場なわけだし、今までがむしろ変だったんだろう……ええきっと。
一瞬だけちょっと際どい展開になりかけたけど、そっちは回避したし。
え?なんで回避したのかって?
お互いに性別不明な存在だし、別に嫌いでもないけど、ミーナとそういうベタベタした関係っていうのは、ちょっと違う気がしたからね。
ミーナは受け入れようがどうしようが、特に変わらないと思う。
だけど元地球人の私の方が意識してしまいそうで。
そういうのは、なんかイヤだったんだよね。
「──ん」
『「おきたのね、おはよう」』
うわお。
肉声と船の音声に同時に話しかけられた。
待ってまって、こっちはまだベッドの中。
顔を向けると、映像のミーナと肉体の両方がいた……ややこしい。
「おはよう……なんで両方いるの?」
『「いたらダメかしら?」』
「私にかまうのは片方でよくない?船の復興はまだ遠いんでしょ?」
『……まぁそうね、それじゃまかせたわ』
「わかりました」
いや、どっちもミーナじゃん。
なんか寸劇みたい……ま、いいけど。
「ところで朝から何やってたの?」
「情報を集めて色々とりまとめていたの。
何しろ今、使える駒がマコトしかいないでしょ……やりたい事は多いけど、とてもやりきれないでしょ?」
「絞り込みかぁ」
「ええそうよ。
どれを後回しにするかって、予備頭脳まで駆り出して計算を繰り返してたわけ」
「マザーコンピュータ様も大変だね」
「あら、マコトは現場で命はってるんだから、もっと大変なのよ?自覚もってる?」
「まあね」
なんでもいいけど、本当に馴れ馴れしいというか……最初の口調がもう思い出せない。
悪い気はしないけどね。
とにかく起き上がって服を着ようとしたんだけど。
「……ねむ」
なんか、まだすごく眠かった。
「うふふ、なんだかんだで明け方近くまで遊んでたものね」
「……そういやそうだった」
際どい関係にはならなかったけど、スキンシップが必要と言われて夜中まで船内の娯楽施設で遊んだんだっけ。
(なぜか地球のスポーツジムとアスレチックをあわせたみたいな設備があった……いやホントに)
生物ベースの身体だし、そりゃ眠くて当然かぁ。
「いいわ、今日はお休みしてなさい」
「ミーナは疲れてないの?」
「この『端末』は休ませるけど、本体の方は大丈夫」
「……なんか理不尽」
ウフフと笑われた。
「でも、遅くまで遊んだ成果はあったわね」
「成果?」
「今のマコトの身体はわたしの一部じゃないでしょ?
微妙にうまくシンクロできない部分があってね……。
一緒に遊んだ甲斐があったわ。
おかげさまで、これでほとんどつながった。もう大丈夫でしょう」
「ほとんど、なんだ……まだダメなところがある?」
「あるわ。
けどこれは今は無理ね、特殊仕様だから。
ボルダについたら一度、完全メンテナンスに出しましょうね」
「……そういうものなの?」
「ええ、そういうものよ」
ふむ、ならいっか。
ウンウンとミーナはうなずき微笑んだ。
「うふふ」
ミーナはそういって私の頭をなでなでしたかと思うと、今度はぎゅうっと抱きしめられた。
思わずボーっとしていたら、背中をぽんぽんと叩かれてハッと我にかえった。
「そういうわけだから、今日はおとなしくね。いい?」
「あ、うん」
「よろしい」
上機嫌でミーナは立ち上がり、そして去っていった。
「……できればもう一人ほしいかなぁ?」
私ひとりじゃ手が足りないってのはわかる。
やっぱ、もうひとりは最低でもほしい。
こうやって私が休んでしまうと、ミーナが指示したり意見を求める相手がいなくなってしまうから。
いけない、頭が重くなってきた。
ふわぁ……とりあえず寝よう。
おやすみなさい。
みなさま、よいお年を。
次回更新は1/2になります。